第257話 魔女たちとの修行~新たな力~
俺が何故、魔女たちの力を扱えるようになったのか。
それはグランディアでの魔女たちとの修行中の事だ。
俺は夢の中でイリスたちにボコられていた。
押しつぶされ、貫かれ、消し飛ばれる。
赤い髪をなびかせた、イリスが叫ぶ。
「早く、私と殴り合えるだけの力をつけろ! 私たちの魔力が宝の持ち腐れになる!」
寝転びながら魔力を使い、俺を押し潰す、シエナ。
「リアム、早く終わりましょ。私、飽きたわ」
災害を幾重にも生み出し、残虐な笑みで俺に災害をぶつけ続ける、ノエル。
「器君、もっと虐めてあげるわ!」
俺は未だに魔女から一勝も出来ていない。他の魔女たちに四人に視線を向ける。
セレナは俺の修行を飽きずに見ている。アリアは俺が負けた瞬間に治療をしてくれる。
そのせいで未だに夢が終わるまで、魔女たちの戦闘に休憩はない。
最後の二人、メルティナとヴァレリアは優雅に座りながら、紅茶を嗜んでいた。
たまに応援という野次が飛んでくる、こんな風に。
「リアム様、頑張ってください! あと少しで朝ですよ! 頑張って逃げてください!」
「ヴァレリア、俺の事を馬鹿にしてるだろう! 俺は戦っているんだ!」
俺の叫び声を聞くとヴァレリアが言葉を返した。
「イリスたちは、一度も傷を負っていませんよ?」
「お前も一部始終を見てたなら分かるだろう!」
俺の修行はかなりおかしい。修行内容はバトルロワイアル。
俺、イリス、シエナ、ノエルによる、四名による殴り合い。
つまりチームを作り、一人を狙い撃ちすることが出来る。
要するに、俺が一番に狙われ殺させる。
俺はアリアの回復で復活するので、また狙われる。何よりも、三人が強すぎるのだ。
イリスの近接特化。ノエルの攻守ともに戦える魔法の多彩さ。シエナの広範囲重力攻撃。
勝てる未来が全く見えない。それが今の俺がしている修行だ。
その修行が何日も続いた日。小さな出来事が起こった。
イリスが俺を吹き飛ばし、勝敗が決まると呟いた。
「本当に飽きた。誰か、器くんの方に入ってよ!」
その言葉に反応するようにセレナが立ち上がる。
「リアムお兄ちゃんと一緒が良い!」
セレナは俺が吹き飛ばされた方向に走り出す。ノエルは溜息を吐き、セレナに話しかける。
「セレナ、あなたは戦闘向きの能力じゃないわ。器君程度なら倒せるでしょうけど、私たちのスピードに適応できない」
その言葉にセレナは怒りを全身で表すように駄々をこね始めた。
「嫌だ。嫌だ。リアムお兄ちゃんと遊びたい! いつも三人ばかりズルいよ!」
それを見た魔女たちは、それぞれがセレナの行動にため息を吐く。
最近セレナの我儘が増えてきたのだ。幼い頃に亡くなり、魂が幼い事が原因だ。
そして俺という友達が出来たことで、セレナは甘えたいそうだ。
それを見かねた、ヴァレリアがある提案をした。
「分かったわ! セレナ、リアム様と同調してみる?」
その提案に、目を光らせたセレナが涙を止めて、即座に頷いた。
「やる! やる!」
「リアム様! 今よろしいですか?」
俺はその言葉に反応すると回復をしてくれていたアリアが体をずらす。
「どうした?」
「セレナと同調してみませんか?」
「同調? 具体的に頼む」
俺は同調の意味が分からず尋ねた。
ヴァレリアは同調について、俺に詳しく話し始めた。
「リアム様は一度、同調を経験しています」
その言葉に俺は、頭をひねり思い出そうとするが出てこない。
「巨人族の時に、暴走したあれが同調です」
その言葉に俺は、目を開き叫んだ。
「同調の意味を分かってるのか! こいつらがいつ、俺に合わせた」
