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1. 覚悟

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女を抱くのも仕事のうちだ。

命令されて━━━



『きれいなひとよ。抱いてあげなさい』



あれがたかだか14の娘のセリフか。



『そしてちゃんとイかせてあげなさい。貴方に夢中になるように』



こまっしゃくれた小娘。



『女1人、満足させられない男ならわたしも要らないわ。そうね、貴方をボディーガードにするための試験とも思ってちょうだい』



新しい水無瀬の当主


これからあんなガキに仕えなければならないのか。



ホテルのベッドで伊佐山は、女を抱いていた。

新たに主人となった少女の命令だった。


少女の名は、水無瀬礼夏(みなせれいか)


水無瀬一族の新たな当主となった、14歳の少女だった。





「新しい御当主様、水無瀬礼夏様だ」


数十人の大人達がいっせいにひれ伏した。

畳に擦りつけんばかりの頭の下げかたに、御簾のなかの礼夏は笑いそうになっていた。


『わたしみたいな小娘に』


礼夏は14歳になったばかりだった。


『ばかみたいだわ』


顔に薄い布をかけられ、御簾の中にいる礼夏。

礼夏にとって、こんな茶番はどうでもよかった。


それよりもこの中にいる、例のボディーガードの存在が気になった。




水無瀬礼夏は、今日、新たな当主として、初めて水無瀬一族の前に姿を現す。


14歳になったばかりの礼夏は、十二単を身にまとい、長い髪を後ろで纏められ、顔にはわずかだが化粧を施されていた。


礼夏の世話係、身支度を整えた男は、風見順という19歳の青年で、礼夏の従兄弟にあたる。


子供の頃から仲がよく、礼夏が次代の当主に選ばれた時に、側近の1人として礼夏自身によって選ばれた者だった。


本来なら当主の周りにはべらす人間は、水無瀬一族を取り仕切る一団が選ぶのだが、礼夏の場合は特別だった。


『世話係くらい自分で決めるわ。決められないなら当主なんてごめんよ』


特別視をしなくてはならないほど、礼夏の霊能力は高かったのである。

霊能力だけではない。

礼夏は人を操る能力・邪眼を持っていた。



水無瀬一族は大きな企みを持っていた。


『一つの国家を掌握する』


礼夏の邪眼を利用すればそれも夢ではない。



『身の程知らずね。バカなのかしら』

一蹴する礼夏に、風見順は、『小者ほど尊大な夢を見るものです』と嘲った。

続いて風見は礼夏に問われ、最初の標的を示した。


『伊佐山という男です。ボディーガードですが当主の世話係りも兼ねていました』


『処女性を尊ぶくせに男が世話係になるの?』


『はい。二十歳になった時点から、男に触られることにも慣れなくてはいけないということで・・。

知世様も二十歳になったときに世話係が交代となり、伊佐山が選ばれました』


『そう、知らなかったわ・・。お姉さまの世話係はずっと白井がしてるのかと。白井はどうしたの?』


『はい・・』


風見は言葉を濁し、時間の空白が続いた。


『・・・死んだのね・・』


『表向きは病となっています』


『そう・・。お墓は?』


『喜多山の霊園に代々の墓がありますのでそちらに』


『白井は手伝ってくれるかしら?わたし達のやることに』


『━━━必ず』


白井は先代当主・水無瀬知世(みなせちせ)の最初の世話係だった。

女性だったが武術にも長けており、当主の世話係と護衛を兼ねていた。


そして、白井は知世を水無瀬一族から逃そうとしていた。知世の霊能力が落ち始めていたからだった。


能力の落ちた当主の行く末は惨めなものだ。


落ちた能力のかわりに、己の体を一族の為に差し出さなくてはならない。

霊能力が強く、身体的にも強い子供を授かるために、一族のなかの、特に屈強な護衛の男達複数と性的な交わりを強いられる。


行為は妊娠が確認されるまで続き、出産後に再び男達との性交が始まる。


水無瀬本家・直系の知世もそのようななかで生まれている。


白井は知世の霊能力が落ちているのを知られる前に、知世を逃がそうとしていた。しかし、上層部にみつかり、葬られてしまった。




風見順の瞳が憎しみに燃え、強い意思を現している。

礼夏はこれから自分のすることに改めて覚悟をしなくてはいけなかった。


なるべくなら、関係のない人間は巻き込みたくない。


始末するのは己の悪しき一族・水無瀬だけでいい。


だが、いまはまず、伊佐山だ。


礼夏が『お姉さま』と呼び愛した尊敬すべき従姉・水無瀬知世を惨めに死なせた報いを与えなければならない。





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