序章2
深く、静かな光の海。
その中央に、一人の女性が佇んでいた。
白金の髪が風に揺れ、蒼穹のような瞳が下界を見つめている。
彼女の名は、アウリス。
世界の理に寄り添い、運命の流れを見守る者――。
「アルセリアの命脈が、また尽きようとしている。」
アウリスはそっと手をかざす。
空間がゆっくりと波紋を描き、一枚の鏡が姿を現す。
鏡の中では、ひとりの少年が暴走した魔力に呑まれ、闇の中でもがいていた。
「リアム……あなたは、光に選ばれし者。けれどまだ何も知らぬ、ただの少年。このままでは運命に飲まれてしまうでしょう。」
アウリスは鏡へ、そっと指先を伸ばした。
薄い鏡面越しに触れられたかのように、リアムの震える手が微かに揺れる。
「リアム。あなたを異界アルセリアへ送る。あの地で人の痛みを知りなさい。誰かの手を掴むことを学びさないそこで見つけた絆が、いつかあなた自身を救う。そして世界を救う者へと育ちなさい。」
彼女の声とともに、光が裂けた。
大きく開いた異界への門が、少年を静かに飲み込んでいく。
温もりが遠ざかる。
光の粒が散り、最後の一片が消えていく。
アウリスはそっと目を伏せた。
「いつか……あなたが帰ってくる日まで」
胸の奥に押し込んだ不安を、祈りで包むように。
彼女は微笑みに似た表情を浮かべ、消えていった光の残滓を見送った。
「私はここで、ずっとあなたを見守っているわ」
今、少年の旅が、確かに始まった。
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