鉄の牢鉄臭すぎ
「もし転生できたら何になりたい~?」
部活が終わり学校から帰る途中、ふと思いついた話題を友達にふる。
「え~、悪役令嬢かな。」
「それ絶対最近ハマってる漫画の影響でしょ…。」
「そう!悪役令嬢になって、ヒロインざまぁするの!」
「ヒロインが良い子だったらどすんの。」
「その時は内政改革!マヨネーズやらを広るのだ!」
そっち系に行くのね。
それやるにしても色々壁があると思うけど、まあこいつやったら上手いことやるでしょう。こんな感じの癖に賢いし。
「●●●は?」
「神獣?的な?伝説の○○みたいなのになりたいかなぁ。人化機能付きで。」
伝説の○○…か。
「じゃあ、伝説の雀か。」
「いや、どうして雀?もっと強そうな奴がいいんだけど。狼とか。」
いやいや、雀を侮っちゃあいかんよ。あいつ、あんなに可愛いくせに菌めっちゃ持ってるし。空飛ぶネズミって言われてるぐらい持ってるし。その菌使ってどうにかすればすっごく強そうじゃん。
…しらんけど。
「いいよね、雀。」
「うん!いいと思う!」
「いや、本人が嫌がってるだけど?いいと思うじゃないんですけども?!」
――――――
何か鉄臭い気がする…、それに床が硬い?
とりあえず転がってみよ。
ゴロゴロ…ガッ!
「…いった!いった?!頭…頭!だれ?ここに鉄の塊おいたの!いったぁ!」
頭割れたかと思った!マジで痛え!
「う〜…、痛いぃ…。目つむったまま転がらなきゃよかった…。」
はあ、最っ悪の目覚め…。
「て、ここどこ?」
周りを見渡すと鉄の棒棒棒…、上下は鉄の板。
棒と棒の間から見える景色は見覚えがある。村の広場だ。
「え〜とこれは、牢?」
それも、獣とかを入れる方の牢。さっき頭をぶつけたのは多分鉄の棒の部分だと思う。
確か、村に戻ろうとしたら厳ついオッサンだらけになつてて、驚いてたら木が折れて落っこちた。
「しくったな〜。」
木の枝が自分の体重に耐えられるかどうかを見極めるのは、木々を移動する中での初歩中の初歩だ。
腹が減りすぎて初歩が出来ないぐらい判断力が鈍っていた事、気づかなかったな。
「おう、ガキ。起きたか。」
下に向いていた視線を前に向けると厳ついおっさんが立っていた。
おお、迫力あるなぁ。筋肉モリッモリで顔と体にある傷がより怖さを引き立ててるよ。
「あ、ども。ハオンともうします。」
「はっ、礼儀の正しいガキだな。」
礼儀の正しくないおっさんだな。こっちが挨拶したんだからし返せよ。
「んで?なんであんなとこに寝っ転がってたんだ?」
「いや、好きで寝っ転がってたわけじゃないよ。木から落ちて気絶してたんだよ。」
「ふ〜ん。で?誰に言われて調査しに来たんだ?」
「いや、調査も何もここ僕の住んでる村だから。」
「は?」
いや、は?って言われましても。こっちがは?何だけど。おっさんらがいて何で父母らがいないの?
気づけば周りには知らないごっついおっさん達が集まっていた。
「お前、ここの村のガキなのか?」
「うん。」
だからそうだって言ってるでしょ。
「ぷっ、ふははははははは!」
「ひあははははははははは!」
「まじかよぉ!魔神隠しの生き残りかよ!」
「すげーなこのガキ!逃れたのか!」
周りにいたおっさん共が急に爆笑し始めた。
え?なになに何何?怖い怖い、結構威圧感あるの君ら自覚してる?そんな人らが一斉に笑い始めたら泣く子も死ぬよ?
「魔神隠し?ってなに?」
「ふはっふふ、知らねーの?この村みてぇに村人だけが消えちまう現象のことだよ。」
「そうそう、最近王都で噂になってて、それが魔神のせいじゃねえかって言われてんだよ。」
は〜、なんだ神隠しに魔がついて大規模になっただけか。
「え?まって。じゃあ村のみんなは?おっさん達が殺したんじゃないの?」
「なわけねーよ。たまたま良いところがあったから拠点にしようと思って準備してんだ。てかてめぇらあ!そろそろ笑い終わって準備にもどれ!」
な〜るほど?道理で血痕とかが無いわけだ。まあ、死んでないなら何処かで会えるでしょ。
「そんなことよりここから出してくれない?鉄臭さと硬さが凄く不快。」
「無理だな。逃げられると困る。」
「なして?」
「売るために決まってんだろ。」
「は?!」