第69話 リアムvsバスティル前半
──空が、裂けた。
黒と金の閃光が、夜を引き裂き、轟音が大地を震わせる。
焦げた土と血の匂いが漂う鬼人の村。
瓦礫と炎の中で、二つの影が対峙していた。
一人は、黒鎧の騎士――バスティル。
その剣には黒雷が纏い、空気を焼き尽くすように唸っている。
もう一人は、銀髪の少年――リアム。
その手に握られた剣は、金色の糸が形を変えて生まれた神器〈千変万化の糸〉。
淡く輝く刃が、風にたなびく金の糸をまとっていた。
雷鳴が再び轟く。
互いの視線がぶつかり、息が止まるほどの緊張が走る。
その瞬間――刃がぶつかり合った。
金と黒が交錯する。
雷と光が激しく弾け、衝撃波が地をえぐった。
「ぐっ……!」
リアムは後方へ飛び退き、足を滑らせながらも体勢を立て直す。腕に伝わる重さが尋常ではない。
バスティルの剣は、一撃ごとに雷鳴を孕んでいた。
まるでその一閃ごとに世界を切り裂くかのような威力だった。
「……やはりアルメリアで相見えた時からおかしいとは思っていた。
お前はただの器ではないな。」
バスティルが低く呟く。
黒雷がその身に走り、バスティルの体に電撃が纏う。
しかしその瞳は、冷たいままだった。
リアムは息を整え、剣を構え直す。
「どうでもいい。お前を倒す、それだけだ」
「倒す、か。面白い」
バスティルの唇が歪む。
次の瞬間、バスティルが消え、地面が爆ぜ、黒雷が走る。
雷の軌跡が蛇のようにうねり、リアムへと襲いかかった。
「――っ!」
リアムは即座に反応し、千変万化を盾の形へと変化させる。
糸が絡み合い、瞬時に光の防壁を形成する。
雷がぶつかり、金色の火花が散る。
衝撃に盾にヒビが入る。
破られると同時に、リアムは体をひねり、再び剣の形態へと戻す。
その変化はまるで生きているように滑らかだった。
剣と剣が先ほどよりも早く何度も交錯する。
雷鳴と金光が混ざり、夜が昼のように明るく染まった。
互いに一歩も譲らぬ攻防。
空気が切り裂かれ、火花が飛び散り、世界が震える。
「先ほど言っていたな、リアム」
バスティルが剣を押し合いながら低く言う。
「誰一人も傷つけさせないと。」
「……ああ、言った。それがどうした。」
「ならば、試してみろ。」
バスティルが笑った。冷たい笑みだった。
次の瞬間、バスティルが左腕を高く掲げる。
雷がその腕を走り抜け、天へと伸びる。
「影狼、魔物ども――」
腕が下ろされる。
「村人たちを噛み殺せ」
その言葉と同時に、動きを止めていた魔物たちが雷を纏い一斉に咆哮を上げた。
黒い波のように村中へなだれ込み、避難していた鬼人や子どもたちの方へと殺到する。
リアムの目が見開かれた。
「やめろっ!!」
しかし、魔物たちは止まらない。
雷を纏い早くなった影狼たちは、牙を剥き、爪を振り上げ、悲鳴が夜空を貫いた。
「この数をどう助ける?」
バスティルの声が嘲るように響く。
「誰一人も傷つけさせない――貴様の理想が、どれほど脆いものか思い知るがいい。」
雷鳴が響く中、リアムはそっと目を閉じた。
――魔力の全てが、上書きされていく。
次回:リアムvsバスティル中盤
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