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主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!  作者: true177
第八章 暑い時は冷たい物!編(When it's hot, some cold food is good!)(短編・一話完結集)

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#003 暑い時は冷たいもの!後編(八章終)

投稿遅くなりました。

文字数(今までの話に比べると)長めです。

前編の続きとなっていますので、まだ前編を見ていない方は、先にそちらからお読みください。

 翌日、昼過ぎ。亮平は、部活から帰ってきて家にいた。


 本来ならば午後はゆっくりしていられるのだが、今日は(ほぼ強制的に入れられた)スケジュールが埋まっているので、あまりゆっくりするわけにもいかない。

 洗濯機の前で部活着を脱ぎ、そのまま洗濯機の中へと放り込む。まさか汗で濡れた服を着たまま待ち合わせ場所に行くわけも行くまい。

 普段着は引き出しに適当に入っているので、別にどれを着てもいいのだが、結局いつも来ている服を着ることにした。

 一応一時には集合ということにはなっているが、ギリギリに着いていろいろ文句をつけられるのは避けたい。文句を言われて状況が悪くなることはあっても、よくなることは見たことがない。

 少し嫌な予感がしたので、ポケットに少しばかりの小銭を入れて、家を出た。もちろん、時間は少し早めで。

 

 「遅ーい!」

 「遅いよ!」


 亮平の目に公園が視界に入った瞬間に、二つの声がかかった。いうまでもなく、一つは未帆で、もうひとつは澪だ。


 (まさか、遅れた?)


 絶対にしてはいけない、と出発前に自分に言い聞かせていたことを犯してしまったのか、と亮平は若干不安そうに時計を見た。しかし、時計の長針は11を、短針は1の少し左を指していた。


 「まだ時間じゃないけど?なんなら五分前に着いてるし」

 「「十分前には着いとくのが常識でしょ?人を待たせない!」」


 (ごめん、十分前はする人としない人に分かれると思うな)


 十分前集合。そんな言葉も、あったような気がする。とはいえ、亮平は基本五分前行動を基準に動いているのでギリギリに着いてもいないのに怒られなくてはいけなのには、納得がいかない。

 だが、そんなことを言っても目の前の女子二人に通用はしないだろう。多数決でも、二対一で負ける。現実は、強い方が勝つ。亮平の事なかれ主義は、ほとんど悪い方へと進んでいってしまうが、今回もそのうちの一つだ。


 「昨日言った通り、お金は私たち持ちだから。付き合わせてるのはこっちなのに、お金だけ亮平持ちってのはさすがに不公平だから」


 未帆はそういうと、亮平の手に、何円あるかは分からないがコインが数枚、押し込まれた。

 さすがに一方的に連れてきたことは後ろめたさを感じているのか、いきなり代金がこちら持ちになる、という事態にはならなかった。亮平側としてはうれしい限りだ。ポケットの中に入れていた小銭たちも、『使われなくてよかった』と一息ついていることだろう。


 「それでは、どうぞ目の前に見えているコンビニにGOしてください!」


 間違いなく敬意が払われていない敬語の命令文とともに、亮平は背中を一気に押し出された。ドン、という効果音が鳴った。コンビニの自動ドアの上部に付いているセンサーが亮平の体を検知し、自動ドアが左右に開く。

 押された勢いでコンビニの通路の少し奥へ進んでしまったが、幸いにもその通路に客はいなかった。当たったら迷惑がかかるところだっただけに、もうちょっと気を付けて人を押してほしいものだ。そもそも、『気を付けて人を押す』という思考になる時点でおかしいと思えないのは異常か。


 (えーっと、アイスとかが入っているところは、っと)


 冷凍ショーケース(アイスなどが入っている)はすぐに見つかった。しかし、問題はここからだ。 

 ここまで来てしまった以上、手ぶらで『何も買わなかった』とでも言おうものなら絶対に冷たい目で見られる。それは確定事項だ。


 (どうせなら開き直って、自分がおいしそうだと思うものでも買うか)


 亮平は、端から順番に、ずらっと並んだ商品達を眺めていく。チョコアイスバー、ソフトクリームのコーンがついていないバージョンのやつ、カップアイス・・・・・・。


 (あれ、これって・・・・・・)


 亮平の目に、『あるもの』が入った。その『あるもの』は、今の状況を打破するのにはピッタリであろう、亮平にとってはまさに救世主となり得るものだった。逆に、なぜいままで気づかなかったのかと自分に問いたい。


 (これなら、いけるかもしれない)


 「あの、これお願いします」


 亮平はその『もの』を持って、コンビニのレジへと一直線に向かった。そのまま、レジにいる店員にその『もの』を渡す。


 「130円です」

 「はい。・・・・・・!!!」


 小銭を店員に渡そうとして、亮平は気づいた。手の中にある小銭達の合計金額が、120円しかないことを。

 なぜこれくらいしか未帆と澪は出さなかったのだろうか。確かに、アイスだろうとかき氷だろうと120円を超えるような代物はあまり多くはない。だが、流石にもう少しぐらいは金額を上げて良かったのではないのか。余計なものも買ってくると思っているのなら、それだけ信用が無いということだろう。ちなみにだが、もちろん亮平がわざと高いものを買おうとしているわけではない。自分のお金でもないのにそれをするのは、下衆というものだ。

