表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/77

011.華の想い

ジュリアーノの手には、1通の封書があった。

異母姉(あね)エレノアからである。



何日か前に、侯爵邸への訪問伺いを出していた。その返事と思われた。



ジュリアーノは内容を確かめた後、異母姉(あね)シルヴィーナの私室へと向かった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



タイムーン侯爵邸では、いつもの変身姿で、エレノアが出迎えてくれた。



「いらっしゃい。ジュリー、シルヴィー。」

「エル異母姉様(ねえさま)、お久し振りです。」



ジュリアーノは、思わず知らず笑みを溢した。姉たち絶賛の、キラースマイルである。






侯爵邸の庭で、エレノアはお茶を楽しんでいた。



美味しいお茶とお菓子のお供は、もちろんシルヴィーナの婚約話である。



「ディルズ侯爵令息と婚約したそうじゃない、シルヴィー。

 どんな方なの?未来の義弟について、聞かせてちょうだいな。

 惚気てくれてもいいのよ?」

「エルったら、意地悪ね。」

「あら、随分と可愛い反応するようになったのね。顔が赤いわよ?」


───この お堅い同母妹の照れた様子など、なかなか見られるものじゃないもの。堪能させていただくわ。私は、チャンスは有効に使う派なのよ。



「わぁ。それは、私も聞いてみたいです!」


───あら、ジュリーも乗っかったわね。よし、よし、この調子で攻めていきましょう。


「ほら、ジュリーもこう言ってるのだし。白状なさいな。」

「もう!………クラレンス様は、とてもお優しい方よ。」

「それじゃ、普通すぎるわ。なんか、もっと、こう…あるでしょう?」


もう勘弁してと言わんばかりに顔を赤くしたシルヴィーナは、新鮮で可愛い。

そうして、暫くお茶の香りを堪能した後、躊躇うように言葉を零した。



「………………優しすぎて、何を考えてらっしゃるのか分からないわ。」

伏し目がちに息を吐く姿が少し悩まし気だ。


「なら、聞いてみたら?

 何を考えてるかなんて、本人しか分からないわよ。

 聞いてみるのが一番じゃなくて?」


シルヴィーナが嫌われるなんてことは、あるはずがない。

だから、聞いてみれば良いのだと、背中を押してあげたかった。

でも、聞きたくても聞けない気持ちも分かる。


───自分だって出来てないのに、こんなことを言うなんて…私は狡いわね。



「怖がってばかりじゃ、何も解決しないわ。

 そうじゃなくて?」


───そうだわ。怖がってばかりではダメなのだわ。

───私も、一歩踏み出してみようかしら。


「ねぇ、シルヴィーナ。貴方は、私の自慢の妹よ。

 誰が何と言ったって、自慢の妹だわ。

 ディルズ侯爵令息だって 貴方という人を知れば知るほど、

 好きにならずにいられないはずだわ。

 きっと、もっと、知りたいと思ってくださっているのじゃないかしら?」


「エル異母姉様(ねえさま)の言う通りですよ。

 私にとってもシルヴィ異母姉様(ねえさま)は自慢の姉様です。」


ジュリアーノがまた、エレノアの言葉に乗っかる。

シルヴィーナは少しばかり自信が足りないところがある。

これくらい言ってあげて丁度良い気がする。



「今度、歌劇を観に行くことになっているの。クラレンス様と。

 いつもより少し…お話してみようかしら。」

頬を染めながら、シルヴィーナは言った。




───美しく優しい、私の同母妹(いもうと)。貴方はどうか幸せになってね。


そう願いながら、その日のお茶会は終えたのだった。


シルヴィー姉さまにも幸せになってもらいたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