俺は暴走の原因である魔女たちを指でさす。
ヴァレリアは笑みを溢した。
「セレナとアリアは同調していると思いますよ」
俺はその言葉に声を詰まらせる。
「……例外は数人だけだ」
「同調の特徴は同調した魔女の魔力量や能力を使える点です。アリアなら巨大な魔力量と回復力。他にも特徴があります。同調している時に、背中から魔女の象徴と言われる、小さな羽が生えます」
そこからヴァレリアは羽の特徴について話し始めた。
「一人目はシエナ。彼女は黒い羽根。最も重く、地に落ちる羽」
「二人目はイリス。彼女は鋼鉄の羽根。鋼鉄の如く硬く、触れたものを傷つける」
「三人目はセレナ。この子は水晶の羽根。繊細な水晶の美しい、透明な魔眼を持つ」
「四人目はノエル。彼女は翡翠の羽根。翡翠の永遠を紡ぐ、精霊女王」
「五人目はアリア。彼女は銀色の羽根。銀の色は柔らかく、人を包む」
「六人目はメルティナ。彼女は蒼色の羽根。蒼色の魔力を持ち、計り知れない海の広さ」
「七人目が私、ヴァレリア。漆黒の羽根。光と対をなす闇」
俺は魔女たちの話を全て聞き終えると、ヴァレリアに視線を合わせ、真剣な顔で尋ねた。
「説明はあらかた理解した。一つ聞く、それを使ったら、この前の様に俺は暴走するのか?」
「ある条件をクリアすれば、暴走は起きません」
「条件?」
「はい。条件は一つ。同調する魔女が、リアム様に力を貸すことを認めることです。先日はリアム様に生命の危機が訪れたので、ノエルたちがリアム様を守るために動きました。リアム様に生命の危機が訪れたら、自動的にあなた様を守るために同調が発動します。それが困るなら、死なないでください。死にかけたら、力を貸してくれる魔女に同調を頼んでください。そうすれば暴走はまず起きません」
俺はその説明を聞き、自分と魔女たちの関係性を再認識することになった。
「説明はここまで。早速ですが同調を試してみましょうか。セレナお願い」
ヴァレリアの言葉にセレナが頷き、俺に抱き着く。
「よろしくね! リアムお兄ちゃん!」
「力を貸してくれて、ありがとう。セレナ!」
「友達なんだから、当たり前だよ!」
俺たちが笑い合っていると、一人の魔女が手を挙げた。
「私も同調したい。構わないでしょ、ヴァレリア」
その言葉はアリアだ。ヴァレリアは笑みを浮かべると頷いた。
「もちろんよ。私があなたを止める理由がないわ」
ヴァレリアがイリスたちに声をかける。
「それじゃ、同調が完了したら、いつも通りでお願いね!」
イリスとノエルは頷き、魔力を何段階も上げる。するとシエナが急に背を向けた。
「私はパス。絶対に疲れるから。暇つぶしには付き合うけど。全力をわざわざ出したくない」
シエナは遠くに離れて、横になるとすぐに眠った。
「仕方がないですね。リアム様、一人減りましたが同調お願いします。何段階も上の世界を知れますよ」
ヴァレリアの言葉に俺は緊張するように頷いた。
アリアとセレナが俺の背中に触れる。
「リアム、落ち着いてください。今回は私たちが補助します」
「そうだよ。感覚を掴めば、これからは私たちを呼んでくれるだけでいいから」
俺は頷き、全身の力を抜き、目をつぶる。
感覚が研ぎ澄まされ、二人の魔力が俺に流れ込む。
俺の血が、魂が、完璧な相性で同調していると叫び続ける。
同調し始めると、俺の体にも徐々に影響が表れ始めた。
俺の両目はセレナの魔眼に切り替わり、銀に輝く髪色は徐々に漆黒の黒に染まり始めた。
次回:同調~魔女の癇癪~
次回更新日:5/16(土)
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