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八星の勇者に選ばれた少年リアム  作者: TO
第1章 リアムと八星の出会い
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第7話 旧都市を消し飛ばした力の正体

 ──アルセリア王城・謁見の間。


 高くそびえる天井には精霊の加護を象徴する紋章が刻まれている。

 謁見の間に二つの影が現れた。


 レオン・ドラグナイト。

 セラ・フェリス。

 八星騎士団アストレギオンを率いる者たちだ。


 彼らの前には、王座に座り報告を待つ男。

 ──アルセリア王国第十三代国王、アリステア三世。

 アリステア三世が報告を聞く。


「……そうか。八星の一人を見つけたのだな」


 静かだが、どこか安堵の滲む声だった。

 レオンが一歩前に出て、深く膝をつく。


「はい、陛下。彼の名はリアム。──ですが……」


 隣のセラが息を止め、説明を始める。


「見つけた時、彼はすでに暴走状態でした」


「七つの魂が互いを暴走し、魔力は制御不能。……完全な災厄でした」


 王の瞳がわずかに細められる。

 ゆっくりと大理石の床を踏みしめ、二人の前へと降りてきた。


「現場の状況は?」


 レオンは短く息を飲む。


「……跡形もありません」


 セラは報告を続けた。


「北西の旧エルデン都市跡。そこにいた数万の信徒──全員がリアムの魔力の余波で命を落としています。地形すら変わり、都市は消し飛びました」


「……信徒?」


 王の眉がわずかに動いた。


「はい。おそらくはリアムが私たちの世界に渡った時に、彼らもリアムの暴走に巻き込まれてこの世界に渡って来たのだと思います」


「詳しくは未だ調査中ですが……彼らはリアムを器と呼び、何らかの儀式を行っていた形跡がありました」


 重苦しい沈黙が流れる。

 セラは拳を握りしめながら説明を続けた。


「私たちで暴走を抑え込みましたが……陛下の予言がなければ旧エルデン都市民の避難が間に合わず全て、消し飛んでいたかもしれません」


 王は静かに瞼を閉じ、深く息を吐いた。


「そうか……あの少年に、そのような力が宿っていたか。──だが、だからこそかもしれぬな」


 ゆるやかに目を開けた王の瞳には、確かな光が宿っていた。


「彼こそ黎明星(れいめいせい)。八星の一人であることに疑いはない」


 レオンは深く頷いた。


「陛下。私は、彼を救いたい」


 その言葉には、痛みと決意が混じっていた。

 レオンは拳を握りしめながら続ける。


「エルデン都市を調べましたが、地上には何も残っていませんでした。しかし、地下に神殿を発見しました。信徒と同様に神殿ごとこの世界に渡ったのでしょう」


「暴走の裏には理由があるはずです。──彼は、力に呑まれたのではなく、何者かにより暴走させられた被害者です」


 王はその言葉を聞き、静かにうなずいた。


「……なるほど。少年は犠牲者か」


 レオンの表情が陰る。

 セラが小さく頷きながら補足する。


「彼の魔力量は異常です。七つの魂は互いに干渉しており、危うい状態でしたが、今は落ち着いています。普通はではありえません。まるで神の意志のようです」


 王は深く息を吸い、二人を見つめ直した。


「……お前たちは、どうするつもりだ?」


 レオンは迷わず答えた。


「彼をこの国で保護し、力を制御できるよう導きます。そして他の八星たちを探し出し、迫る脅威に備える。──それが八星騎士団アストレギオンの使命です」


 王は静かに歩み寄り、レオンの肩に手を置いた。

 その手は、王としてではなく、友としての温もりに満ちていた。


「分かった。私はお前を信じよう、レオン。お前が龍人族を新たに束ね、私の夢を応援してくれると誓ったあの日から──私は一度もその誓いを疑ってはいない」


 その言葉に、レオンの顔から温かい笑みがこぼれた。

 彼は王の手を強く握る。


「アリステア……必ず、リアムを救い、そして他の八星を探し出す。それが俺たち八星騎士団(アストレギオン)の責務であり、俺の役目だ」


 セラも静かに頭を下げた。


「彼の体には未知の魔力構造が多すぎます。……正直、彼が目覚めるまで研究が尽きませんね。楽しみです」


 その言葉に、王はわずかに口元を緩めた。


「ほどほどにな」


 冗談めかした声に、謁見の間の空気が少しだけ和らぐ。

 王は玉座へと戻り、ゆっくりと腰を下ろした。


「よかろう。リアムを保護対象とせよ。彼が再び目を覚ます時──その力をどう導くかが、我らの役目となるだろう」


 その瞬間──王都の鐘が遠くで鳴り響く。

 覚悟の鐘が謁見の間を震わせた。


 レオンは踵を返し、広い廊下へと歩き出す。

 窓辺の光が彼の影を長く伸ばした。


「龍人族を……仲間を、そしてあの少年を救うために。今度こそ、この手で未来を掴む──」


 その声は決意に満ち、まるで遠い過去の誓いを思い出すかのように響いた。

 背後では、セラが小さく息をつきながら歩いてくる。


「あなたって、本当に真っ直ぐすぎるんだから」


「悪いか?」


「いいえ。だから王も、リアムも……あなたを信じるのよ」


 レオンは照れくさそうに笑い、歩みを進める。

 白い鳩が窓の外を旋回し、まるで新たな幕開けを祝福するように羽を広げた。


 ──だが、この時まだ誰も知らなかった。

 この誓いが、やがて世界を揺るがす戦いの始まりにすぎないことを。



次回:──黒き神殿に眠る真実

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