水竜避けたら、池ぽちゃした。
「この道まっすぐいけば、間に合うわよ」
「よっしゃ」
男子生徒は少女を抱えて夜の公園を爆走中である。
しかし、あるところで男子生徒は急ブレーキをかける。
「本当にここ通るの?」
男子生徒の体と声は震えていた。
「通るわよ。ここを渡って右に曲がれば、高校に着く。目の前にあるのはただの池にかかった橋じゃない」
「その池ダメなんだ。俺たちデュラハンは水の上を走れない。橋とかがあれば渡ることできるけど震えて走れない別ルートを頼む!」
必死な様子で少女に頼み込む。
「わかった。左をいけば迂回ルートだから」
少女は落ち着いた様子で答える。
そう言って男子生徒は迂回ルートを走り始めた。
池のそばに置かれている看板を見ずに。
『今年も、小型水竜の子が生まれました。
行列に気をつけて、自転車、ランニングしてください』
二人はその看板に気付かず。
迂回ルートに走って行った。
「よしこれなら間に合う」
池の近くの時計を男子生徒は見ていた。
男子生徒が速度を上げた時だった。
「待って!目の前、水竜の赤ちゃんの行列!避けて!」
男子生徒はぶつかる直前、咄嗟にバックステップで勢いを殺す。
しかし、その反動でバランスが崩れた。
「「わ、わ」」
そして、二人は池に落ちた。
ちょうど時計が映り込む位置だった。
池は深かった。
「がば、がばげがば」(おれ、およげない)
「がばびびぶがばっべ」(わたしにつかまって)
男子生徒は水の中に少女にしがみつく。
「ぶべびょぶばん」(ふねしょうかん)
少女は水中で叫ぶ。
すると船が現れて、そして二人と共に浮き上がる。
「申し遅れました。私の種族はカローン。せんどうと泳ぎが得意な種族です」
少女は水を滴らせながら、船の先に立つ。
「ありがとう。助かった」
男子生徒は息切れしながら答えた。
「いえいえ、あれ?」
少女は空を見て怪訝な顔をする。
「どうした?」
「今日は新月のはずなのに、満月、しかも赤い」
少女の目線の先では、赤い満月がほんのりと公園を照らしていた。
「まじかよ。異空間に入ってしまった」
男子生徒は頭を頭を抱えたかった。
しかし、その頭は少女の腕の中である。
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