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八星の勇者に選ばれた少年リアム  作者: TO
第3章 新たな八星の出会い
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第81話 アルトvsゼノ前半

 ──ヴァルラグナ遺跡。


 崩れかけた石柱の森に、雷鳴が夜空を裂いた。

 燃え残る魔力の残滓が、空間を歪めている。

 レオンと影狼が外へ飛び出し、遠くへ消えていく。

 残されたのは、二人だけ。

 アルトとゼノ。

 拳と拳――欲と欲がぶつかり合うために。


 ◇ ◇ ◇


「……あれがレオンの本気か。 スゲーな……」


 アルトは、空を切り裂く光を目で追いながら呟いた。

 その横顔に、わずかな羨望と興奮が混じっていた。


「よそ見をしている場合か、八星!」


 怒号とともに、ゼノが踏み込む。神器鬼人の拳が唸りを上げ、右の拳が風を裂いた。

 アルトは反射的に腕を交差して受け止めたが――


「うっ……!」


 腕の奥から、熱が抜けていく感覚。

 骨の髄から力が吸い取られていく。

 ゼノの拳が、笑うように輝いた。


「やっぱり……先のゴーレムと同じか。

 力を吸収するタイプ……だが、吸収力が桁違いだ……!」


「その通りだ。教えてやるよ。」


 ゼノは拳を構え直し、黒い欲の炎をまとう。


「この神器鬼人の拳は、触れた相手の欲を吸い取り、俺の力として取り込む。

 限界なんてものはない。

 欲がある限り、俺は強くなる。

 命脈さえ、これで得た。」


 ◇ ◇ ◇


「命脈だと!?」


 アルトの瞳が見開かれた。


「リアムと違って、異世界人なのに命脈を使えるのかよ……!」


「驚くのはまだ早い。」


 ゼノは静かに笑った。

 その笑みには狂気が宿っていた。


「俺の命脈は――お前と同じ、貪欲だ。

 自分の欲が強ければ強いほど、限界を超えて強化される。」


「……ははっ。マジかよ。

 被りすぎだろ……。」


 アルトは頭をかきながら、拳を握り締める。


『俺と同じ能力で、戦い方まで。まるで鏡写しだ。

 ……だが、今回だけは負けられねぇ。』


 思い浮かぶのは、リアムの顔。


──「アルト、あとは任せた。」


 その声が胸の奥で蘇る。


「リアムは俺との約束を守り果たした。

 ……だから、今度は俺の番だ。」


 アルトは拳をゆっくり構える。


「この拳で、お前を倒して神器を取り戻す。

 ――それが、俺とあいつの約束だ!」


 彼の全身に、赤い光が灯る。

 欲の輝きが脈動し、命脈が反応した。

 ゼノの目が鋭く細まる。


「……来いよ、八星!」


 二人が同時に踏み込む。

 衝突の瞬間、遺跡全体が震え上がった。


 轟音。

 破砕音。


 拳と拳が交差し、石柱が次々に砕け散る。


「っらぁああああああ!!!」


「ぐぅぅぅっ、くそっ!」


 殴り、殴られ、返し、打ち合う。

 そのすべてが、意地の塊だった。


 ──数分。


 誰が先に倒れるかも分からないほど、

 互いの動きは狂気的なまでに速かった。

 二人が同時に踏み込む。

 衝突の瞬間、遺跡全体が震え上がった。


 ──その拳に宿るのは、勝利か、破滅か。



次回:アルトvsゼノ後半

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