 これでは仕方がないので、渋々亮平は、事前にポケットに入れておいた小銭を取り出した。代金を支払い、コンビニを出る。商品が見えないようにするため、レジ袋はもらっておいた。


――――――――――


 「「で、どっちを買ってきたの?」」


 亮平が体の動きを止めるやいなや、当然ともいうべき二人の疑問文が亮平を襲った。亮平は、別に焦らすこともなくレジ袋の中へと手を入れ、そして買ってきたものを取り出した。

 未帆と澪、二人の動きがわずかの間だが止まった。二人ともの表情を読み取るに、少なくとも喜んではいなさそうだ。かといって、完全な不平不満な感じでもない。他人のことについてはもともと鈍い亮平ですら分かるのだから、確定事項だろう。


 「あー、やっぱり・・・・・・」


 先に口を開いたのは、未帆だった。まるでこうなることを予想していたかのような口ぶりだ。予想できていたのなら、最初に『それを買うのは禁止』にすればよかったのではないか、と思ってしまう。


 「そうなることを予想してたから、120円しか渡さなかったのに・・・・・・」


 澪も、未帆とだいたい同じような口ぶりだ。少なくとも、買うときに金額が足りなかったのは偶然ではなかった、ということだ。立派な計画犯だ。


 「「それなのに、なんでかき氷アイスが買えてるの!?」・・・・・・確か130円だったはずなのに」


 一人言葉を追加したのは、澪だ。レシートを見せていないのに金額が分かるのは、もう計画的犯行で確定だろう。

 亮平が状況打開のために買ったものとは、お二人さんが言っている『かき氷アイス』だ。かき氷とアイスで口論になっているのなら、両方が入っているものを買えばいい、という思考になったのだ。実際、これで正しかったと亮平は今も思っている。納得してもらえない方がおかしいぐらいだ。それにしても、まさか念のために持って行った小銭が活躍するとは思いもしなかったが。

 亮平は、何故金額が足りないはずのかき氷アイスが買えたのかを説明した。二人はしばしの間アイコンタクトでやりとりをして、そして若干苦笑いを顔に出した。


 「まあ、両方入ってるものを買ってこられたらね・・・・・・」

 「そこは、私たちのツメが甘かったってことで・・・・・・」


 双方言っていることは違うが、亮平に下された判決は『無罪』に決まったようだ。若干不満は残っているようだが、とにかくどちらの気分も害さなかったのは成功と言っていいだろう。

 ひとまず、これでやるべきことは終わった。亮平が言葉をかけて帰ろうと、自宅に向かっての第一歩を踏み出したとき。まだ全部謎が解明されていないとばかりに、追撃が飛んできた。亮平は、不発弾がまだ一発ひそかに埋まっていることに気づいていなかった。


 「待って!それじゃあ、なんで自分のお金を持ってきてるの?まさか・・・・・・」


 (あっ)


 怖い。非常に怖い。心の内が見すかされているかのような感覚が亮平を襲った。なぜ『まさか』がセットでついてくるのか。まるで持ってきた理由の予想がだいたいついているかのよな言い方だ。観念した亮平は、自分で持ってきた小銭の件を全部話した。とたん、二人の表情が固まった。笑顔になっているようで、目が死んでいる。俗にいう『目が笑っていない』というやつだ。


 「ふーん。要するに、私たちが自腹にさせると思ってたんだ。「へー」」


 最後だけ二人の声が重なったということを冷静に感じている場合ではない。明らかに、気まずい空気が周りをどんよりと流れている。原因は、もちろん亮平のせいである。口論に巻き込まれたとはいえ、九割がた自業自得だ。

 亮平はその後、無言のまま圧力をかけてくる澪と未帆の二人の視線に耐えつつ、一目散に逃げかえった。謝罪の言葉はない何回も口にしたが、様子が様子だけに、耳に入っている気配はなかった。結局、自分で小銭をもっていかずにかき氷かアイスどちらを買うか悩むか、持って行って双方から追及されるかのどちらがいいかは、どちらが良かったのかは永遠に未解決のままである。


 (ろくでもない事に巻き込まれた被害者のはず・・・・・・被害者・・・・・・なのか、俺は?)


 亮平は心の中の誰かさんに問うが、当然のごとく答えは返ってはこなかった。


 この日の翌日に亮平が未帆達に声をかけずらくなったのは、当然ということで。

『#004』が新たに投稿されました。よって、この話で八章完結といたします。


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新作「limit.~事故に巻き込まれたあの日、純( すみ)は、恭平( きょうへい)は・・・・・・~」

投稿しました。



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