第75話 ヴァルラグナ遺跡、二つの闘いが目覚める刻
ヴァルラグナ遺跡の空気が、凍りついたように張り詰めていた。
天井の光が砕け散り、舞い上がる魔力の粒子が灰のように漂う。
闇の魔女ラヴィニアは悠然と立ち上がり、漆黒の杖を手に取った。
その表情には、戦いを楽しむ者特有の狂気じみた笑みが浮かんでいた。
「さあ……八星。
どこまで私を楽しませてくれるのかしら?」
アルトは拳を握り締めた。呼吸が深くなる。
額を伝う汗が、一滴だけ音もなく床に落ちた。
「上等だ……来いよ、ラヴィニア」
その瞬間、背後から静かな声が飛んだ。
「待ちなさい、アルト。」
声の主はセラだった。
淡い蒼い髪が揺れ、青い瞳が戦場を見据える。
「アルト、貴方はあのローブの男――神器を奪ったゼノから、神器を取り戻しなさい。
ラヴィニアは私が相手するわ。
異世界の魔法使いと、戦ってみたかったの。」
アルトは一瞬、驚いたようにセラを見た。
しかしすぐに頷いた。
「……分かった。」
視線を正面へ戻す。
ゼノ――鬼神の拳を装着したローブの男が、無機質な光を瞳に宿し、静かに立っていた。
アルトの拳が、ゆっくりと鳴る。
「俺たちは拳で語り合おうか、ゼノ。」
「八星の力、見せてもらおう。」
ゼノの声は冷たく無表情だった。
しかし拳を構えると同時に、遺跡全体がわずかに震えた。
神器鬼神の拳が、低く唸りを上げる。
次の瞬間――。
「ッ!!」
轟音。
二人の拳がぶつかり合った。
空気が爆ぜ、石床が砕け、風が反転する。
衝撃波が壁を走り抜け、崩れかけた天井の瓦礫が雨のように降った。
アルトの腕が痺れる。
だが、その中に確かな感触があった。
「……お前、力だけじゃないな。」
ゼノは無言で微笑む。
次の瞬間には、姿が消えていた。
超高速の拳が、空間ごと叩き潰すように振り下ろされる。
アルトは紙一重で避け、拳を返す。
拳と拳、息と息。
言葉よりも確かな信念の衝突が始まった。
──その頃。
セラとラヴィニアは、互いを見据えていた。
「始めましょうか。」
ラヴィニアの唇が静かに動く。
「いいわ。でも――」
セラは杖を構え、微笑んだ。
「場所を変えて、ね。」
ラヴィニアはくすりと笑った。
「逃げるつもり? 結界の外には出られませんよ。」
セラは杖を一回転させる。
蒼の陣が足元に広がり、風が巻き起こる。
「そんなことはないわ。」
低く呟くと同時に、二人の身体が光に包まれた。
次回:天空に閃光、地上に影――動き出す三つ巴戦
今日から四話投稿に戻します。
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