七話 演技
「おかえりなさいませ。リュード様!」
「気持ち悪い。それはやめろ!」
おー。リュードさんが敬語ではなくなった。
「なんでですかー」
水色の髪の美少女はわざとらしく目をパチパチさせながらリュードさんによっていく。
とても可愛らしい外見なのに何か違和感が・・・気のせいかな?
「カリア、それくらいにしとけ」
カリアさんって言うんだ。
「えー、いいじゃないですかー。レオン様」
「遊ぶならあとで好きにして良いから。後ろでアスカが困ってるだろ」
「あ、誰ですか? 初めまして。レオン様の側近、カリア・ルーラです」
女の子の側近もいるんだ。
「初めまして。アスカです」
「その袋の中は?」
「あ・・・これは・・・・」
見つからないようにピキを入れてきた袋だった。
どうしようか。見せていい人なのかな?
「出していいよ」
「わかりました」
袋の口を開けると自分でパタパタと飛んで出てきた。
「おぉぉー! これはドラゴンですか? 本物ですか?」
突然メルシアさんが目を輝かせてピキによって来た。これが本当のメルシアさん?
『そうだ。我はレッドドラゴンのアルフレ・・・』
「ピキって言う名前をつけたの。一応私のペットで・・・」
「今度ぜひピキを貸していただけませんか?」
「いいですけど・・・・」
「ありがとうございます」
なにをするのだろうか? まあ、使い道は色々あるし・・・・働いてもらおう。
「ピキ、誰か来たら困るからできるだけ奥の部屋に居るように。もしここにいた時に誰か入って来た時は・・・」
レオンはここに置いてある仕事机のところまで行って・・・・
「この下に隠れて・・・」
「レッオンー。遊びに来たよー」
後ろから声が聞こえて振り返るといつのまにか少しくるっとした金髪にレオンと同じような碧眼、そしてレオンの王子服に似たものを着ている青年が立っていた。背が高くて綺麗な顔をした人だけどどこかふわふわしていてフニャッとした雰囲気がある。
だれかに似てるような・・・・・
「! ・・・・・いきなりなんですか? お兄様」
レオンのお兄さん? 顔は似ているかもしれないけれど他は似ていない。
そういえばお兄さんの腕にはまだ5歳くらいのクルクルした長い金髪を横だけ左右リボンで結んでいて、こちらもレオンと同じ碧眼の女の子がいる。肌が白くて目が大きい、まつ毛も長い。お人形みたいだ。この子はだれ?
「今、遊びに来たって言ったじゃないか」
「そうですか。すみません、今忙しくて・・・・」
そういえばピキは? 部屋を見渡してもどこにもいない。どこにいった?
「・・・・アスカ、ちょっと・・・」
レオンに呼ばれなんだろうとそちらに行くと・・・・
「どうにかしておいてほしい。これ」
まわりに聞こえないくらいの声で言われそこを見れば・・・・
「わかりました」
「そこの右の部屋に入れておいてほしい。そこにクローゼットがあるからその中に」
「はい」
そこにはレオンに踏まれたピキがいた。
レオンはお兄さんが来たことにすぐに反応してピキを隠したのだろう。すごい。
『アスカー、レオンが・・』
「おとなしくしておいてくださいね」
しゃがんでピキをつかみここまでピキを入れてきた袋に押し込んだ。暴れるから城まで帰ってくる道中見つけた弱点をつかんでおとなしくさせた。
「どうした。なにかあったのか?」
「いえ、何も・・・」
「・・・・虫がいただけです」
「ずいぶん大きな虫がいるのだな」
ピキサイズの虫なんているわけない。いたら困る。それともこの世界にはいるのかな?
急いでレオンに言われた部屋に入った。
「ここって・・・・寝室?」
ベットとソファー、あの部屋と違って飾りっ気のないものばかりだ。本当はこういう趣味なのかな?
かってにクローゼットを開けるのは悪い気がするけれどレオンが言ったことだしいいか。
「ピキ。ここから出てこないでください」
『なんで我がこんなとこに』
「いいからそこに、わかりましたね」
なにかまだ言いたそうにしていたけれど無視して戸を閉めた。
次はあのお兄さんだ。どうしようか・・・・。
「君がレオンが連れてきたって言う子?」
部屋から出てすぐにからまれた。もうソファーに座っているし居座る気満々だ。
「・・・・その・・・」
「リュード、兄様に言ったのか?」
「はい」
「それでお兄様は見に来たと・・・」
「レオンは女の子とか興味なさそうにしてたからめずらしいなーと思って、・・・・兄としてはどんな子か
気になるでしょ」
連れて来たってそういう恋愛的な意味だったんだ。どうしよう。
「そうですか。・・・・って違いますからね。アスカはそういうのではなくて・・・・その・・・・なんか・・・」
そういうことにしておけばいいのに。そしたらすぐ帰ってくれる可能性もある。
それに計画を隠すためには・・・・
「そうなのですよ。レオン殿下にお声をかけていただきまして・・・」
殿下でいいのかな? メルシアさんはこう呼んでいるし・・多分こっちの方が様よりいい気がする。
「!・・・アスカ・・・なんで・・」
「やっぱりそうなんだ。恥ずかしがらなくてもいいのに。あ、どうぞ座ってください」
「ありがとうございます。ですが・・・私などが・・・同席するわけにはいきませんので・・・」
お兄さんもこの小さな子も王族だろう。そうでなくてもかなり偉い方。
「気にしなくていいから」
「では・・・・・失礼します」
ここまで言われては断るわけにもいかないので同じようにソファーに座った。
「色々聞かせて欲しいなー」
「どうしてナーシャ連れてくるのですか?」
この子ナーシャって言うのかな? 一体どの立場の子なんだろう。
「行きたいって言ったからだよ。なあ」
「はい。お兄様」
! ・・・・まさか兄弟だとは・・・・歳が離れているしそこ可能性は考えていなかった。
お兄さんは20代になっているようには見えるし、お兄さんの娘と言われても納得できるのに・・・
「ナーシャ、レオンに遊んで欲しいんだって」
「兄様が相手すればいいのに・・・」
「かわいい妹のお願いを無視するのか? それにどうせ暇だろ」
「私をなんだと思っているのですか? お兄様も暇でしょう」
「今日は10枚も書類仕事をしたんだ」
そんな風に自慢げに言われても少なすぎます。レオンは山のような書類を一日に3山も片付けているのだから・・・
「そうですか。・・・ナーシャ、兄様は今から食事なんだけど・・・もう夜だし・・・・明日でいいかな?」
「はい」
「よかったな。ナーシャ」
お人形みたいな可愛らしい子だ。
「お兄様、早く・・・・・奥方のところにでも行ったらいかがですか?」
「それで、レオンとの出会いは?」
出ていく気は無いらしい。綺麗にレオンの話を無かったことにしている。
「大したお話ではありませんよ」
「それでいいから」
どうしよう。常識がないから普通な出会いがわからない。
「街で会ったんだ」
ありがとうレオン! それに上手く繋げる話は・・・・
「私が街で迷子になっているところをたまたま助けていただいたのがレオン殿下でした。その時はまさか・・・王子様だとは思わなくて・・・」
「あー、なるほど・・・それで?」
恋愛なんてしたことないのにどう話を作ろうか? 世の中にはそういう漫画や小説もあるらしいが読んだことはないし・・・もちろんその手のアニメやドラマも見たことはない。
どうしよう・・・あっ!
