気のせいか、で終わると大体碌なことない
あれから六日経ちました。
最近誰かに見られてるような気がするんですよねー。
ずっとじゃないんだけど、ふとした時に「ん?」って感じで。でも、気配探っても誰もいなくて、それが怖くて怖くて。それが日に日に強くなっていってるんだよ。
流石にずっと続くから原因を考えた。そこで上がったのがこちら!
変な令嬢襲来案件!!
いやまあ、偶々かもって思ったよ。けど、当日に近づくにつれ強まっていくのと、事の始まりが令嬢襲来の話を聞いた後ぐらいからなんだよ。
もしかした令嬢以外にも襲来してくるかもしれない、そう思い、仕事の手伝い中に父に話してみた。
「…なるほど分かった。村長に相談してみよう。」
「マジで?信じてくれるの?」
「賢いお前がそんなしょうもない嘘を吐くわけないだろう。そうでなくても親は子を信じるものだ。少なくとも俺はそう思ってる!」
「ふーん。」
「ああ。だがお前の考えていることは起こらないと思うぞ。何故ならご令嬢とともに公爵家の精鋭部隊が来てくださるかな!」
「なるほどそれは確かに安心できるね。」
「だろ。だから安心して遊びに行ってこい!今日の手伝いはもういいぞ!」
やた~。
これ以上僕がやることないし後は大人に任せて森に行こう。
「じゃあ、森に行ってくるね~。」
「偶には同い年の子と遊べよ~!」
「やだ~。」
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「ったく、あいつは。」
昔から子供とはつるまず、俺の後ろをついて回り、いつの間にか気配の探り方や森での移動方法などを習得していた。ならばと思い身体強化を教えると一週間ほどでモノにしてしまった。あれから半年たち、もはやこの村で森の中を駆け巡るにハオンに追いつけるものはいなくなった。
「おうおうもう見えなくなりやがった。さて、村長とこに行くか!」
だが、ハオンが気配をつかめないなら相当な手練れかもしれん。しかも日に日に強くなるとなると、かなりの数がいる可能性が高い。
「とにかく早く言いにかな…」
「そ~れは困るねっ☆」
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いや、やっぱ森はいねぇ。心が落ち着くし、いい匂いだし、木々を渡る爽快感はもう最っ高!
「はぁ~、もうずっとここに居たいぐらい…。」
お気に入りの場所に寝っ転がり、木葉の隙間から覗く青い空を見ていると、木の陰から何かが顔を見せた。
「あ、つーちゃん。お邪魔してるよ。」
つーちゃんはここ一体の主で、見た目はまんま鹿。ただ角が透明のような、空のような色?になってて凄く綺麗。僕はその角からとって「つーちゃん」と呼んでいる。
ここはつーちゃんのお気に入りの場所でもあるようで、最初来たときはすっごい怒られた。でも、だんだんと心を許してくれるようになり、つーちゃんがいない間に僕が来ても特に咎められることはなくなった。
ちなみにこの場所は黄色い布の範囲外にある。父母にばれたら絶対森に入れてもらえなくなる。うん。確実に。
いや別にわざと出たわけじゃないんだよ。なんか熊みたいな奴に追われて逃げまどってたらここに着いたの。そしたらなんということでしょう!熊が焦って引き返していったではないですか!
それからもここは栗鼠やら兎やらの草食動物しか入って来ないし、まあ安全よねって判断して森に入ったら必ず来るようになったんよ。
「つーちゃんとも長い付き合いになるよねぇ。でも何回見てもその角には見惚れるなぁ。」
どうでもいいことを喋りかけていると、急につーちゃんが体を僕にくっつけてきた。
「うわ!珍しいね。君から近づいてくるなんて…。」
つーちゃんの体は動物特融の匂いがせず、草木のいい匂いがした。
向こうからくっついてきた嬉しさでつーちゃんに夢中になっていると、だんだんと眠くなってくる。
「ごめん…。もうちょっと…このままで…おね…が…い…。」