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第6話 落ち込んだ日の学校

「えっ⁉出られなくなった⁉」


翌朝、教室で陽菜は匠から体育祭に出場できなくなったことを聞いた。


「うん……お母さんに反対されちゃったから……」

「でも匠君は出たいんでしょ?」

「出たいけど……お母さんが反対するなら仕方ないよ」

「……それでいいの?」

「僕のことを心配して反対しているんだよ。だから何も言えないよ」

「……そっか。じゃあ私が代わりに出るね」

「ごめんね。迷惑かけて」

「いいよ全然!気にしないで!」


陽菜は明るく振る舞っていたが、匠は落ち込んだ表情をしていた。



数学の時間、先生が生徒たちを見渡す。


「じゃあこの問題を……相田。前に来て答えを書いてくれ」

「……」

「相田?」

「あっ……すみません。まだ解けてません……」

「珍しいな。相田が解けてないなんて……わかった。じゃあ……」

「……」


陽菜が匠を見ると、匠は暗い表情をしている。


(匠君……どうしたんだろう?)


心配そうに匠を見つめていた。



昼休み。匠と陽菜はいつものように食堂でご飯を食べていた。


「匠君。今日、元気ないけど大丈夫?」

「そう……かな?」

「うん。授業中ずっと暗い顔してるよ」

「……やっぱり顔に出てたか」

「もしかして出れないことが悔しいの?」

「……悔しいよ」


匠は拳を握りしめる。


「ずっと悔しいよ。小さい頃からずっと。やりたいことができない生活がずっと続いて、皆と同じように運動することもできない。皆と同じように学校にも行けない。

アメリカで手術しても僕の体が強くなったわけじゃない、できることが少し増えただけ」


匠の目から涙が零れる。


「ずっと嫌いなんだ。体が弱い自分が。少し走っただけで疲れてしまう自分が」

「匠君……」

「ごめんね。こんな話をして」


匠はハンカチで涙を拭く。


「匠君。人はさ、できないことが多いのは当たり前なんだよ?匠君の場合、それが運動だっただけ。皆できないことと向き合いながら生きてきているの。

匠君のように運動ができない人だったり、勉強ができない人、コミュニケーションが上手く取れない人だっている。

自分ができないことを悔しく感じて、自分が嫌になる時だってある。それでも、できないことはできないの。できるようになるのは凄く難しいの」


陽菜は匠の手を握る。


「できないのは仕方がないことだからさ。できることに目を光らせてよ」

「できることに……?」

「匠君ができることは何?」

「僕ができることは……勉強と……脚本製作……かな。でもそれぐらいだよ……」

「匠君ができることができない人がたくさんいるんだよ?私も物語とか、考えるの苦手だからさ」


陽菜は匠に微笑む。


「自分ができることに自信を持ってよ。勉強や脚本製作の中でも匠君にしかできないことはあるからさ」

「……!」


陽菜の顔を見た匠は、心に何か……説明できない変化が起きたことを感じた。



食べ終わり、食堂を出た二人はいつも通り楽しそうに会話していた。


「……ってことがあって。凄いと思ったんだ」

「確かにそれは凄いね」


匠は陽菜の横顔を見つめる。


「陽菜。ありがとう」

「何が?」

「陽菜のおかげで少し元気になったよ」

「それはよかった!大玉転がし、匠君の分も頑張るね!」

「うん。応援するよ」


二人は拳を突き出し、グータッチを交わした。

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