講師の先生がいらっしゃいました
皆さんおはようございます
昨日はようやく晴れたと思ったら、突然の猛暑日
電車で遠出していた私には、地獄のような移動となりました
改めまして、昨日は投稿を忘れてしまい、大変申し訳ございませんでした
と、言う事で本日はもう一話投稿することとします
投稿する時間は12時です
そちらも見ていただけると有難いです
また、「高校中退から始まる探索者生活」↓こちらもよろしくお願いします
https://ncode.syosetu.com/n9305hb/
では、『講師の先生がいらっしゃいました』です
お楽しみください
「シア~。今日も可愛いなぁ」
毎朝お決まりになりつつある、父であるアンクロードの頬ずりによって一日が始まった。
今週中は怪我明けで心配だったからでも通せるが、来週からは絶対に朝は入ってこれないようにしてもらおう。
「おはようございます、お父様。今日もお元気そうで何よりです」
「ああ、シアは優しいなぁ~」
「お母様もおはようございます」
「シア、おはよう。ところで、それ持って行っても大丈夫かしら?」
「ええ。どうぞ」
「ありがとう。クロード、行くわよ」
「ああ!シア、助けてくれ!」
手を伸ばして懇願してきたが、毎朝頬ずりをしてくる仕返しだ。
どうせ、私やお母様に対して強気に出られることなんてないのだから‥‥あ、夜はどうなのかしら?両親の情事なんて全く気にならないのだけど。
「お嬢様。お食事の準備は終えてありますので、お着替えになられましたら、ダイニングへお越しください」
「ええ、分かったわ。キリアもいつもありがとね」
「もったいないお言葉です」
初めての魔力操作から一週間が過ぎた。この一週間で出来るようになったことと言えば、生活魔法と簡単な読み書き位だ。
読み書きが出来ないことをキリアに伝えたら、午前中は勉強の時間も追加された。貴族としてはこの年で読み書きができないのは問題だったのかもしれない。
着替えを終えた私はダイニングへと向かった。
この屋敷は二階建てになっていて、一階は執務室や客室など来賓に対応したり、お父様が仕事をする際に使うことになっているようだ。
二階には私達家族の部屋に、キリアや執事長などの部屋と、キッチン。そしてダイニングが存在している。
現代日本のように科学技術が発展しているわけでは無いので、皆で寛ぐためのリビングのような場所は存在しない。寛ぐときは大抵ダイニングでお話をするくらいだ。
「お父様、お母様、お待たせしました」
「いいのよ。ちょっとしか待っていないのだから、誤差の範囲内よ。それに遅れたのだって、元を返せばクロードのせいなのだから」
「それは違うだろ!私はシアを可愛がっていただけで、邪魔はしていなかったぞ」
「それが邪魔だったのよ。まだ小さいとはいえシアは立派な淑女よ。着替えを家族とは言え、男の前で見せられるわけないじゃない」
「そ、それはそうかも知れないが」
「じゃあ、この話はもうお終いね。シア、座りなさい。お食事にしましょう。料理が冷めてしまうわ」
「大丈夫よ、お母様。だって、パンの料理は冷めてもおいしいのよ」
「それもそうね。じゃあ、もっとおいしいうちに食べてしまいましょう。クロード」
「ああ、分かってる。神に祈りを」
手を合わせ神にお祈りする。別に家の両親が信心深い訳では無い。この世界の風習として食事前には家で最も偉い人が『神に祈りを』と言い、周りはそれに合わせて手を合わせるだけだ。
そこまで深い意味がある訳ではない。日本の『いただきます』が農家や食材に対してではなく神に対してになっただけだ。
「じゃあ、食べようか」
10秒ほど祈ったところでそれは終わり、食事が始まった。
そう言えば、この家にいる使用人の内、重要な役職にいる人たちを紹介しよう。
まずは侍女長であるキリア。彼女はこの侯爵邸の中でも2位、3位を争うほどの権力者だ。1位はもちろんお母様ですよ。2位を争っているのは私と執事長とキリアの3人ですね。
続いて執事長であるメイギス。彼はとても優秀で、執事の仕事をこなしながらお父様の秘書兼護衛をこなしている。
そして料理長のパン。とても料理が上手で、その内私も料理を教わりたいと思っている。
最後に庭師のクルト。彼の作る庭はとても綺麗で、見ていて全然飽きない。お母様と時折彼の整えたガゼボで食事をしていると、スッキリとした気持ちになるのだから不思議だ。
この四人がこの屋敷で、重要な立場と言うかいなければいけない四人である。
「神に感謝を」
私が最後に食べ終え、朝食の時間は終わった。
「そうだ、シア。明日から講師の先生が来てくださるから、粗相の無いようにな」
