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第3話 転校初日の放課後

放課後、匠はとある教室にやって来た。


「すみません。演劇部の教室はここでしょうか?」

「そうだよ。もしかして入部希望者?」

「はい。脚本の方で⋯⋯」

「脚本希望か!!大歓迎だよ!俺は北条梓馬ほうじょうあずま。演劇部の部長だ」

「相田匠です。よろしくお願いします」

「ここに入部するって決めてる?それとも迷ってる?」

「実は僕、演劇部が脚本家を募集しているって友達に教えてもらって来てみたんですけど⋯⋯」

「なるほどねぇ〜。とりあえず見学してみようか。それで決めてくれたらいいよ」

「ありがとうございます」



「ここが役者の練習スペースだよ」


梓馬に案内された教室では台本を覚えている役者たちがいた。


「もうすぐ演劇コンクールがあってね。それに向けて練習中だ」

「脚本は誰が書いているのですか?」

「僕だよ。そしてこの部活の脚本家も僕だけという状態だ。1人で舞台の脚本を書くのはなかなか厳しくてね。それで脚本家が喉から手が出るほどほしいんだ」

「部長はどんな脚本を書いているのですか?」

「主にミステリーだね。小さい頃から好きだったから。匠君はどんな脚本を書くんだい?」

「僕もミステリーです。推理小説の影響で」

「一緒か。ますます入ってほしくなるね」


二人はミステリーについて語り合う。


「特にあの話のトリックには驚いたな」

「僕もです!まさかそうやってアリバイを作ってるなんて……凄いと思いました!」

「確かに。あと……」

「部長!ちょっと質問があるんですけど」

「今行く!じゃあしばらく見学していて」

「はい!」


梓馬は部員のところに向かう。


「このシーンなんですけど……」

「う~ん……じゃあヒロインがこう言ったら……」

「……」


匠は会話する梓馬と部長を見つめる。


(演劇作品は1人で作ることはできない。話を書く脚本家、登場人物を演じる役者、小道具を作ったりする裏方……たくさんの人の力で作品が完成するんだ……)


その環境がここにある。


(ここに入れば僕は……)



「もう5時か。そろそろ終わろう」

「え~……もうちょっと練習したいんですけど」

「これ以上残ったら僕が先生に怒られるから」

「は~い」


部員たちが渋々片付け始める。


「どうだった?見学した感想は」

「凄く楽しかったです。舞台の裏側ってこんな感じなんだって思いました」

「それはよかった」

「この部活に入部させてください!」


梓馬が嬉しそうな表情になる。


「もちろん大歓迎だよ!これからよろしく!」

「よろしくお願いします」

「皆!一旦集まってくれ!新しい部員が入ってくれたぞ!」

「相田匠です。これからこの部活の脚本家として頑張ります。よろしくお願いします」

「よろしく~!」

「これで脚本のバリエーションが増えるんじゃないか?」

「仲良くしよう!」


匠は部員たちに温かく歓迎された。



部活が終わり、演劇部の皆は校舎を出る。


「相田君!また明日!」

「はい!よろしくお願いします!」


匠は部員たちと別れる。


(楽しみだな……)


帰ろうとするとどこかから歌声が聞こえる。


(そういえば軽音楽部があるって陽菜言ってたな……)


良い歌だな~と思いながら歩き始める。


「♪この世界から始まる 私たちの物語

  昨日までの涙も 未来へ変えていこう

  光る空の向こうへ 手を伸ばすだけで

  新しい自分に 出会える気がしたんだ~」

「……!」


匠は足を止めた。


(今の声……どこかで……)


匠はハッと思い出し、校舎に向かう。


(もしかして……もしかして……)


匠は階段を駆け抜け、屋上の扉をバン!と開く。


「……!」


そこで見た光景に匠は思わず足を止める。

桜の木の下で出会ったあのドキドキが蘇る。

一歩ずつ近づき、黒髪の美少女に近づく。


「今の歌……君が歌っていたの?陽菜」


黒髪の美少女―――陽菜は匠の方を向いた。

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