1年が過ぎて
皆さん、おはようございます
来週にはテストが控えているとういうのに、一切勉強に手を付けていない状況となっています
何故理系の学校に行って文系で苦戦しなければならないのか‥‥
では、『1年が過ぎて』です
お楽しみください
「お父様、お母様、試験頑張ってきますね」
「ええ。シアなら合格することができるわ。緊張しすぎず、油断はせずに頑張ってきてね」
「シアなら合格できるさ。変に気負い過ぎずに頑張ってこい」
「はい!では、レイビン先生行きましょうか」
「ええ。お嬢様をお預かりしますね」
「レイビン先生、シアをよろしくお願いします」
「変な男を近寄らせるのではないぞ!」
「ええ。承りました」
私とレイビン先生は馬車へと乗り込むと、王都へ向かった出発した。
今回王都へといく目的は賢者の認定試験を受けるためだ。一括りに賢者と言ってはいるが、順位持ちとそれ以外では立場も違う。
つまり、賢者が増えれば増えるほど、賢者全体の実力は上がっていくわけだ。そうは言っても最初は100位に勝たなければならない。最後に賢者となったのはレイビン先生なので、レイビン先生が合格した時に99位だった人という事だろう。
2日ほどあった馬車での旅も終わり、王都へと到着したのは4時過ぎだった。
途中は村などに立ち寄り休んだりしながら進んだが、初めての馬車での旅で腰が痛くなった。
「セシリア様、これから試験となりますが大丈夫でしょうか?」
「え、ええ。少し腰が痛いけど、この程度なら回復させられるから大丈夫よ」
「では、ギルドの方へ行きましょうか」
「はい」
王都へと入り、すこし進んだところで馬車を降りた。貴族用の出入り口のそばには宿も存在していて、一時的に王都へ来た場合にはそちらに泊まる貴族も多い。
今回は試験を受けに来ただけなので、今日試験を受け明日は休憩を取る予定です。明後日には家へと帰る予定なので、宿に泊まることになりました。
レイビン先生についていき、10分ほど歩いたところでギルドへ到着した。
私がまだ小さいのでレイビン先生は私の歩幅に合わせてくれていたので、レイビン先生一人ならばもっと早くについていたのかもしれない。
「すいません。本日賢者の試験を受けに来たセシリア・レイン・アンクラジーネ・クロケット様の講師であるレイビンです」
「レイビン様ですね‥‥確認しました。セシリア様の試験は本日の5時からとなっております。それまで如何なさいますか?」
「魔法の訓練をしていても大丈夫でしょうか」
「少しお待ちください‥‥現在、訓練場を使用中の方はいらっしゃいませんので使えます」
「ありがとうございます。では、訓練場を使用させていただくことにします」
レイビン先生が受付を済ませてくださった。
私ではこうはいかなかったかも知れない。私はまだ家名は全然覚えていないが、もしかするとレイビン先生は元々高位貴族の生まれなのかもしれない。先生は家を抜ける際に家名を捨てたので、何処の出身なのか全く分かっていません。
「セシリア様、訓練場の使用許可が下りたので、訓練場で魔法を少し使用しておきましょう」
「分かりました」
「試合の開始は5時からのようなので、今から30分ほど練習したら試験会場へと向かいます」
「では、急いで練習しましょう」
「では、いつも通り魔力を流動させる訓練からしていきましょうか」
「はい。分かりました」
「いつも通り丁寧に行ってくださいね。これが出来なければ、まともに魔法を使うことなど夢のまた夢ですよ」
先生に返事することも忘れて、魔力を流動させた。まずは体中をゆっくりと、でも、遅くなりすぎないように。脈と同じくらいのペースで魔力を流します。少しずつ早くしていき、倍くらいの速度になったら、何度か回して終了です。
