第67話 バスティルvs鬼神の村中盤
鬼人族の村。
石と木で築かれた防壁は厚く、城門の前では屈強な鬼人たちが武器を構えていた。
その中に、黒い髪を燃やすようになびかせた一人の女が立っていた。
鬼燐――鬼人族の若き統領にして、青炎の使い手。
「また来よったか……。ほんま、しつこい連中やな」
鬼燐は息を整え、青い炎を指先に灯す。
炎が空気を舐め、周囲の空間が揺らいだ。
その光景を見て、周りの鬼人たちが士気を上げる。
「鬼燐様がいる限り、里は安泰だ! 恐れるな!」
「ふん、当然や。
あいつらごとき、うちの炎で焼き払ったる!」
鬼燐の口元に、わずかに笑みが浮かぶ。
彼女もまた戦士であり、守る者だった。
誰よりも誇り高く、誰よりも強い炎を胸に宿している。
しかし、そのとき――空が鳴った。
黒い雷が空を裂く。轟音とともに、大地が振動した。
鬼燐が反射的に顔を上げる。
「……何や?」
次の瞬間、雷光が村の正門を直撃した。
「――漆雷閃!」
叫びと同時に、閃光が爆ぜた。
耳をつんざく爆音、空気が焦げる音、熱風。
城門は音を立てて砕け、黒煙の中で粉々に吹き飛ぶ。
焦げた木片が空を舞い、火花が散る。
煙の向こうに、ゆっくりと歩み出る影が一つ。
黒鎧を纏い、剣を片手に持つ男。
その背後から、影狼たちが吠え、崩れた門を駆け抜けていく。
「……バスティル」
鬼燐がその名を呟く。
青炎がその身を包み、足元の地面を溶かした。
バスティルは黙って歩を進めた。
雷が剣を這い、黒い火花を散らす。
「お前がこの村の守りか。だが――」
剣先を向け、低く呟く。
「俺の前に立つ者は、すべて平等に灰になる」
「黙れ!」
鬼燐の怒号が響き、青炎が爆発した。
灼熱の奔流が襲いかかり、空気を焼く。
しかし、バスティルは動じない。
剣を構え、一閃。雷鳴が轟き、青炎が弾ける。
衝突した瞬間、雷と炎が絡み合い、轟音と閃光が村中に響き渡った。
◇ ◇ ◇
激しい戦闘の中、鬼燐の炎が大地を焼き、バスティルの雷が空気を裂く。
双方の力はバスティルが上回った。
「弱い……だが、お前の炎、純粋な怒りで燃えている。」
バスティルの言葉に、鬼燐は唇を噛んだ。
「怒り? 当然や!
お前たちは、うちの仲間を何人も傷つけた!
村を焼き、子供まで……!」
その声には、憎しみと悲しみが混ざっていた。
青炎が激しく燃え上がる。
その炎の中心で、鬼燐は跳び上がり、魔法を発動する。
「――蒼焔陣ッ!!」
地面に青い魔法陣が広がり、炎の柱が無数に立ち上がる。
バスティルを中心に、炎の輪が閉じていく。
だが、バスティルは冷静だった。
指先がわずかに動く。
その瞬間、影狼たちの体に刻まれたルーンが黒く光った。
「……愚かだ。
お前が守りたいものは、もう燃え尽きている。」
「なに……?」
「見せてやろう。雷と闇の真の使い方を。」
バスティルが右手を掲げると、影狼たちの体から一斉に黒雷が放たれた。
それはまるで生き物のように蠢き、鬼燐の陣を貫いた。
「魔物の中に魔法を仕組んで……!?」
鬼燐は目を見開く。直後、黒雷の魔法が直撃した。
炎の陣が崩壊し、爆風が吹き荒れる。
鬼燐は吹き飛ばされながらも、なんとか立ち上がる。
だが、その身体はすでに限界だった。
髪は乱れ、額には血が滲んでいる。
「くっ……まだ……!」
「終わりだ。」
バスティルが瞬間移動のような速さで距離を詰めた。
黒雷を纏った剣が閃き、鬼燐の腕をかすめる。
痛みとともに、炎が途切れた。
倒れる鬼燐に、バスティルの影が覆いかぶさる。
剣を逆手に構え、喉元へ突き立てようとする。
剣を突き立てるその瞬間――。
一陣の風が、二人の間を切り裂いた。
次回:バスティルvs鬼神の村後半
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