「分かりました」
「どのくらい魔法を使えるようになったのかしら?」
「生活魔法を少々。この一週間は魔法を覚える事では無く、基本的な魔力操作をお教えしました」
私達の後ろに控えていたキリアが説明してくれた。
「生活魔法は使えるようになったのね。明日からは初級魔法を教わっても大丈夫なようね」
「はい!魔法のお勉強、楽しみです!」
「そうかそうか。講師の先生はクライスビル大学の卒業生だそうだ。何でも世界中を見て回りたいから、冒険者になったとか」
「ああ、彼ですか」
「そう言えばキリアが卒業した年も、彼と同じ年だったわね。まあ、あなたは侍女課だったはずだから、あまり関わりは無かったと思うのだけど‥‥その様子だと、接点もあったのかしら?」
「少しですが。同じ学年でしたので、侍女課の課題で時折」
「そうだったのね。まあ、優秀なのは間違いの無い様だから、沢山教えて貰いなさい。取り敢えずは一年ほど習いなさい。その後のことはまた後で考えましょう」
「はい!沢山魔法を教えていただきます!」
一晩が過ぎた。
昨日はいつも通り勉強をして、魔法の訓練をして一日が過ぎた。
「さあ、講師の先生をお迎えに行きましょう」
「はい!」
朝食を食べ終え、お昼前。ついに講師の先生が到着したようです。
見た目は10代後半から20代前半だが、キリアとそう変わらない年齢の様だから、20代半ば…コホン。何でもありません。決してキリアの目が怖かったわけでは無いですよ。
おっとりとした目付き。(地球の)海のように透き通った青色の髪。宝石のように輝いて見える黄色の瞳。身長は…180手前くらいかな?お父様よりも少し低いくらいだ。
どこか見覚えがある気もするが、きっと気のせいだろう。
「いらっしゃい。こちらがあなたに魔法を教えるように頼んでいたセシリアよ。こう見えてもかなり魔力の制御能力は高い様なのよ。生活魔法は使える様だから、初級魔法から教えて貰えるかしら?」
「分かりました。セシリア様ですね。私は、レイヴン・シリオス・ルービルです。魔法使いとしての階級は魔法士です。よろしくお願いします」
「(魔法使いの階級って何だろう?)キリア、階級って?」
「魔法使いの実力を測る値の一つです。階級は魔術師、魔導士、魔法士、賢者の四段階となっています」
「ありがとう。レイビン様、本日はお越しいただき有難うございました。私はアンクロードとレイネの娘、セシリア・レイン・アンクラジーネ・クロケットと申します。これから一年間、どうかよろしくお願いします」
付け焼刃の礼儀作法ではあるが、大きな問題は無かったと思う。
「ご丁寧にありがとうございます。奥様、魔法の訓練は本日からでよろしかったでしょうか?」
「ええ。今日の午後からよろしくお願いします。では、中に入ってください。一緒にお食事にしましょう。長旅、疲れたでしょう」
「ありがとうございます」
先生を連れてダイニングへと向かった。一回にある来賓をむかえる部屋でも良かったが、しばらく先生はこの家に泊まるので、二階で一緒に食べることにした。
「レイヴン君、久しぶりだね。卒業パーティーの時以来かな。1年間、娘をよろしく頼むよ」
「お久しぶりです、クロケット卿。娘さんを立派な魔法使いにしてみせます」
「ああ。挨拶も済んだところで、そろそろ食事にしよう。皆、席に着きたまえ」
それぞれの席に座っていった。先生の座る席は私の隣の席だ。
お母様が私の前に座っていて、お父様がお母様の隣に座っているので、空いている席は私の隣だけだったので必然的にこの並びとなった。
「それでは、神に祈りを」
祈りを終えると私達は食事を始めた。
30分ほどで私が食べ終わり、昼食は終わりとなった。
「それではお嬢様。まずは、魔力量と魔力操作の制度を確認させていただきたいと思います。では、まず魔力量からいきましょうか。こちらの水晶に手を置いてください。こちらは先日キリアさんが使ったものとは違い、大人用のものですので先日の色よりは低いものとなると思います。お嬢様の事前の結果から考えますと、緑色から青色だと思います」
「分かりました」
手を置き魔力を通していく。前回は何かが体から抜けていくような感覚だったが、魔力操作を覚えた今であれば、その吸い取られる感覚もなく魔力を自分から通すことができる。
前回よりも少ない魔力で、より効率的に魔力を通せていると思う。
黄色、緑、青、紫‥‥に変わり、そこで色の変化は止まった。
「驚きましたね。まさか紫にまで到達していたとは。この一週間の間、随分と練習に励んだのですね。そして、その魔力操作の技術は凄かったですよ。この魔水晶と呼ばれる魔力を測るための“魔道具”は、魔力を通し難い事でも有名です。この魔水晶にあそこまで漏れなく魔力を通せていたのですから、魔力操作はかなり得意だったようですね」