「ふぅ」
「終わったようですね。でしたら、あまり魔力を使い過ぎるわけにもいきませんからね。中級魔法程度に収めておきましょう。火、水、光の順、詠唱ありで使ってください」
「分かりました。“火よ、敵を貫く槍となれ”〈火槍〉
“水よ、敵を閉じ込める檻となれ”〈水牢〉
“光よ、我を癒す鎧となれ”〈光鎧〉」
最後の魔法は光とついているが、別に色がある訳ではない。私を回復させるためのもので、現実に存在する者に対しては全く効果を成さないものだ。
「はい。魔法は十全に使用できるようですね。そろそろ30分が経ちそうなので、試験会場に移りましょうか」
「分かりました」
試験会場へ移ると、一人の女の人が会場に立っていた。
「あれ?姉さん。何でここにいるんだい?」
「‥‥ああ、レクルドか」
「それは兄さんだよ!」
「じゃあ‥‥レイビン?」
「そうだよ。はぁ、姉さんと喋っていると、魔法を使っているときの倍くらい疲れるよ」
その表現をされるとは、よっぽど疲れるのだろう。
それはそうと、レイビン先生のお姉さんという事は、史上最年少の賢者となった人か。
「初めまして。セシリア・レイン・アンクラジーネ・クロケットと申します」
「ん。レイフィー・シンク・スールド・ラーモス。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします(ん?ラーモス‥‥どこかで聞いたよう、な‥‥ああ!ヒロインじゃない!と、言う事はレイビン先生もラーモス家の人なのね)」
「姉さん、レイネシアはどうなの?」
「‥‥全く訓練していなくて、今度初等部に入れられると思う」
あれ?私の知っている設定と変わっているな。
私が知っている設定だと、勤勉な性格でいつも魔法の訓練は欠かさなかったって‥‥それに、ゲームでの私や王子とは違って、高等部からの入学だったはずじゃ‥‥(ゲーム内での私と王子は人脈を作るため中等部から入学していた)
「はぁ。きっとカインさんからかなりやる様に言われていたと思うのだけど。それでもやらなかったの?」
「ん。セシリアの話を聞いて少しやったらしいけど、言われていた下級の中級魔法すらも使えなくて、初等部への入学はほぼ決まっているらしい」
え?下級属性の中級すら使えないって‥‥今後の魔法使いとしての人生は絶望的じゃない。彼女、高等部に入るまでに上級属性の中級まで使える設定よね。
年齢に従って魔力が伸びるとは言っても、ひたすら毎日訓練した人と、それ以外とではかなり差が出るはずよね?
「やっぱりやらなかったのか。流石に初等部に入れられたことで、訓練することになればいいけど…」
「そう言えば、第1王子も全然だめらしい。彼も初等部に入れられるって聞いた」
第1王子も?ゲーム内だと|かなり有能《下級の上級までは無詠唱で使える》な設定だったと思うけど‥‥何があったのかしら?
「そっちは、セシリアの噂を訊いて、ヤル気を失くしたと訊いた」
私が原因だった?
「はぁ。セシリア様の世代、レベルが低い人多すぎないか?」
「第1王子の腹違いの弟の第2王子は逆にやる気を出したらしい。あと半年もすれば魔術師にも慣れると訊いた」
第2王子は攻略対象ではなかったのでほとんど情報はないが、第1王子の出涸らしと呼ばれていた。腹違いなのに出涸らしと言うのはよく分からなかったが、まあ、ゲームではそこまで有能ではなかったのだろう。
それが、今回はかなり有能に育っているという事か?いや、元々持っていたけど使えていなかった才能を開花させているのかな?
