第10話 登校再開日の二人
あれから数日経ち、匠は無事に退院することができた。
久しぶりに制服にネクタイを絞めて、鞄を持つと靴を履く。
「大丈夫?しんどかったら休んでもいいのよ?」
悦子が心配そうに話しかける。
「大丈夫だよ母さん」
「そう?しんどくなったら保健室に行くのよ?」
「わかってるよ。じゃあいってきます」
匠はドアを開けると家を出た。
「いってらっしゃい。気をつけてね」
教室に入ると、真っ先に由香が話しかけてきた。
「相田君!もう大丈夫なの?」
「うん。体育祭の時はありがとう」
「本当よ。急に倒れてビックリしたんだから。でも元気そうでよかったわ」
「ところで陽菜は?」
「私の席で話して……あれ?いなくなってる。トイレにでも行ったのかしら?」
「そっか……」
一応メールはしたけど既読スルーだったからな……
いつもの陽菜なら何か反応してくれるのに……
陽菜を待っていたが、教室まで戻ってくることはなくホームルームが始まった。
「じゃあ出席取ります。浅田さん……は休みかな?」
担任が欠席で記録しようとすると、陽菜が教室に入ってきた。
「すみません。トイレに行ってました」
「わかりました。では次……」
陽菜は匠と目が合うが、気まずそうに目をそらす。
(なんでそらすんだろう?いつもは笑顔でこっちに手を振ってくれるのに……)
もしかしたらまだあの事を気にしているのかな……
(ホームルーム終わったら話しかけてみようかな)
ホームルームが終わると、匠は陽菜に話しかける。
「おはよう陽菜」
「……!おはよう……」
陽菜は気まずそうにその場を離れようとするが、匠が腕を掴む。
「なんで僕から離れようとするの?」
「そんなことないよ……」
二人は沈黙する。
「……ねぇ。今日の放課後空いてる?」
「空いてるけど……」
「二人で遊びに行かない?」
「……今日は自主練しようと思うからごめんね」
陽菜は腕を振りほどくと、教室を出る。
「陽菜……」
陽菜の背中を見つめる匠を由香はじっと見つめていた。
あれから陽菜と話すことができず、気づいたら放課後になっていた。
「相田君」
匠が教室を出ようとすると、後ろから由香が話しかけてきた。
「水口さん。どうしたの?」
「よかったら放課後、一緒に遊びに行かない?」
「僕が……水口さんと?いいけど……」
「じゃあ下で待っててくれる?後で追いかけるから」
「わかった」
匠は考えながら廊下を歩く。
(どうして水口さんは僕を誘ってきたんだろう?そんなに話したことないのに……)
校門を出ると、陽菜も誰かを待っているのか、スマホを触りながら立っていた。
「匠君……」
「陽菜も誰かを待っているの?」
「由香とカフェに行く約束したから」
「えっ?僕も水口さんと遊ぶ約束してるんだけど……」
「どういうこと?」
陽菜が疑問に思っていると、スマホに由香からの着信がきた。
『ごめん。今日部活だったの忘れてたから匠君と一緒に行ってくれる?』
陽菜はスマホの電源を切ると、歩き始めた。
「由香来ないみたい。じゃあね」
帰ろうとする陽菜の手を匠が掴む。
「じゃあ僕と一緒にどこか行かない?」
「……いい」
「どうしてもダメなの?」
陽菜は黙ったまま動かない。
「なんで私と行きたいの?」
「陽菜は……僕が光星学園に転校してから色々よくしてくれて……最初にできた友達だから陽菜との仲を深めたい」
「……!」
陽菜が振り返ると、匠は真剣な表情で陽菜を見つめている。
「それって……私のこと好きってこと?」
「えっ……」
匠の頬が赤くなる。
「ち、違う!そ、そういう意味じゃなくて……と、友達の仲を……」
「冗談だって!そんなに慌てないでよ」
「そ、そっか」
「私もごめんね。あんなことが起きて、匠君とどう接すればいいかわからなかったから避けてしまったの。私と仲良くならない方がいいんじゃないかなって」
「そんなこと……」
「でも匠君がそう思ってくれて嬉しいよ!ありがとう!」
陽菜は笑顔で匠の手を引っ張る。
「どこ行く?」
「陽菜が行きたいとこならどこでもいいよ」
「じゃあディズニー!」
「それは無理だよ」
笑い合う二人を由香は見守るように見つめる。
「由香!練習始まるよ!」
「今行く!」
由香は安心すると、校内に戻った。




