069 ホテルにて⑤
若干グダグダです。
「普通に風呂かぁ」
脱衣所と風呂の仕切りの役目を果たしている扉を開けた時、目の前に広がっていたのは、巨大な風呂だった。屋根はきちんとついている。
僅かに『露天風呂』を期待していたのだが、そんなことはなかった。時間が早いので、風呂に入っている大人はほとんどいない。
風呂にいきなり入ろうとする人はおらず、シャワーに殺到する。まさか全員分あるわけではないので、列ができていた。列といっても、せいぜい三人ぐらいしか並んでいないものだったが。ちなみに、男子が全員入っているわけではない。東成中は、男子の数が百人は超えている。そんな大人数が一気に風呂に殺到したらどうなるだろう。お客さんに迷惑だ。
亮平も体を洗い、風呂に入ろうとする。とはいえ、熱いと困るので、いったん手を付けて熱さを確認してから入った。幸い、風呂の熱さは亮平がいつも入っているぐらいの熱さだった。
肩まで湯に沈めると、湯の暖かさが全身に伝わってきた。筋肉痛は取れそうにはないが、それ以外の疲れは湯に溶けて流れていくように亮平は感じた。
体に余裕が出てきたことで、頭がだんだんと整理されていく。
まず、今日の朝に見た二つの悪夢。一つ目はぼんやりとしか覚えていないが、二つ目は嫌に鮮明に覚えている。殴られた感触、未帆の表情、聞き覚えのある声・・・・・・。あの夢を見たことが相当ショッキングだったので記憶に残っていると信じたいが、それにしてもかなりの事を覚えてしまっている。
そして、昼の変な男。吐いて気持ち悪そうな人を見てニヤニヤするのは、だいぶ気持ち悪い。女子だけを見ていたというのも、余計に気持ち悪い。変態かなにかだろう。何かをするかも分からない。通りすがっただけならいいのだが・・・・・・。
「霧嶋、顔がかなり疲れてるぞ。早く寝たらどうだ?」
横岳がこんな言葉をかけてくるのは珍しい。それほど亮平が疲れているように見えるのだろう。亮平も疲れているといえば疲れている。半分ぐらいは横岳のせいだが。
結局亮平は、横岳の言葉に乗っかることにした。
風呂から上がって着替えた亮平は、なるべく誰にもかかわられないように階段を使って三階まで登った。階段は、眠気もあってかなりキツかったが、誰かに捕まって長話をされるよりはマシだ。
鍵は横岳からもらっていたので、部屋に入ることができた。鍵がかかっているということから分かるとは思うが、誰も風呂から帰ってきていない。
布団を敷くのも面倒なぐらい、眠気がどっと亮平に襲う。
(畳だから、直寝しても大丈夫だろう)
亮平は、自分の体の思うがままに畳に倒れこんだ。そして、すぐに瞼を閉じた。
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「亮平!って・・・・・・。班会議あるの忘れたのかな?起こしてもいいかな?」
「寝て出なくてもいいとは冊子にも書いてはあったけど、まさか班長がとはねえ・・・・・・」
「そうとう疲れてたからな。そのまま寝かせておいてやれよ。ところで、理科のテストが先週あっただろ。霧嶋、解答に・・・・・・」
「横岳君、本当に!?覚えるもの間違ったんじゃないの?」
「・・・・・・」
こんな会話があったことを、熟睡していた亮平は当然知らない。