「この続きは・・・・・その・・・・・お話しするのは・・・・恥ずかしい・・・・内容なのですが・・・」
「あー、そうなったのか。そうか・・・」
お兄さんは面白そうに勝手に納得している。
これでこの話は終わった。あとは追い出さないと・・
「兄様、満足しましたか?」
「で、レオンその続きは? あとででいいから教えてくれない?」
終わらなかった・・・
「アスカと今から二人の時間をゆっくり過ごそうかと思っていたのですが・・・」
レオンが近づいてきて私の髪を触りながら言った。
いきなりなにを! と恋愛を全く知らない私は思ってしまい・・・
どういうことですか?という意味をこめてレオンを見つめてみた。もちろん表面は笑顔で。
するとレオンはかなりくっついて来て顔を耳のあたりに持ってきて・・・
「恋人っぽく演技して! いい感じに密着して見つめ合っておけばそれっぽく見えるはずだ」
そういうことか・・・
「二人の世界を作れば流石に帰るはずだから」
まずすることは・・・いい感じに密着する。
ちょっとレオンに寄りかかって・・・・これでいいのかな?
「アスカ。とても可愛いよ」
次は見つめ合う。
「そんな・・・・レオン殿下だって・・・・・」
「何かな?」
「・・・・・その・・・・」
なんて言えばいいの? かっこいいでいいのかな?
「アスカ・・・・」
「レオン殿下・・・」
早く帰って!
「ナーシャ、帰ろうか。ナーシャにはまだ早い」
「?」
「ほら、お父様とお母様のところに行こう。レオンは明日遊んでくれるんだから」
「はーい」
「うん。ナーシャは良い子だな」
「・・・レオン兄様・・・」
「邪魔してはいけないよ。じゃあ、リュードくん・・・また面白い話聞かせてね」
「はい」
「じゃあ」
そして扉が完全に閉まって・・・
「はぁー・・・・疲れた」
「これでよかったのでしょうか?」
「結構よかったと思うけど・・・いきなり・・・ごめん」
「?」
「その・・・近づいて・・・髪触ったり・・・嫌だったかなーと思って・・・」
「理由もなく・・というのは嫌ですが・・・今回は理由もありますし・・・レオンは少し密着して髪に触れたくらいしかしていませんから」
「良いんだ・・・」
意外そうに言っている。どうして?
「他にでで行っていただく方法はなかったので・・・これくらい良いですよ」
「・・・・・もう少し嫌がった方がいいと思う」
「なんでですか?」
「・・・・なんとなく」
わからない
「演技上手かったですね。本当の恋人同士に見えましたよ。レオン様」
「ならよかった」
「それとも本当に・・・」
「そうだったら演技に困ってないよ」
「・・・・恋愛って難しいですね」
「アスカ・・・・経験ない?」
「ありませんよ。どうせ結婚相手など勝手に決められるものと思っていましたから・・・・レオンはあるのですか?」
「ない。・・・よくわからないから」
その気持ちはよくわかる
「それでも演技は上手でしたよ」
「・・・・恋愛小説なら読んだことはある」
「私はそれもありません。・・・・・少し勉強したほうがいいかもしれないですね」
「どうして?」
「またこういうことがあるかもしれません」
「・・・・もうやだ」
そんなの私だって同じだ。
「・・・早く食事の用意を・・」
「私ももう限界なので部屋に戻ります」
今日はいつもよりたくさん食べれる気がする。
「ここで食べていけば? うん。もうみんな一緒でいいから」
やったー!
「ですが・・・・」
「いつもリュードと二人で食べてるし・・・いいよ」
「では準備しますね」
「五人分でいいですか」
「あぁ」
この時あることに誰も気づかずそのまま・・・・・
夜が過ぎた
読んでいただきありがとうございます。
おかげさまで始めて一ヶ月で30ポイントになりました。
ポイントが増えるということは見てくださる方が少しずつ増えているということなのでとても嬉しいです。
今回はレオンの兄弟が登場しました。どんな風になっていくでしょうか?
次話も読んでいただけると嬉しいです