第55話 少年は戦う、自分という壁と
──朝の冷たい風が、窓の隙間から差し込んでいた。
リアムは目を開けると、深く息を吐いた。
夜の夢は覚えていない。
ただ、胸の奥に誰かの声が残っている気がした。
『自分の戦い方を見つめ直せ……か。』
ぼんやりと浮かぶ言葉を振り払いながら、リアムは
身を起こす。鏡の前で顔を洗い、軽く髪を整える。
視線の先、自分の瞳に小さな光が宿っていた。
——決意の光。
『自分自身の力で、レオンたちと対等に並ぶには
……どうすればいい?』
答えは、まだ霧の中。
魔力の質は、間違いなく自分の強み。
けれど、それが今の自分を最も苦しめてもいる。
魔力量そのものは、王国の魔導士より多い。
だが、魔力の質が高すぎるせいで、一度使えば消費が莫大になる。
威力は圧倒的でも、燃費が悪すぎるのだ。
だからこそ、レオンは身体強化を教えてくれた。
身体強化なら、魔力を体内に流すだけで済み、消費は少ない。最初は失敗の連続で、爆発もした。
けれど今では、セラの魔道具の助けもあり、筋肉や関節などの「一部分」に魔力を集中させることもできるようになった。
……それでも、足りない。
それを探すために、今日の模擬戦がある。
「よし……切り替えよう。考えるのは後だ。」
リアムは軽く伸びをして、拳を握った。
今日の相手は、鬼人族の戦士・鬼燐。
彼女との模擬戦は、実戦に最も近い修行になる。
◇ ◇ ◇
村の中央にあるバルガの屋敷へ向かう途中、鬼人の子どもたちが元気に走り回り、リアムに手を振った。
「お兄ちゃん、今日また戦うの?」
「がんばってね!」
リアムは笑って手を振り返す。
だが胸の奥では、静かに炎が燃えていた。
昨日までの自分を超えるための戦いだ。
◇ ◇ ◇
屋敷に着くと、バルガが玄関先で出迎えてくれた。
「おお、来たかリアム。準備はできとるぞ。」
案内された先は、広い闘技場。
観客席には村の鬼人たちが集まり、歓声と熱気に包まれていた。
その中心に立つ鬼燐は、鮮やかな黒髪を揺らしながら静かに拳を構えていた。
「お待たせしてすいません。」
「気にしなさんな。時間通りや。
……そな、やろか。」
鬼燐の目が光を帯びた。獣のような闘志だ。
リアムも拳を握り、互いの間に火花が散る。
「では——始め!」
次回: 蒼炎乱舞の果て、少年は立たず
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