第62話「最後の封印、動き出す絶望」
黒い雷鳴が空を裂いたのは、世界中の大陸で同時だった。
エルディアの王都、竜の谷、死者の山、そして遥か東の砂の王国。全ての空が黒く染まり、天が地に落ちるかのような震動が、あらゆる魔法障壁を貫いた。
「ついに……動き出したか」
ヴァルゼアの玉座に腰を下ろしていたラグナ・エインフェリアは、静かに立ち上がった。右手には、古代文字が刻まれた黒の大剣〈深淵の誓約〉。それは、世界の封印を解く唯一の鍵でもある。
「この世界は、もはや逃れられぬ運命に呑まれる」
側に控えていた黒衣の神官が呟いた。「七つの封印、その最後……“魂の扉”が開かれました」
「ふむ。では……奴も目覚めるな」
一方その頃、遥か西の海に浮かぶ〈忘却の孤島〉では、ミリアとカイが異変に気づいていた。
「この魔力……尋常じゃない!」
ミリアが叫ぶ。空を裂いた黒い雷が、島の結界を破壊しようとしていた。
カイは手にした魔剣を強く握る。「この気配、間違いない……“あの男”が目を覚ました」
「あなたの宿敵……?」
「いや、それ以上だ。俺の過去、そしてこの世界の真実に関わる存在――“原初の神”」
その頃、王都では騎士団の指揮を執っていたフィリアが、急報に顔を歪めていた。
「各地で魔物が暴走している! 封印が解かれた影響ね……!」
そこに現れたのは、氷の大陸を統べる〈氷牙の魔女〉ルナ。彼女は短く言った。
「――協力するわ。今だけは」
敵も味方も、旧き秩序を越えて動き出す。
すべては、最後の戦いのために。
そして、月の裏側に浮かぶ“世界の外”――そこに閉じ込められていた少年が、ゆっくりと目を開けた。
「……来たか。ついに……時が来た」
世界は収束を始めていた。
すべてが交わる終焉の地へ――。
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第62話では、静かに進行する戦いの中で、それぞれのキャラクターたちが「何を守るべきか」「何を信じるべきか」を改めて見つめ直す展開となりました。特にシリルとユリアの会話には、今後の展開に関わる重要な伏線をいくつか散りばめています。些細な台詞やしぐさにも意味がありますので、ぜひ読み返してみてくださいね。
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次回、第63話ではついに「運命の夜」が幕を開けます。どうぞお楽しみに!




