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異世界で目覚めた少年、八星の勇者に選ばれる  作者: TO
第2章 リアムの誓い
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第17話 リアム修行の日々

王都を出て三日後。


リアムたちは、最初の目的地――宿場町エルドに到着していた。

森を抜けた丘の上に広がるその町は、木造の家々が並び、通りには露店が立ち並んでいる。


人の声と動物の鳴き声が入り混じり、どこか活気のある空気が流れていた。


「ここがエルドか……思ったより賑やかだな」


レオンが腕を組み、街の中心を見渡す。

彼の鎧の金の装飾が陽光を反射し、行き交う人々の 視線を引いた。


「情報収集は私がやるわ」


セラがマントを整えながら言う。


「リアム、君はレオンと一緒に補給をお願い」


「分かった」


リアムは素直に頷いた。

アークハウスから降りると、三人はそれぞれの役割に散った。


セラは情報屋のもとへ向かい、レオンとリアムは市場へ向かう。


「やはり、セラに料理を任せるのは命に関わるな」


「うん。レオンの考えに同意だね。セラの料理は

 強烈すぎるね……」


「見れば分かるだろ。よく食べれたな。

 あいつは料理に色んな薬草を入れる。

 お前は料理じゃなくて、ほとんどポーション

 を飲んだようなもんだ。」


レオンの厳しい声に、リアムは思わず背筋を伸ばす。

その眼差しには、かつて何度も経験をした男の重みがあった。


「……はい。次から気をつけます」


市場で買い物を終えると、町を歩く。

道端では子どもたちが走り回り、旅人が酒場で談笑している。

その穏やかな風景を眺めながら、リアムはふと呟いた。


「こういう日常、守れるようになりたいですね」


レオンは一瞬だけ目を細め、低く答えた。


「――ならば強くなれ。それだけだ」


その言葉が、胸の奥に深く突き刺さった。


◇ ◇ ◇


補給を終えた一行は、翌朝、森へ向かった。

エリュシオンの森――それは、美しくも危険な地帯だった。


木々は高く、陽光が地面に届かぬほど茂っている。

その奥では、魔力を帯びた獣たちが群れをなし、人を襲うという。


「この先から、修行を始める」


レオンが歩みを止め、振り返った。


「修行、ですか?」


リアムが息を呑む。


「そうだ。お前に戦士としての基礎を叩き込む。

 ここから先、敵は魔物だけじゃない。

 己の弱さとも戦うんだ。」


セラが少し離れた場所で荷を下ろす。


「私はここで見守ってる。

 ついでに、魔道具の調整をするから」


リアムは剣の柄を握りしめ、森の奥を見つめた。

冷たい風が頬を撫で、鳥の羽ばたく音が遠くで響いた。


「――始めよう」


レオンの声と同時に、修行の日々が始まった。


◇ ◇ ◇


最初の訓練は、気配察知だった。


「敵は姿を見せてから襲ってくるとは限らん。

 森では危険感知が高いものが生き残る」


レオンが木々の間に立ち、リアムの背後に回る。

次の瞬間、空気が揺れた。


「――来い!」


剣を抜いた瞬間、背中を風が切る。

反射的に振り返ると、レオンの木剣が目の前に迫っていた。


「ぐっ……!」


打ち払うが、勢いに負けて体が後ろへ吹き飛ぶ。

地面に転がりながら、リアムは荒い息をついた。


「考えるな。

 感じろ。

 目ではなく、心で気配を読むんだ」


何度も、何度も繰り返す。

倒れた地面にはリアムの足跡と汗が混じり、泥が跳ねていた。

失敗し、倒れ、立ち上がる。


剣を構える腕が震えても、レオンは一切手を抜かない。

夕暮れが近づく頃、ようやくリアムの足が自然に動いた。

レオンの斬撃が来る瞬間、わずかな風の乱れを感じ取る。


「今だっ――!」


木剣と木剣がぶつかり、甲高い音が森に響いた。

一瞬の拮抗。レオンが目を細め、口角を上げる笑った。

体は限界でも、胸の奥に確かな成長の実感があった。


◇ ◇ ◇


二日目の訓練は、剣術と武道。


レオンの動きは速く、正確だった。

重さよりも技。力よりも心の在り方。

すべてが計算された動きに、リアムはただ必死に食らいつくしかない。


「リアム、足が止まってる!

 ――相手の動きは観察することも大切だが、

 相手の気配を読め! 昨日もしただろう!」


「わ、分かってますっ!」


木剣が何度もぶつかり、森に乾いた音が響く。

体中が痛み、息も荒い。

だが、それでも止めなかった。


セラは少し離れた岩の上で、魔道具を組み立てながら呟く。


「男の子って、本当に単純よね……でも、

 そういう必死さは面白いわ。」


金属の細工を指先で整えながら、彼女の口元に挑発的な笑みが浮かんだ。


◇ ◇ ◇


数日後。


森の奥での訓練は次の段階へ――神器操作だった。

リアムには、王から授けられた神器千変万化の糸がある。


だが、その力を制御できる者はまずいない。

千変万化の糸を扱うには、膨大な魔力量と卓越した魔力操作が必要だからだ。


「力は貸し与えられているものだ。思い上がるな」


レオンがそう言って立ち、リアムの背に手を当てた。

神器を握ると、微かな鼓動のような魔力が伝わる。

青白い光が刃を包み、周囲の空気が震えた。


「――感じる。けど……魔力が制御できないっ!」


力が暴れ、地面が裂ける。

セラが慌てて結界魔法を展開した。


「ちょっと! 暴走させないでよ!」


「ご、ごめん!」


魔力が散り、光が消える。

リアムはその場に膝をついた。

しかし、レオンは叱らず、静かに言った。


「失敗を恐れるな。

 恐れが一番、力を曇らせる。

 ……しっかり、力と向き合え。」


◇ ◇ ◇


夜。


焚き火の明かりが揺れる中、リアムは一人、神器を見つめていた。


「……俺、本当にやっていけるのかな」


呟きは風に消える。

レオンもセラもすでに眠っている。

ただ、夜の森だけが静かに息づいていた。

 

力を授かった意味。


選ばれた理由。


そして、自分が八星と同時に継承者であるという現実。

そのすべてが、重くのしかかっていた。


「俺……弱いな」


そのとき、背後から低い声がした。


「前にも伝えたな。

 弱いと思うなら、強くなれ。

 それだけだ。」


振り向くと、レオンがリアムの後ろで上着を羽織ったまま、静かに立っていた。

その瞳は、炎よりもずっと熱かった。


「お前が下を向いてる限り、誰も救えん。

 前を見ろ。それが――お前の戦いの第一歩だ」


リアムは唇を噛み、ゆっくりと頷いた。

小さな炎が、彼の瞳に映り込む。


「……はい。もう、下は向きません」


風が森を抜け、葉の音が夜空へ流れた。

その瞬間、彼の中で何かが確かに変わった。 


恐れではなく、決意。

逃げではなく、覚悟。


それが成長という名の光に変わり、リアムの胸に灯った。


◇ ◇ ◇


翌朝。


鳥のさえずりが森に響き、夜露の冷たさが消えていく。


「レオンさん、今日も修行お願いします!」


リアムの声に、レオンは静かに頷いた。


「いい目だ。

 その調子なら、もう大丈夫だろう。

 今日からは応用に入る」


セラが湯気の立つ鍋をかき混ぜながら笑う。


「まったく……休む間もないんだから」


リアムは小さく笑い、剣を構えた。

その瞳には、もはや迷いはなかった。


――彼の修行の日々は、こうして始まったばかりだった。



次回: 湖畔の街アルメリア

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