一話 出会い
桜の舞う4月、私は新しい制服を着て入学する高校へと続く道を歩いていた。
学校の入り口には入学式の看板がありその門をくぐる同級生であろう子たちは不安そうだったり嬉しそうだったりとさまざまな表情をしている。
そんな様子の校門を私は・・・
素通りした。
そんな時ふわっと強い風が吹いておろしたままの長い髪が乱れ、桜が散る。
思わず目を瞑り、風がやんだところで目を開けると・・・
私は森の中にいた
ここはどこだろうか?
さっきまで街の中にいたのにどうなっているんだろうか。
でもまあ、家から離れられたのは確かだろう。
ならここがどこであっても良い。
今日の目標は達成されたも同然だ。
これから街を探そうか? それとも安全な場所でも探そうか?
よし! 良い場所を見つけつつ街を探そう。それならもし街が見つからなくても大丈夫だろう。
ちゃんと数日分の食料は持ってきている。問題は・・・
どっちの方向に行こうか?
こういう時は勘で・・・向こうかな?
決めた方向へ進んでいく。制服姿だから少し歩きにくい。着替えは持ってきているけれど靴の替えは
持ってきていない。持ってくればよかった。
荷物が重い。普段の運動不足のせいですぐに疲れる。
「はぁー・・・あっ!」
木の根っこにつまずいて転んでしまった。痛い。
するとどこからか落ち葉を踏む足音が聞こえてきた。その音はどんどん近づいてくる。
これはチャンスだ。街の場所を教えてもらおう!
「あの!」
何かがキラッと光り気づけば目の前にするどいものがあった。その先端は私に触れるか触れないかの
ところで止まっている。
私の前には剣を私に突きつける金髪に碧眼の大人っぽいけれどまだ幼さの残る顔の男子が立ってい
た。背は低くなく高くなく平均くらい。かなり美形だろう。歳は私とあまり変わらなそうだ。外国人?
「なんだ。人か」
日本語だ。顔立ちは日本人ぽいからハーフとかかな?
「街の場所を教えていただけませんか?」
「?」
「お願いします」
「迷子か?・・・向こうへ行けばありますよ」
その人が指を指した方向は進んでいた方向だった。よかった。合ってた!
「失礼ですが名を教えていただけませんか?」
その人は明らかな作り笑顔で聞いてきた。
「明日花と申します」
「アスカ・・・聞いたことない・・貴族じゃないのか・・・」
なんかぶつぶつ言っている。よく聞こえない。
「どうしてこんな山奥に?」
「・・・」
なんて答えようか? 自分でもわかってないし・・それにこの人・・・
「あなたはどうしてこんなところへ?」
「狩りをしに来ました」
とりあえず話を逸らそう。
「そうですか。・・あなたのお名前は?」
「レオン」
「レオンさんですか。教えていただきありがとうございました」
もう進もうと立ち上がると足首が痛みよろめいた。
「大丈夫か?」
「これくらい大丈夫ですよ」
街までくらい歩けるだろう。
「なら少し歩いてみろ」
なんか突然口調が変わった。こっちが素なのかな?
「わかりました」
本当は痛いけれどなんとも無いようにして歩いてみせた。
「どうですか?」
「やっぱり街までその足で行くのはやめた方がいい」
「行けます」
「魔物に遭ったらどうする。逃げきれない」
「魔物? 動物ではなく?」
「魔物も知らないのか? どこから来た?」
「・・・」
言ったら見つかってしまうだろう。それか・・・
「この国の者ではないのか?」
この国? それはちゃんと・・
「日本人ですよ」
「? それはどこだ?」
「日本ですよ。あなたもそうでしょう?」
「ここがどこか知っているのか?」
「えっ? 日本ですよね。どこの県かということですか? それはよくわからなくて・・・」
私の住んでたところの近くにこんな感じの山はなかった。
「何を言っている?ここはフライスト王国だ。知らないのか?」
「フライスト?」
そんな国聞き覚えがない。
「どこですか。それは」
「この国だ」
「私はそんなフライスト王国なんて知りません」
「こっちだって日本なんて知らない」
ならいったいここは・・・
「ん? あ・・でも・・・・」
レオンさんは日本を知らなくて私はフライスト王国なんて知らない。ということはとても離れたところに来たんじゃないだろうか? ならあの人たちに見つかる心配もない。
ならここがどこであってもいい。
「この国の事教えていただけませんか?」
「急にどうした?」
「どんな国なのかちゃんと知っていなければやっていけませんから!」
「あ・・・・いいけどさ、色々しないといけないことがあって・・・その後でいいか?」
「はい!」
やった! あとはいい土地を見つけて・・・それから・・・・
「アスカ、顔が・・・・その・・」
「なんですか?」
「一人ごとを呟きつつにやけるのはやめてほしい」
「つい」
「そうか」
「しないといけないことがあるのですよね! 早く終わらせましょう!」
早く色々聞きたい!
「帰るとこあるのか?」
「街に行って宿でも探そうかと」
もしかして日本円使えないかな? 先に稼がないといけない?
「宿にも行けないかもしれません」
「!・・・どうして」
「だって持ってきたお金使えなくなってしまいました」
どうしよう。こんな足では働けない。
「・・・何もない小屋でいいなら近くにあるが・・・・」
「ありがとうございます」
「食べるものはあるのか?」
「はい」
「歩けるか?」
「まあ、大丈夫だと思います」
「こっちだ」
ついていくと・・・小屋ではなくなぜか・・・
「これは?」
「鳥」
「それくらいわかります」
罠にかかった鳥が待っていた。
「羽が綺麗ですね。装飾品にして売れそうです」
「いる?」
「いいのですか?」
「ほしいのは肉だから」
「まさかすることって・・・」
「言っただろう。狩をしに来たと」
「本当だったのですね」
これから仕留めるようなので後ろを向いておく。色々音が聞こえてくるけれど聞こえなかったことに
しよう。
「終わりましたか?」
「あぁ」
すごく仕事が速いらしい。見れば解体まで終わっていて肉と羽になっていた。
「することはこれで終わりですか?」
「でももう帰らないと行けなくて・・・・」
確かにもう日が暮れてきている。
「とりあえず小屋まで案内はしよう」
「はい」
小屋は本当に何もないけれど綺麗で誰か掃除もしているようだった。
「ここは荷物置き場にしてるんだ。肉をいくつも持ったまま山は走り回れないから」
「まだあるんですか?」
「ここにあと3羽分」
売るのかな? 一軒で食べるには多い気がする。
「・・・2・3時間後に来れたらくる。来れなかったら明日、朝からくるよ」
「わかりました」
数時間後
「来たのですね」
「来れればくると言っただろう」
読んでいただきありがとうございます。
はじめましてでしょうか?
これは私の三作目になります。初めて異世界系に挑戦してみました。
明日花がかなり変わっているのは一話目ですがわかるかと思います。これから悪化する予定です。
次話から本格的な異世界革命が始まります。
次話も読んでいただけると嬉しいです。