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主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!  作者: true177
第九章 夏祭り編 (Summer festival)

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091 チョットマッテクレヨ、ナ?

 「あー、ちょっと来るのが早かったか」


 「早い、って言っても、五分ぐらいなんて誤差の範囲内だぞ?」


 横岳の手伝い二日目。亮平は、未帆よりも早く横岳の家に到着していた。未帆と待ち合わせの約束はしていないので、問題はない。


 「未帆に何か仕掛けちゃおうかな? 特に理由はないけども」


 亮平と未帆の二人が行動すると、普通は未帆が先になるか合流して一緒になるかなのだが、今回は珍しく亮平の方が早い。それを活かして、未帆に何かドッキリを仕掛けようと思ったのだ。


 「霧嶋、お前それして、西森さんがどうなっても知らないからな」


 反対しているような口ぶりだが、よく聞くと、亮平を止めようとはしていない。つまり、容認している。妙に横岳の表情が明るいのも、その証だ。


 ドッキリとは言え、やることは単純だ。亮平があたかもまだ来ていないように見せかけるだけだ。未帆がどこかの部屋で待っているところを、後ろから脅かす。それだけだ。


 一旦ことが決まれば後は早い。亮平は階段を上り、二階で待機することになった。


 そして、数分後。下から、インターホンの鳴る音がした。


 (未帆が来た!)


 今すぐ一階に体が降りていきそうになるのを、こらえる。


 「あれ、亮平、まだ来てない? ・・・・・・まあ、いつものことかぁ」


 「そうそう、まだ霧嶋来てないから、とりあえずリビングで待っといて」


 横岳と未帆が移動する音が聞こえた。亮平は二階の階段から顔を出している状態なので、未帆が通る時に階段の方を見られたらまずい。亮平は、二階の部屋の一つへと入った。


 入った部屋は、漫画がギッシリと詰め込まれた本棚がいくつも設置してあった。昨日一階の部屋に何冊か漫画があったのも、横岳がこの漫画部屋から事前に運びこんでいたかららしい。


 亮平の目に入っている膨大な量の漫画は、横岳本人が買ったものではないらしい。横岳曰く、『叔父さんが買ったやつを置いてるだけ』らしい。


 読むのは自由だったことも思い出し、亮平は本棚の中から一冊、手に取った。五分ほど時間が経過するまでの暇つぶしだ。


 読み始める前に、部屋の時計を確認する。13時2分だった。 


 (となると、13時5分ぐらいに降りればいいか)


 安易な考えの元、亮平は漫画の一ページ目をひらりとめくった。


 ―――


 漫画には、時間を忘れさせて人を引き込む効果がある。亮平も、その効果をモロに受けた。


 (1巻読み終わったから、そろそろ下に行かないと)


 漫画を本棚に直し、時計をちらりと見た。そして、驚愕した。


 (13時30分!?)


 むろん、亮平としてはそれだけ時間を浪費したつもりはない。だが、漫画というのはそういうものだ。本人が思っているよりも早く、時間を経過させる。


 (さすがにこれはまずいな・・・・・・)


 横岳が何もしていなければ、30分も待たせていることになる。そうなると、どういう事になるのかは想像しただけでも分かる。


 亮平は、足音を立てないように、忍び足で一階へと降りて行った。


 未帆がいるであろうリビングの前まで移動し、恐る恐る部屋の中を覗き込んだ。未帆は、壁掛け時計に目線がいっていた。


 ただ、集中しているわけではないようだ。焦点が合っていない。


 未帆があの状態だということは、横岳は放置しておいた可能性が高い。


 (横岳はどこだ?)


 呼びに来てくれるぐらいのことはしてくれ・・・・・・。亮平は、その場で小さくそうつぶやいた。


 そのときだ。未帆が、亮平の方を向いた。つぶやき声に反応したのだろうか。未帆と目が合ってしまった。


 (あ・・・・・・)


 亮平は自分がやらかしてしまったことに気付いたが、手遅れだった。


 未帆の目に光が戻った。それと同時に、未帆がジト目に変わった。不審者を見ているような目だ。


 「や、やあ・・・・・・」


 「・・・・・・30分も遅れて、『ごめんなさい』の一つもないと?」


 ストレートなド正論に返す言葉もない。


 「ごめん! いないように見せかけて実はいるドッキリを仕掛けようと思ってて、漫画に夢中になっちゃって・・・・・・」


 「・・・・・・言い訳禁止」


 少ない文字数で、的確に亮平の心に突き刺さる。空気が氷のように凍てついている。


 「というか、ドッキリ? ・・・・・・ということは、横岳君も?」


 「そうです! 横岳も一緒だから横岳も・・・・・・」


 「・・・・・・責任転嫁?」


 言葉のチョイスを間違うと、油に火を注いでしまうようでならない。これ以上事態が悪化してほしくはないので、亮平は自分の非を認めた。


 「・・・・・・分かった、今回だけは許してあげる。次はないからね?」


 「分かっていますとも!」


 「ところで、横岳君は何やってるの? 確か、私をリビングに行かせた後、すぐ後ろのあの部屋に入っていったような・・・・・・」


 未帆がソファの右斜め前にあるふすまを指差した。昨日亮平と横岳が漫画やらゲームやらの娯楽をしていた部屋だ。


 (いや、俺も知らないから)


 何も物音がしないところから、横岳も亮平のように漫画に熱中してしまっているのかもしれない。


 未帆が、ふすまをガラリと開けた。


 「・・・・・・あ、霧嶋。やっと終わったのか・・・・・・って、西森さん!?」


 未帆がまたしてもジト目になった。横岳は、予想通り横になって漫画を見ていたのだ。今日も籠城するつもりだったのだろう。2,30冊ほどの漫画が隣に積まれていた。


 「二人とも・・・・・・人を30分も放置して・・・・・・」


 (あ、ヤバい。説教が飛んでくる)


 「・・・・・・しばらく、作業のことは置いておこっか」


 笑顔に殺気を感じる。逃げ出したいが、ここは家の中。逃げ出すわけにもいかない。


 この後、未帆からキツイお叱りを受けることになったのであった。

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