てんせ~い
「ただいまぁ~。」
「おかえりハオン。ご飯にするから綺麗にしてきなさい。」
「分かったぁ。」
腹減ったなぁ。
あ、そうだ。
「父さん村長さんとちょっと話してから帰るって。」
「分かったわ。ありがとう。」
僕はしっかり転生しましたと。
要望どおりに目は暗めの金色に一重で、髪はこげ茶色の少し天然パーマが入ってる感じ。顔もそこそこ整ってる。それとなんだかちょっと前より性格が楽観的になった気がする。
性別が男になったけど過ごしているうちに体の違和感も無くなった。
父の名前はイベルで母はアリンという。
家は農家で、少し離れた所に畑があって、そこで野菜とか麦を作っている。
現在僕は七歳である。
最近の日課は近所にある森の探検。最初の方は父と一緒に行ってたけど一人で大丈夫だって判断されてからは一人で行っている。
探検って言っても、行って良い範囲が決まってて、木にくくってある黄色い布より外に出たら魔物が来るから駄目なんだって。この黄色い布には魔物除けの力があるみたいで、よそから来た怪しめの商人から買ったらしい。
しっかり効いてるのか、村で魔物を見たことないけど怪しいめの奴から買ったのを信用するのもどうかって話しだよね。
ていうか怪し"めの"ってなんだよ。
森に行ってるから、自衛の手段はある。
そう、魔法!
父から身体強化のやり方を教えてもらい、合格はもらった。父の実力がどんなものか知らないからどこまで強いか分からないけど。
ただ、合格を貰ってから半年ぐらいずっと使ってるからより上達してる。
魔法って、魔力量によって使える規模は変わってくるみたいで、魔力量の少ない僕達平民とかは、火を起こしたり水を出したりするぐらいが精一杯なんだって。貴族だと魔力量が多いから、攻撃魔法みたいな威力がある魔法を使えるみたい。でも、極稀に平民からもすっごい多いやつが出てくるらしいけどね。
結構よくある設定だよね。
あ、僕はまぁ、うん。そこそこ…だよ…。うん、そこそこ…。
…どっかの爺が"そこそこ"ってのを、勝手に"そこそこ多い"に変換したとか無いと思ってるから。焚き火に火をつけようと思ったら火柱出てきた記憶とか無いから。制御するために森に篭もりすぎて一週間家から出させてもらえ無かったりしないから。
…まあ、言えることは、誰にもバレて無いし、これからも誰にもバラすつもりもない。
たまに、"うわ!幼馴染みに見られてバレちゃった!見せて(もしくは魔法を教えて)あげるから内緒だよ?"みたいな奴がいるが、そんなシチュに為るような幼馴染みはいなんていない!
というわけで、僕は普通の農民デス。
「母さん手伝うことある?」
「じゃぁこの皿を机に並べてくれる?」
「りょ~か~い。」
木の皿を机に並べていると父が帰ってきた。
「疲れた~!」
「お帰り。」
「ただいまハオン!今日は何か採れたか?」
「いや、体を動かす為だから何にもないよ。」
「そうかそうか!お前は運動神経が良いから楽しだろう。」
「うん。」
「私とあなたの自慢の息子ね。」
「俺とお前の自慢の息子だ。」
「うふふ!」
「ははは!」
うわぁ…。このバカ夫婦め…。
「ねえ、ご飯。お腹減った。」
いつまでイチャイチャしとる。こちとら動いて腹減っとるんじゃい。
「あ、ごめんなさいね?食べましょう。あなた。」
「ああ。そうだな。」
_________
「ねぇ、村長と何喋ってたの?」
「ん?ああ!そのことに関して言うことがあるんだ。」
「あら、また何か商人でも来るの?」
「いや、もっと大物だ。」
なに?ドラゴンでも来るの?
「ドラゴンでも来るのかしら?」
……なんだろ、こういう場面でこの人が親だなって実感する。
「そんなのが来たら村消える。そうじゃ無くて人物!」
「誰くるの?」
「ふふ…、聞いて驚け!なんと、公爵家のご令嬢だ!!」
公爵家のご令嬢?何でまたそんな方が?
しかもこんな偏狭なとこに。
「どうやらな?そのご令嬢は少し変わった方でな、このアパキア王国の東西南北端から端へ自ら人材を探しに周ってるらしい。」
うへぇ…、何じゃそりゃ。その探し周るための金は誰が納めた税金なんだか…。
ていうかこの村が所属?してる国ってアパキア王国っていうんだ。初めて知ったわ。しかも合衆なんだ。
「行動力あるご令嬢ね。」
「だろ?!きっとこの村からはハオンが選ばれるだろうな!」
「うぇっ。何で、嫌だよ。僕はここの農家ついで穏やかに死んで行くのが夢なんだから。」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃないの。」
「ハオン…!だがな別に気を使わなくてもいいんだ!お前は良いとこに稼ぎに行ってくれ!」
嫌だって言ってるでしょうが。
「いらっしゃられるのは一週間後だ。そのときは全員村長の家の前に集合だそうだ。」
強制イベントかい。
「楽しみねあなた。」
「ああ!」
…なんだろすっごい嫌な予感がする。






