008 再会は突然に⑧(一章終)
亮平視点
ーーー亮平の自宅にてーーー
「にしても、あいつらしくないよなあ。」
亮平は、つい一時間前の澪の行動を、不自然に思っていた。
(普段なら未帆を徹底的に追及してたはず。何かあったのか?)
考えてもらちが明かなかったので、亮平は澪に電話することにした。
「プルルルルル・・・ガチャ!えーもしもしー。」
出たのは澪だった。都合がいい。
「あ、澪!今日の事なんだけど、なんかおかしくなかったか?」
「あー。あれね。友佳がアイコンタクトで「違う」って伝えたのよ。」
(あの時の沈黙は、そういう事だったのか。)
「で、私からも聞きたいんだけど、西森さんって、亮平君の何?」
返答の仕方によっては誤解を生みかねない。亮平は慎重に応じた。
「未帆は、俺の幼馴染なんだよ。小さい頃の。」
「それって、友佳も知ってるの?」
「当然。小さい頃は、友佳と未帆と俺でよく遊んでたんだぜ。あの頃がなつかしいや。」
「亮平君、悪いんだけど、ちょっと待っててね。」
ガチャン!と電話が切られた。澪は、何があったのか出会った時から疑い深かった。「怪しい!」と思うと、それが明確になるまでとことん追及する。
(ま、それであいつが委員長になってから、陰湿ないじめが次々に無くなっていったんだけどな)
澪は気が強い。なので、凡人なら見て見ぬふりをしてしまうような一方的ないじめも、きちんと止めに入る。澪の学校内の評価はけっこう高いのだが、それはこういう事があるからである。
「ピリリリリリ♪」
亮平の携帯から着信音がなった。亮平は早速出る。
「もしもし。」
「亮平君?さっき友佳に電話で聞いてきた。本当に私、西森さんに悪いことしたなあ。」
ずいぶん澪が弱気になっている。亮平が、未帆に「ゴリラ並み」と言ったのとは比べ物にならないぐらい小さい。
「そんなに落ち込むなって。俺なんか、未帆に「(握力が)ゴリラ並みだ!」って言ってしまったんだから。」
「・・・?」
携帯の向こうが急に静かになった。いや、耳を澄ますと、なにらや「スー、ハー」と息をして
いるのが聞こえる。亮平は、その時やらかしたと気付いた。
(マズイ。誰であろうと女子にそんなこと言ったら...)
「亮平君!あなた、西森さんにそんなこと言ったの?信じられない。」
「待ってくれ!それは、その・・・」
「女子にいう言葉じゃないでしょ!」
亮平の予想通り、澪は爆発した。
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あのあと澪にさんざん説教を食らわされた。
(もし俺が澪だったとしても、今のは怒るなあ。)と反省しつつ、新聞を見た。
(さて、今日はどんな番組があるかな?)
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ーー夜ーー
亮平は今日一日の出来事を思い出していた。未帆が学校にいたこと。自分がやらかしてしまったこと。帰り道での出来事。
特に未帆と再会できるなんて思ってもみなかった。今振り返ってみても、奇跡なんじゃなかろうか。
(また明日も学校、か。)
そんな事を思いつつ目を閉じた亮平は、すぐに意識を夢に吸い込まれていった。
新聞のところは、茶番です。
これで、第一章は終了となります。(小説は完結してないです。)
次は間話を挟むか第二章に入るかわかりませんが、よろしくお願いいたします。