八話 クローゼット
「レオン様、起きてください」
「リュード・・・・もうそんな時間か?」
「はい」
幼馴染であり、俺の側近であるリュードはいつも俺より遅く寝るくせに、俺より早く起きている。
「はぁー、今日はナーシャと遊ばないといけないし・・・いつもの仕事にアスカが持ってくる仕事も・・・・どうにかならないか?」
「あのカリアに仕事をさせてはいかがですか?」
「もうカリアは十分仕事をしてくれてるだろ」
カーテンを開けて空を見上げると雲一つない空に時々鳥が飛んでいる。
こんな日は外で駆け回りたいのに・・・・・今日は1日部屋の中だろう。
「ナーシャ様を言い訳に外に行くのはいかがですか?」
「ナーシャは外にはいかないだろ」
いつもなら喜んでナーシャの相手をするが今はそういう気にはなれない。
ため息をつきながら着替えようとクローゼットを開けると・・・・・・
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「メルシアさん。本ってどこにあるかわかりますか?」
レオンの部屋に行く途中ふと思い聞いてみた。
「この城には大図書館がありますが・・・・アスカ様は利用が難しいと思います。レオン殿下に借りられてはいかがですか?」
「たくさんありそうですか?」
「レオン殿下は真面目な方ですから、本でたくさん勉強されたと・・・・自室に本棚だけの部屋もあるとか・・・」
「まぁ・・・・無かったらレオンに大図書館から借りて来てもらいましょう」
「そういえば・・・・・アスカ様はもうこの国の字を読めるようになったのですか?」
「・・・・・まだです」
昨日少し勉強はしたけれど全くわからなかった。
あれは字ではない。複雑な記号に近い気がする。それでそもそも字の見分けがつかなかった。
「見分け方を教えてください」
「はい。勉強していけばわかるようになりますよ」
どうかなー? と思っているとどこからか・・・・
「「わわぁぁぁぁぁーーーー!」」
とどこかで聞いたことのある声が聞こえてきた。
「今日も何かしているのでしょうか?」
「そうかもしれませんね」
「朝から元気ですよね。あんなに声が出るなんて・・・・・」
「そうですね」
いつものようにレオンの部屋に勝手に入ると・・・・・
「本当にすみませんでした!」
「以後気をつけます」
なぜか床に正座して謝っているレオンとリュードさん。・・・・・なんで? レオンなんか着替えようとしてそのまま・・・みたいな格好をしている。
そして、その二人の前には・・・・・・・
『我を踏みつけた挙句・・・朝まで放置するとはどういうことだ!』
赤いトカゲのようなものが飛んでいて・・・・・
『アスカ! お前もだ! また袋に詰め込んで閉じ込めて!』
正直存在をすっかり忘れていたピキがそこにいた。まあ・・・・・・ちゃんと元気なまま発見されたからよかったかな?
でもそんなことを言うわけにはいかない。余計怒らせるだけだ。
「ごめんなさい。色々事情があったのです。それで仕方がなくて・・・」
「そうだ。ピキ、昨日は・・・・踏んだのは悪かったと思ってる・・・けど・・・」
ピキの存在を忘れていたのは皆同じだろう。
『ピキではない! アルフレッドと呼べ!」
「ピキです!」
『その呼び方はやめろ!』
「おはようございまー・・・みなさんどうしたんですか?」
カリアさんがやってきて・・・・
「・・・・うん。早く仕事・・・の前に朝食を、リュードよろしく」
「私は次の案を考えておきますね」
「アスカ様、字の練習も必要ですよ」
「はい・・・・」
「あ、リュード。ピキにも何か食べるもの持ってきてやってくれ」
「はい、虫か何かでいいでしょうか?」
「いいんじゃないか?」
『虫なんか食べるか!』
「だってトカゲでは無かったのですか?」
またリュードさんのドSが始まり・・・・・・
世界を変えることになる運命の日が始まった
読んでいただきありがとうございます。
今回は短くなってしまいました。次は長くなる予定なのでここで切ることにしました。
ピキが忘れられているのは気づきましたか?
次話も読んでいただけると嬉しいです。