第43話 英雄、鬼人の村に凱旋!
──山を抜けた瞬間、風の匂いが変わった。
湿った森の香りから、鉄と炎の匂いへ。
遠くで響く鍛冶の音、そして何十もの咆哮。
その音が空気を揺らし、心臓の奥にまで響いてくる。
リアムたちの前に広がった光景は、まさに力の具現だった。
岩と木で築かれた巨大な門。
その柱には古代の魔物の骨が埋め込まれ、まるで侵入者を睨みつけるかのように鎮座している。
門を抜けた瞬間、荒々しい熱気が肌を撫でた。
生き物の鼓動と炎の息吹が、村そのものに脈打っているようだった。
◇ ◇ ◇
「おおおおおっ!! アルトが帰ってきたぞぉ!!」
「英雄様だ!! 今度はどんな獲物を狩ってきた!!」
「その三人は誰の手土産だ!? それとも新しい戦友か!?」
「アルト様ぁ! 抱きしめて下さい!!」
……。
……。
……。
リアム、レオン、セラ。三人の表情が同時に凍りついた。
──脳内の共通思考。
『……うん、知ってたけど、やっぱり戦闘狂の集団だ。』
『祝い方が野生を超えてる……。』
『ていうか最後の人、発言の方向性おかしくない?』
そんな視線をよそに、当のアルトは――太陽みたいに笑って、両手を振り上げた。
「ただいま戻ったぞぉーっ!!」
その声が村の空を貫いた瞬間、地が鳴り、風が爆ぜた。
「「「ウオオオオオオオオッ!!!」」」
大地そのものが吠えたような咆哮。
獣じみたその声が、まるで戦の開始を告げる号砲のように山に木霊した。
◇ ◇ ◇
アルトは腰のマジックポーチを掴み――笑う。
「見てろよ!」
どさっ、どさっ、と音を立てて地面に落ちる無数の影。
それはすべて、巨大な魔物の死骸だった。
狼型、蜥蜴型、牙を剥くもの、翼を持つもの――。
血の匂いが一瞬で空気を染める。
その数、数十体。
「今日の獲物だぁ!!」
歓声が爆発した。
「うおおおっ、これだけ狩って帰るとは!!」
「アルト! お前、また記録更新だぞ!!」
「宴だぁ!! 酒を持ってこい! 肉を焼け!!
今日は寝るな!!!」
雄叫びが空を震わせ、地を這う。
セラは頭を抱え、魔法で防音障壁を展開しながら呻いた。
「うるさすぎるわよ、ほんとに……。」
レオンは両耳を押さえながら顔をしかめ、リアムは冷静に千変万化の糸を取り出し、見事な耳栓を作り上げた。
『……真剣に鼓膜の危機を感じたのは初めてかもしれない。』
ようやく十分ほど経ち、村の雄叫びが落ち着いたころ。
アルトは涼しい顔で笑った。
「よし! それじゃあ、村を案内してやる!」
『……それを先にやれよ。』
三人の心が完全に一致した。
次回:鬼人の村、炎と咆哮の夜
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