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第15話:封鎖された街道と動かぬ荷車

封鎖された西の街道に立ち往生する荷車と馬たち。

異世界の自然現象とは異なる、意図的に仕掛けられた音響共振による罠だった。

慧は現代の物理知識を駆使し、逆位相を利用したノイズキャンセルで問題を解決。

だが、発信源は依然として謎のまま、影の組織の策略は深まっていく。

飛行型魔導具の暴走事件から数日。村の空気は徐々に落ち着きを取り戻していたが、慧の元に緊急の知らせが届く。


「西の街道が封鎖されました。物資を積んだ荷車も足止めされています!」


村の物流の命綱ともいえる街道。その要衝を何者かが封鎖したという情報は、慧の中で警鐘を鳴らした。組織の次の一手だ。


 


「またか……やり方が露骨になってきたな」


 


慧は現場へと急行し、荷車が立ち往生している現場に到着した。そこには、地面を覆う謎のぬかるみ、巨大な岩、そして動かぬ魔導鎖があった。馬も怯えて動かない。


 


「この粘土質のぬかるみ……不自然だ。雨のあとでもないのに?」


慧は手元の温度計と湿度計を使って周囲の環境を測定し、ぬかるみの原因が周囲から発せられる“微細振動”であることを突き止める。


「地盤を揺らし、水分を地表に浮かせて泥にしている。これは地震ではなく、意図的な振動……つまり“音”か」


慧は現代の“定在波”や“超低周波振動”の知識を応用し、魔導的な音響共振を利用した罠であることを突き止めた。


 


「やはり組織がしかけてきたか。だが、その手口、読めてきた」


 


彼は荷車に積んでいたコンビニ製品のひとつ、“ポータブルスピーカー”と改造済み魔力コイルを取り出し、反対の位相で振動を打ち消す“ノイズキャンセル共鳴装置”を即席で構築。


ぬかるみは徐々に沈静化し、荷車の車輪が再び回転を始める。


 


村人たちは歓声を上げ、荷馬車の御者は目に涙を浮かべて頭を下げた。


「店長様……あんたがいてくれて、本当に良かった……!」


 


慧は静かに笑った。


「俺は店長だからな。商品も、お客さんも、どちらもちゃんと届けてなんぼだ」


 


その夜、慧はコンビニのカウンターでレシートの裏に小さくメモを書き込んだ。


「音響攻撃:逆位相の応用で対応可。振動には常に原因がある。問題は、発信源が特定できなかったこと――」


組織の姿はまだ見えない。けれど、着実に、戦いは始まっている。

今回は、現代の音響工学の応用で異世界の罠を解除する、知的でスリリングなエピソードをお届けしました。

慧の「店長」としての役割と、科学者としての鋭い洞察が光る展開です。

物語の核心に近づく組織との対決は、ますます激化しそうです。

次回もどうぞお楽しみに!

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