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主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!  作者: true177
第七章 修学旅行編(School Excursion)

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067 ホテルにて③

 太陽はまだ沈んではいないが、かなり傾いてきたころ。


 「おーい、そろそろ夕食だから、部屋の人全員一緒に降りて来いよー」


 教師が亮平の部屋に回ってそう伝えたとき、亮平は部屋の床にはいつくばっていた。横で湊も同じようなことになっている。 


 その理由は、湊と横岳に嘘がバレて腕立て伏せをやらされることになったときまで遡る。


――――――――――


 亮平は、かなりキツかったがなんとか腕立て50回はやりきった。


 しかし、地獄がここから始まるとは・・・・・・。きっかけは、横岳の余計な一言だった。


 まだ暇つぶしの筋トレをやっていないからやろうと言い出したのだ。湊がその時少しはっとした顔になっていたので、忘れていたのだろう。


 筋トレになれば、先に50回腕立てをしている亮平がほぼ確実に負ける。筋力が同じぐらいならば、そうなる。


 「もちろん霧嶋が不利だから、俺と湊は持ってきたバッグを背負って筋トレをする。これでどうだ?」


 (違う、横岳はそんなに素直じゃない)


 横岳は、こういう時は普通強引に相手を不利な条件にさせる。公平にしてくれることは見たことがない。亮平は横岳と湊に許可をもらい、大きいバッグをそれぞれ持った。片手だと折れそうなぐらい重かった。小さい方のバッグもそれぞれ持ってみたが、重い。


 修学旅行に全員が持ってきているバッグは、二つ。どちらかの荷物を抜いて軽くしているという亮平の考えは見事に外れた。


 「納得したか?」


 していないが、不正を見つけられているわけでもない。心の中では『まだおかしい』とは思ってはいたものの、表面上では肯定するしかなかった。


 亮平が腕立て伏せの準備姿勢になると、湊がまず自分の小さい方のバッグを背負って腕立て伏せの体制になった。亮平が持った感想を言うと、小さいバッグでもけっこう重い。事実、湊の下の畳が亮平の下の畳より少しへこんでいる。


 一方の横岳はというと、大きい方のバッグを引っ張り出してきていた。そして、亮平と湊の目の前でバッグの中をあさり始めたのだ。湊の表情が若干変わる。想定外だったのだろう。


(グルじゃなかったのか?)


 バッグの中身を全部抜く作戦なら、抗議をして無効にする。亮平が声を出そうとしたときだった。


 横岳がバッグの中から小さいものを取り出した。それは、肩掛けの小さなバッグだった。軽そうに持ち上げたので、中身は何も入っていないはずだ。


 「別にこれでいいだろ?使っていいバッグを決めてたわけじゃないし」


 なぜバッグの中に肩掛けバッグが入っているのかは不思議だが、バッグである以上認めなければいけない。指定しなかった方が悪いのだから。


 「さ、始め!1,2,3,・・・・・・」


 亮平は、既に腕立てをした後。湊は、重いバッグ(リュック)を背負っている。横岳は実質普通に腕立てをしているのに等しい。最初に脱落するのは誰かは分からなくとも、一番最後まで残るのは誰かなのかは、決まった。


 しかし、最下位になるかどうかではまた違う。最下位はさらに罰ゲームが追加されるのに対し、二位はなにもしなくていい。この差は大きい。湊も分かっているのだろう、必死にバッグ(リュック)を背負って肘を曲げる。


 「10,11,12・・・・・・」


 声を出しているのは横岳しかいない。亮平は声を出していない、いや出せない。体を支えるだけで精一杯だ。腕が痛い。ちょっとした衝撃を加えただけで崩れてしまいそうなぐらいの状況だ。他の人を見ている余裕はないが、湊もまだ耐えている。


 「13・・・・・・」


 プツン。頭の中に、何かが切れたような音がした。何かは分からない。筋肉かもしれない、神経かもしれない。ただ一つ分かったことは、体の前半分が畳に当たる感触だった。腕にかかっていた圧も、消えていた。


 (最下位か。罰ゲーム確定・・・・・・)


 12回の時点で湊、横岳の両方ともギブアップはしていなかった。つまり、罰ゲームだ。


 「14,これで終わりだな。お二人さん、罰ゲーム頑張れよ」


 (()()()()()?)


 横岳が14と言いながら一回余計に腕立てをした理由は分かる。同着にならないためだ。だが、横岳がお二人さんと言った理由。亮平がその答えにたどり着くのに、しばらくの時間を要した。目の前に突っ伏せている湊。いまだに腕立ての姿勢を崩していない横岳。その横岳の視線の先。


 (同時に脱落した?)


 少なくとも、湊はまだいけそうだった。脱落したということは、バッグの重さのハンデが大きかったか。


 同着になったことで一瞬、亮平の頭に『罰ゲーム回避できるかも』という思いが生まれたが、すぐにそれはないことを悟る。横岳は『最下位』、つまり一番下が罰ゲームだと言っていた。それはたとえ二人いたとしても、二人とも『最下位』だろう。もしも『三位』と言っていたのなら別だが。


 「さー、スタート!」


 その言葉で現実に引き戻される。『腕立て五十回』。さっきは十回ちょいで脱落したというのに、五十回。あまりにも厳しい。制限時間がないのが唯一の救いだ。


 湊を見ても、とても『今から五十回できる』といったものは読み取れない。ただ筋力の消費は亮平よりはしなかったのだろう、すぐに腕立てを始めている。


 亮平もやけくそになりながら、地獄へと飛び込んだ。


――――――――――


 「ったく、腕が・・・・・・」


 部屋長と班長はまた別。302号室の部屋長は横岳だ。なので、部屋の戸締りをしたり、呼びかけをしなくてもいい。


 亮平は、腕の痛みを無視して部屋を出た。

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