016.回想 ~魔導士学園とは~
時を戻そう…。
5日前まで。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「殿下ももう11歳になられたのですねー。」
「………。アーロンもじゃないか。急にどうしたの?」
先月、ジュリアーノは誕生日の祝いを催した。
皇族なので、一応…。
未来の側近候補で乳兄弟のアーロンも、同じ年である。
「誕生日パーティーの時の殿下のご様子を思い出しまして。
ご立派になられたなぁ…と。」
「うん。だから、アーロンも同じだからね?」
「来年には、魔導士学園へも入学されますし。」
「ああ、そういえば…そうだったね。」
「ええ、私も殿下をしっかりサポートできるように、
一層頑張らなければと思いまして。」
「ああ、うん。…ありがとう。でも、私は第4皇子だからね。
将来、重要な職に就くということもないだろうし。
政略的な婚姻くらいでしか、国の役には立てなさそうだよ?
まぁ、婚約相手が見つかれば………だけどね。」
「殿下!!殿下はもっと誇りを持ってください!
やればできる方なんですから!!」
(えーーー。それって、出来てないからもっと頑張れってこと?)
ジュリアーノはアーロンとのやり取りに少々疲れてきたので、話題を変えることにした。
「ところで、魔導士学園ってどんなところなの?
異母兄様たちはお忙しいそうだから、結局話を聞けなくてね。」
「では、軽くご説明させていただきます。」
暫く、アーロンの話を聞くことになった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
魔導士学園は、帝国内に5箇所あった。
ルード辺境伯領、バージル公爵領、サンフラン公爵領、タイムーン侯爵領、そして帝都である。
帝国の領土は広大な為、分けているのだ。
親元から近い学園であれば無料で学園での教育が受けられる為、基本的には親元から近い学園へ入学する。
空きさえあれば他の学園にも通えるが、帝都への変更だけは少し難しい。理由は様々だが、とにかく貴族家の者が殺到するので席に空きが…ない。
将来を見据えたコネ作りとして帝都を選択する貴族令息は多いし、令嬢も上級貴族は帝都にいかせることがあるらしい。
魔物討伐の実践が多い辺境伯も、親が騎士爵だったり下級貴族家には人気があったりするんだとか。
魔術の資質が非常に高いと評価された平民についてだけは、特待生として帝都の学園へ通うことが義務付けられている。
当然、皇族は帝都に住んでいるので、帝都の学園に通うことになっている。
これが所謂、魔導士学園(本科)と言われるものである。
12歳から入学を認められ、3年の課程を通して一般的な知識と魔力の扱い、魔術の使い方などを学んでいく。その間、生徒は学園併設の寮住まいとなる。
本科で優秀な成績を残すと、帝都にだけある専科へ進むことも許される。
しかし、平民から専科へ進む者は殆どいない。
それは平民の持つ魔力量や魔術属性の数がそれほど多くないからなのだけど、稀に進学を許される程の資質に恵まれた者も生まれる。
そう、ほんっっっとうに稀であるが。
そして、その稀なケースが現れたらしい。
2年前に魔導士学園(本科)に入学を果たした平民上がりの天才は、『無』以外の6属性を操るのだとか。
「かなりの変わり者らしいですねー。まぁ、殿下が入学される頃には、専科に進学しているかと…。」
「でも、学園にはいるんだね?何だか楽しみだねー。」
キラキラと目を輝かせ始めたジュリアーノを見て、アーロンは溜め息をついた。
「殿下…。今の僕の話、ちゃんと聞いてくださってましたか?
かなりの変わり者なんですよ!関わるのはやめてくださいね!!」
「………、少し話をするくらい、いいだろう?」
ストロベリーブロンドの前髪から覗くヘーゼルの瞳が、上目遣いで聞いてくる。
はっきり言って、微妙なお年頃の男がする仕草では…ない。
その破壊力は認めるが。
「殿下…。入学するまでには、そういう仕草も改めてくださいね。」
「………、ん?」
ジュリアーノは、全く分かっていないのであった。
ジュリアーノには可愛い皇子でいてもらいたい。