第48話 リアム、二十人本組手に立つ
鬼人の村の中央。
石と木で組まれた重厚な館。
それが、村長・バルガの家だった。
門をくぐると、鉄と土の匂いが混じる。
庭ではすでに数十人の鬼人が修練をしており、拳がぶつかり合う音が響いている。
リアムは息を整え、門の前に立った。
心臓が鼓動を強める。
──夢の残滓が胸を締めつける。
──それを振り払うように、扉を叩いた。
「おはようございます。
リアムと申します。
今日は闘技場で、皆さまと模擬試合をさせていただきたく参上しました。
アルトさんから手紙を預かっています。」
館の奥から、重厚な足音が響く。
現れたのは、白い髭と鋭い瞳を持つ鬼人――村長バルガ。
「ふむ……リアムか。昨日ぶりじゃな。」
手紙を受け取り、目を通す。
その瞳がわずかに見開かれる。
「……お主、アルトに勝ったのか?」
館の空気が一変する。
周囲にいた戦士たちがざわめき、訓練を止めて集まってくる。
「アルトに……?」
「まさか、嘘だろう……!」
「鬼神アルトに、あの子どもが勝ったっていうのか!」
リアムは困惑しながらも、静かに答えた。
「アルトさんが油断していた部分もありました。
ですが、勝ちました。
……次は分かりません。」
村長の口元に、ゆるやかな笑みが浮かぶ。
「勝ちは勝ちだ。――誇れ。
まぐれではあの男に勝てぬ。」
リアムは深く頭を下げた。
「ありがとうございます。」
バルガは立ち上がり、声を張る。
「模擬試合を認めよう! リアムと戦いたい者はおるか!」
瞬間、熱が爆ぜた。
戦士たちの目が一斉に光を帯び、数十人が名乗りを上げた。
「俺が行く!」
「リアム殿、手合わせ願いたい!」
闘志と誇りがぶつかり合う。
バルガが笑ってリアムに問う。
「人数が多いが、構わぬか?」
リアムは静かに息を吸い、頷いた。
「もちろんです。……全力で挑みます。」
◇ ◇ ◇
闘技場。
砂塵の舞う大地の中央に、リアムは立っていた。
周囲を取り囲む数十の鬼人たち。
風が吹き抜け、朝の光が剣を照らす。
『――ここで、また強くなる。』
拳を握り、心を沈める。
胸の奥に微かに残る、あの夢のぬくもり。
名前を思い出せない誰かの笑顔。
それでも――前へ進む。
審判役の鬼人が声を上げる。
「二十人本組み手――始めっ!」
大地が鳴った。
リアムは一歩、前へ。
足裏が砂を蹴り、風が裂ける。
その一歩が、戦いの始まりだった。
次回:八星の覚悟――鎧を捨てた少年
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