表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/77

010.回想 ~第1皇女の婚約事情~

時を戻そう…。


多分、6年と半年くらい前まで。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



ジュリアーノの異母姉(あね)である第1皇女エレノアは、18歳の誕生日を数ヵ月後に控えていた。



この国の女性の結婚適齢期は16~18歳とされているので、皇女であるにも関わらず 未だ婚約者が決まっていないのは異常とも言えた。



その原因は、彼女の魔術属性と本来の外見にあった。



エレノアの魔術属性は『風』『水』『闇』。

蔑称として『闇もち』とも呼ばれる『闇』属性を保持していたのだ。

そして、『闇もち』にありがちな黒髪と珍しい紅い瞳をしていた。周りが気味悪がるので 普段は色を変えているが、幼少期は本来の色のままであった為に それは有名な話であった。






エレノアの婚約が決まりそうだと聞いたジュリアーノは、異母姉(あね)シルヴィーナを伴いエレノアの私室をと訪ねた。



「エル異母姉様(ねえさま)、ご婚約おめでとうございます?」

「ふふっ。ありがとう、ジュリー。

 でも、まだ、決まっていないわよ。気が早いわね。」


エレノアは笑顔で末っ子の異母弟(おとうと)を抱き上げた。シルヴィーナはジュリアーノを「リア」と呼ぶが、エレノアは「ジュリー」と呼んだ。



「では、まだ、遊んでいただけるのですね!」

「まぁ、リア。そんなこと、言うものではないわ。同母姉様(ねえさま)の慶事を喜んで差し上げなくては。」

「ふふふふっ。本当に真面目ね、シルヴィーは。ジュリーは、無邪気なだけじゃないの。でも、嬉しいわ。喜んでくれる、シルヴィーの気持ちが。」

「そんなこと、当たり前ですわ。それに このお話が纏まれば、婚礼の準備でお忙しくなるではありませんか?リアと遊んでいる暇などなくなるかもしれませんよ。」

「あら、ジュリーを独り占めする気かしら?ダメよ。私だって、可愛いジュリーとの時間を減らしたくないわ。」

「別に、そんなことは言っておりませんわよ。ただ、心配なだけですわ。エル同母姉様(ねえさま)は、何でもない顔で無理をしますから。」


シルヴィーナは少し呆れ気味だ。






エレノアとの婚約が持ち上がっているのは、2歳年上のタイムーン侯爵家の嫡男 カーティスだ。彼に恋人がいるという噂は、エレノアも知っていた。親の許しが得られず、婚約に至っていないという。彼の立場を考えれば、エレノアから話を白紙に戻すべきなのかもしれない。しかし、エレノアにも事情があった。もうすぐ、誕生日を迎えてしまう。婚約のタイムリミットであった。某かの事情で結婚が遅れるとしても、婚約だけは済ませておきたいという皇族としての体面がある。自分のプライドというよりは、家の面子として。



「これは何か、策が必要よね。デメリットを補って余りある、メリットを提示しなければいけないわ。」



エレノアは独りきりの部屋で、呟いた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



その後、何度かエレノアとカーティスは話し合い、何とか着地点を見つけた。



結婚の1年後に側妻を娶るという案から、結婚の3年後に側妻を娶ることに条件は変わり、その際には現タイムーン侯爵にエレノアから強く口添えをすることで折り合ったのだ。



しかし、華の命は短い。カーティスの恋人がいつまで待てるのか。いや、待たせてよいのか。エレノアは、膿んだ想いがした。

再び回想シーンでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