「まあ、変な事になっていることは分かったよ。で、姉さんは何故此処に居るんだい?」
「‥‥?」
「(何で首をかしげたの?)」
「(ポン)彼の付き添い」
手を叩いて思い出したように指さした先に居たのは、黒目黒髪の同年代に見える男の子だった。
黒目黒髪、という事は王族という事だ。黒目黒髪はこの国では王族しかいない。過去の転移者が建てた国なので、王族は黒目黒髪が継がれていると言われている。
「王族かい。という事は、先程話にも出てきた第2王子だね。なぜ冒険者の姉さんが護衛をしているのかは分からないが、まあ、SSランクだからという事にしておくよ」
「ん。セシリアの実力が見たかったらしい。それで、偶然王城に行っていた私が子守を任された」
なぜ王城に行っていたのかは聞かないことにしよう。
それにしても、レイフィーさんの冒険者ランクがSSランクだったとは。私の記憶が正しければ、SSランクは現在国に3人しかいなかったはずだ。
「そうか。じゃあ、上に上がっていてくれよ」
「私が今回の審判‥‥丁度、相手が来た」
後ろを振り向くと、いかにも魔法使いと言った格好の男性がいた。
「えっと‥‥何処に今回の相手がいるんだい?」
「こちらのセシリアお嬢様です」
「そのお嬢さんが今回賢者認定試験を受けるのか?」
「ええ」
「まだ、10歳にもなっていないように見えるが?」
「ええ。まだ7歳です」
「レイフィーがなった時よりも2つも下だぞ」
「ええ。ですが、実力は十分に高いですよ。手を抜いて負けたとしても、言い訳はなしですよ」
「分かっているよ。じゃあ、お嬢ちゃん、やろうか」
「ええ。セシリアです。よろしくお願いします」
私と相手の男性はお互いに挨拶をすると、向かい合って会場に立った。
「セシリアとグレイの試合を行う。準備はいい?」
「大丈夫です」「大丈夫だ」
「それじゃあ、はじめ」
レイフィーさんの気の抜けた合図で試合が始まった
「俺も負けるわけにはいかないからな。最初から本気でいかせてもらう
“風よ、敵を斬り裂け”〈風斬〉」
「“水よ、包み込め”〈水縛〉」
「“風よ、爆ぜろ”〈風爆〉」
「“火よ”〈火種〉」
「チッ。自爆覚悟か?危ないことをするなぁ」
風爆を途中で中断し、私のファイヤを避けた。つまり、彼の属性は水、火は無い。土を持っている可能性もあるが、今の感じからするとかなり低いと思う。そうなると、単一属性か、闇か光、もしくはユニーク。
まあ、何にせよこちらから攻めましょう。
「“水よ、敵を閉じ込める檻とかせ”〈水牢〉
“水よ、冷え固まれ”〈氷化〉」
冰ノ大地を使ってもよかったが、それを使って倒しきれなかった場合、その後の魔力のやりくりが大変になる。
だから、多少もろくなるのは我慢して、水牢を氷にする手段を使った。
「“炎よ、敵の身を燃やせ”〈炎極〉」
氷を解かさないように使うのは少し大変なのだが、氷の表面を少しばかしの水でおおればかなりそれに近いことができる。
そこからは緻密な魔力操作が必要だ。
「甘いな“風よ、火を遮る盾となれ”〈風盾〉」
「甘い、でしょうか?先程まで確実とは言い切れなかった、土、光、闇属性の使用は確実になくなりましたよ。光属性。この可能性はありませんね。最悪の場合、常時回復をかければいいのですから。闇属性もありませんね。闇魔法の特徴は魔法の断絶にあります。局地的とは言え、水牢を消してそこから逃げ出すことぐらいはできたはずです。土は言わずもがな。また、ユニークの可能性ですが‥‥まあ、こちら持っていたとしても攻撃、または防御として利用できるものではないようです」
「そこまで今の一瞬で理解するのか」
「いいえ。スタート直後のあなたの風爆、その後の私の火種で火と水の可能性はなくなりました。そして、土は使えたとしてもレベルが低いことは分かりました。その上で今の私の魔法。回避、または破壊しようとすれば、多少評価は改めるつもりでしたが、まあ、特にそう言った事もなく、おおよそ予測の範囲内でした」
「そこまで戦闘中に頭を回していたか。ちょっと、甘く見ていたのかもしれないな。まあ、俺が単一属性なのがバレたからと言って、何か困る訳でもない。行くぞ!