「(なんだか申し訳ないな…血液の流れを意識して、それを掌から糸状に出すイメージとでも言えばいいのかな?何となくそんな感じのイメージで、魔力を放出しながら空気中から魔力を吸収する訓練を、3日ほど前にやった事が今回の役に立っただけなのに)」
なお、その時の訓練はその日をもって終了した。空気中からの魔力の吸収は、物凄く効率が悪かったためである。
「どのような訓練をしていたのか気になるところではありますが、基礎の部分は見えてきましたし、次は生活魔法を見せていただきましょう。火から使ってもらえますか」
「分かりました。“火よ、我が指先に灯れ”〈着火〉」
この程度の詠唱であれば、全く恥ずかしがらずに使えるが、あまりに長いと恥ずかし過ぎて無理だ。
“着火”は火を灯す魔法だ。今回は無駄に魔力を使わないためにも、最小の大きさで真っ青を通し越して、白になってきているものを灯した。
「では次は水をお願いします」
「“水よ、流れよ”〈水流〉」
今使ったのは水を出す魔法。決してせき止められている水を流せるようにするような魔法ではない。
私のイメージは空気中の酸素と水素が結びつくイメージだ。
「では光をお願いします」
「“光よ、周囲を照らす灯りとなれ”〈光玉〉」
太陽を縮小して熱さを失くし、もろもろの紫外線やらの人体に多少なりとも害のあるものを省いた、つまりはただの光の玉だ。
「ふむ。お嬢様の現在の実力は分かりました。先程も見て思った通り、魔力操作に関しては下手な大人よりも優れていますね。必要最低限の魔力で魔法を使っている部分にも好感が持てます。では、初級魔法の実演をしますので、マネしてください。では、火からいきますね
“火よ、敵を穿つ炎となりて、我が敵を討て”〈火弾〉
多少改変していますが、効率は悪くないと思いますよ」
「(こんな感じかな?)“火よ、敵を貫く炎の弾丸となれ”〈火銃〉
どうですか?先生」
後ろを振り向くと、先生が驚いた表情をしていた。
先生の放った魔法は岩に当たって消えた。(勿論、手加減はしていたと思う)
私の放った魔法は、岩を貫いた。回転もかけていたので、貫通力が高くなっていたのは確かだろう。
「いきなり改良をしましたか。まさか、ここまで魔法を上手に使えるとは思っていませんでしたね。では、水を使って見せますね
“水よ、我に従い敵を斬れ”〈水斬剣〉
どうぞ」
「“水よ、敵を斬れ”〈水断剣〉」
あ、イメージを間違えちゃった。まあ、いいか。
水で鉄剣の形を作ろうとしたら、間違えて高周波ブレードを想像してしまった。
振動によって、切れ味がかなり変わってしまっている。
「驚きましたね。では次は、光魔法ですが私は使えません。ですので、詠唱だけお教えします
“光よ、我が身を癒せ”〈治癒〉です」
「“光よ、癒せ”〈治療〉」
「本当にお嬢様は優秀なお方ですね。明日は今日の続きといきましょうか」
「はい!」
初級魔法をいくつか使えるようになり、今日の訓練は終わった。
■■■■■
~とある伯爵家では
「さあ、お嬢様。今日こそは魔法の訓練を受けていただきますぞ」
「いやよ。何であんたから魔法を教わらないといけないの?」
相手がいくら使用人とは言え、ここまで見下す発言をする貴族も少ない。
それに加え、伯爵家の現当主は領民思いな事でも有名で、使用人相手にこのように当たるようなことなどありえない。
「では、旦那様にお伝えさせていただきますね」
「チッ‥‥分かったわよ。明日だけね」
その翌日は屋敷を抜け出し、また使用人を困らせ今度こそ父親を呼ばれてしまう事になったのが、それはまた別の話。
最後までお読みいただき有難うございました
ゲームでの裏設定
セシリアさんが行っていたことは、決して断罪されるような行動ではありませんでした
一応規則として、階級に囚われないとありますが、それは平民と貴族の話であって、貴族内での階級の事ではありません
そうでもなければ、平民は貴族を見るたびにびくびくしている必要があったので、このような規則が作られたとされています
規則が作られたのが、学園の作られた当初だったこともあり、意外と忘れ去られている設定となっていた規則です
意外と気付いていない人の方が多いとは思いますが、王子様が王太子として水都へ追放しているという事もあり、王子様はこのことを知っていたという設定です
作品をもっと読みたい、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークならびに評価の方よろしくお願いします