表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
八星の勇者に選ばれた少年リアム  作者: TO
第3章 新たな八星の出会い
45/191

第40話 夢にて出会うは、最後の魔神

「……で、なんでそんなお前が、俺に頭を下げてるだ。」


 ヴァレリアの動きが止まる。

 目を伏せ、深く息を吐いた。


「――それは、申し上げられません。」


「言えない、だと?」


「ええ。ある魔女との約束がございます。」


 リアムは眉をひそめる。


「……約束?」


「はい。ただ一つ、申し上げられるのは――この姿勢も、この言葉も、すべて貴方様の忠誠ということ。

 それだけは、どうか信じてくださいませ。」


 リアムはしばらく黙った後、短くため息をついた。


「……まあ、いいさ。無理に聞く気はねぇ。」


 ヴァレリアの表情に、ほんの少し安堵が浮かんだ。


 ◇ ◇ ◇


「リアム様もお気づきでしょう。」


 ヴァレリアは立ち上がり、闇の中を見渡した。


「貴方様が我ら魔女たちと会うのは、いつも夢の中。

 現の世界では決して出会えません。 

 それは、貴方様の魂を媒介にしているからです。」


「魂……?」


「我ら魔女は、貴方様の血の継承体質により、貴方様の中にいます。

 ゆえに、リアム様の精神に触れることができるのです。

 ですが、それは――私たちの血を取り込み、血の継承体質を持つ者、すなわちリアム様だけ。」


「……俺だけ、か。」


「はい。魔女教団は、貴方様を器として選びました。

 世界の均衡を負に傾けるために。

 ……もっとも、貴方様はそんなことを望んでいないようですが。」


 リアムは苦笑する。


「当たり前だ。

 勝手に器にされて、勝手に巻き込まれて……正直、うんざりだよ。」


「それでも、我らは魔女は貴方を必要としているのです。

 今や我ら魔女は、リアム様の血を媒介としてしか存在できません。 

 器たる貴方様がいなければ、我らはただの無。

 だからこそ……貴方の旅を見届け、助けたいのです。」


 リアムは言葉を失った。

 その声には、偽りがなかった。

 恐怖も、支配もなく――ただ誠実な響きだけがあった。


「……不思議なやつだな。

 魔神なのに、誰より人間っぽい。」


 ヴァレリアは微笑んだ。


「ありがとうございます、リアム様。

 そう言っていただけるのは、数千年ぶりです。」


 ◇ ◇ ◇


 ヴァレリアは静かに歩み寄り、右手を胸に当てた。


「リアム様。

 もしまた夢の中で魔女たちと出会われましたら、どうか恐れずにいてください。 

 我らは貴方の敵ではありません。

 ほんの少しでも――我らを受け入れてください。

 それで十分です。」


 リアムはわずかにうなずいた。


「……努力はしてみる。」


「ありがとうございます。」


 ヴァレリアは微笑み、闇の中で膝をついた。


「そろそろ時間のようです。」


 闇が溶け始める。

 リアムの視界が白く満たされていく。


「リアム様。この出会いを胸に、またいつか――」


 その言葉を言い終える前に、ヴァレリア・ネメシスの姿は霧のように消えていった。


 ◇ ◇ ◇


「……リアム、リアム! 起きなさい!」


 セラの声で、リアムは跳ね起きた。

 朝の光が差し込み、森の清気が肌を撫でる。


「う、うわっ……夢か……?」


 彼は頭を押さえながら周囲を見回した。

 アルトは寝ぼけ顔であくびをし、レオンは顔を洗いに行っていた。

 セラが呆れたように眉をひそめる。


「交代した途端に熟睡って……ほんと、神経が図太いわね。」


 リアムは苦笑した。


「いや、なんか変な夢見てた気がするんだよな……。」


「どんな?」


「……思い出せねぇ。

 けど……黒い、何かと話してたような……。」


 リアムの額には、ほんのわずかに黒い痕跡が残っていた。

 しかしそれに気づく者は、まだ誰もいなかった。



次回:朝霧の森、四人の行軍

読んでくださって、本当にありがとうございます!


「面白い」「続きが気になる」と感じて下さった方は、ぜひ下の【☆☆☆☆☆】から評価、または【ブックマーク】をお願いします!


あなたの応援が、次の更新の一歩になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