“吹き荒れる風の精よ、我が命に従い荒れ狂う嵐を呼び起こしたまえ”〈嵐極〉
これでここから逃げることは出来ないぞ」
「そうでしょうか?
“万物を癒す聖なる光よ、我が願いに応じ死せし大地を甦らせ、草木の息吹を芽吹かせたまえ”〈自然甦生〉」
その魔法によって、嵐は消え去った。実際の所、嵐は自然に対する害であろう。で、あるからして、自然災害は自然を甦生した時にどうなるか?災害を起こしたという結果を残し、自然甦生によって全てをもとに戻されたうえで消える。
「なん、だと?“吹き荒れる風の精よ、我が願いに応じ我が敵を吹き飛ばせ”〈嵐砲〉!」
「“大地に眠る水よ、我が前に建ちあがり、我を守る盾となれ”〈氷盾〉
“炎よ、千の弾丸となりて敵を討て”〈炎弾〉
まだやりますか?」
「‥‥いや、俺の負けだ」
「勝者、セシリア」
なんとか勝つことができましたね。相性が良かったことも大きいです。
私の場合単一属性が相手の場合、その場で対処を考える事がかなり簡単です。とは言え、やはり賢者の称号を得るだけあります。かなり強かったですね。私が先に冰ノ大地を使っていたら、負けていた可能性もありますね。
「じゃあ、お嬢ちゃん勝った相手からアドバイスをもらうのは嫌かも知れないが、賢者の先輩としてのアドバイスだ。次に賢者試験を受けるやつが出る前に、順位を上げておくことをお勧めするよ。じゃあ、これはお嬢ちゃんに渡しておく」
グレイさんから一つのカードを渡されました。
「これは魔道具で、その賢者の現在順位を示すものだ。魔力を通してみろ。順位が出るだろ。もし、ギルドを通さずに試合をするときは、それを対戦相手のカードと重ねると、試合をしたということがギルドに伝わる。まあ、後細かいところは先生に聞いておけ」
「はい。ご親切にどうもありがとうございました。今後とも、よろしくお願いします」
私達はグレイさんとレイフィーさんと別れた後、宿へと戻り夕食を取った後ゆっくりと休んだ。
翌日、両親へお土産などを買い、ゆっくりと王都を回った後領地へ向かって帰っていった。
~その頃とある伯爵家では
「半年もあって、いまだに初級魔法を数個使うのがやっとだと!ふざけているのか!侯爵家のご令嬢は既に賢者へと至ったそうだ。同年齢だぞ。優秀な魔法使いを代々輩出しているラーモス家の者として、いまだに初級魔法しか使えないのが恥ずかしいとは思わないのか!?」
父親に対し、言い訳を述べていたが、その事ごとくを無視された。彼女の良い訳には嘘ばかりであり、執事から報告を受けていた父親にはそのことが分かっていたので、逆に火に油を注ぐ結果となってしまったのだ。
「もうお前には愛想をつかしたが、いくら勘当したところでお前には生きていく手段がないだろう。そこで最後のチャンスだ。お前には来年から初等部に通ってもらう事にする。それまでに上級魔法を使えるようにしておけ。それが出来なければ、初等部卒業と共に勘当とする」
それから一年の間、彼女は死に物狂いで訓練を続け、父親が領地に戻る一週間ほど前にようやく上級魔法を使えるようになった。
しかし、使えるのは土属性で、その中でも最も簡単な魔法だけ。しかも1発撃つだけで魔力切れを起こすレベルであったが、父親は初等部の卒業までに超級魔法を使えるようになるか、所持属性全てを上級属性にすることを条件として勘当を延期したのであった。
「何で、未来の聖女の私がこんな目に合わなければならないのよ!?」
その夜彼女は騒ぎ続けたが、家の使用人たちからはいつもの奇怪な音が聞こえる、程度にしか気にされなくなっていた。
最後までお読みいただき有難うございました
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