目指せ、遅刻回避
ここは妖精の特性を人が持つ世界。
とある町の交差点。
ここはこの町の高校、ふえありい高校の通学路である。
授業開始の時間が近づき、人がまばらとなっていた。
その通学路を学ランをきた男子生徒が腕時計を気にしながら、走っていた。
男子生徒は信号が変わるのを足踏みして待ったあと、横断歩道を急いでかけ抜ける。
しかし、渡った先でセーラー服をはためかせた少女にぶつかった。
後ろに倒れ込む少女を男子生徒が背中に手を回して支える。
ぶつかった拍子に男子生徒の首が取れた。
それに気づいた少女は咄嗟に手を伸ばし、男子生徒の頭が地面につく前にその髪の毛を掴む。
「いった!」
男子生徒の頭から悲鳴が上がる。
「ごめんなさい。」
少女は、支えられた状態のままなんとか頭を元に戻す。
「支えてくれてありがとう。」
男子生徒が腕を解く。
「どういたしまして。」
男子生徒が軽く頭を動かしたら外れた。
それを咄嗟に少女は受け止める。
少女は慌てる。
「いい、一度外れると直しずらい。ところで君はふえありい高校の生徒?
助かった俺迷子なんだ。
入学早々遅刻したくねえから、助けて」
「もちろん」
少女は緊張した様子で答える。
「わかった。ありがとう」
少女の腕の中にある男子生徒の顔は安心した笑顔になる。
男子生徒は首が取れないよう押さえながらお礼を言う。
「じゃあ案内するわね。つっ」
少女が先導して歩こうとした矢先、右足首を気にする。
どうやら、先にぶつかった時に足を挫いたようだ。
「ごめん、俺がぶつかったせいで。」
「この道をまっすぐ行って、たばこ屋さんのところを左に行って薬局のところを右に行けば高校だから先に行って。
学校にはあんたとぶつかったことを言わない。」
少女は男子生徒を遅刻から救済することを優先した。
「俺の首持って」
そう言っていきなり、少女に首を押し付けてきた。
勢いのまま少女は受け取る。
男子生徒は少女の背中と膝裏に手を回して、抱き上げた。
「俺をナビゲートとしてください。
俺の足なら君を抱えた状態でも行けます」
こうして、男子生徒と少女の遅刻を回避するための十五分間の冒険が幕を開けた。