007.皇太子の妃
───おかしい。
───どう考えても、おかしいわ!!
何故、この人が、この時間に、ここにいるのか。
いや、私の前にいられるのか?
───答えはきっと、1つしかない。
「殿下。また、ご自分のお仕事を
フェリクス様に押し付けましたわね?」
氷点下の声と、これまた氷点下の視線を皇太子にくれてやる。
今、第1皇子の妃カーミリアは、怒りの沸点を越えようとしていた。
ここが城内でなければ、夫に最高ランクの『火』魔術を仕掛けていたかもしれない。
カーミリア・ハーバル(元 サンフラン公爵令嬢)とは、そういう女性だった。
「希代のカリスマ皇子」とすら言われる アルフォンス・ハーバルが、唯1人と心に決め、5年もの月日をかけて やっと手に入れた華である。
因みに。
第1皇子アルフォンス、いや 皇太子は、彼女の怒った顔が大好物だ。
本当にどうかしている。
頭の螺子が2本くらい飛んでいるのかもしれない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ところ変わって ジュリアーノの私室では、こんな会話がなされていた。
「ねぇ、アーロン。私の婚約者選びの件だけど。
皇太子妃…カーミリア様に、相談してみるのはどうかな?」
「カーミリア妃殿下ですか?」
「うん。
カーミリア様に、お茶会を開いていただくのはどうかな?」
「オーキッド様やパンジェリー様は、まだ皇族ではないからですね?」
「そう。
頼りにするのはカーミリア様が妥当じゃないかと思うんだけど。」
「ああ…それは良いかもしれませんね。
お茶会であれば、皇太子様も乱入してくるのを多少は躊躇われるでしょうし。
フェリクス殿下の負担も多少は減るかもしれませんね。」
「では、その方向でお願いできるかな。」
「畏まりました。」
「皇族は、夫婦円満・家内安全が大事だよねぇ。
内の結束がしっかりしていれば、
今の帝国なら外から崩されることは まずないだろうし。
姉様や兄様たちには、幸せになって欲しいな。」
アーロンの退室した私室で独り言ちる、ジュリアーノだった。
ジュリアーノは縁の下の力持ち的な…。