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主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!  作者: true177
第三章 亮平の暗い過去編(Ryohei’s dark past)

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032 外れた限界(リミット)

 「やあ、みんな来たのかい。何しに来た?降参ならまだ受け付けるぞ?」


 屋上には、教師数人と残った六年全員、そして連れ去られた友佳ら数人の女子が屋上の端っこにいた。


 細川だって余裕な訳ではない。必死だからこそ、こんな手段に走ったのだ。頭の中では理解ができる。だが、それでも心では今すぐにでも六年にとびかかりたい気持ちであふれていた。


 しかし、六年に飛び掛かった瞬間、友佳たちが何をされるか分からない。六年が開き直ったら、もう手遅れになるかもしれない。そんな危険を犯せるほどの気持ちは、亮平には無かった。


 屋上には続々と四年生が到着してきている。椅子や机を抱えて。五年の誰かが指示したのだろう。


 だが、依然として五年の側から手を出せない状況が続く。もし手を出せば、捕まっている友佳達に危害が及ぶ。動けるものは居なかった。


 「このまま時間が経てば俺達の方が不利になる事ぐらいは分かってるさ。だーが、しかし、ここに警察を呼んできたら話は別じゃないかな?」


 「もし、警察が来たって、俺達被害者の方を信じるに決まって・・・・・・」


 「ところがところが、それが違うんだなあ。警察は大人の事を聞く。今回の場合は、俺達六年もいるからなおさらさ。泣きまねでもすればいいんだからな」


 細川の言っていることが嘘かどうかは分からない。だが、周りの六年や教師がうなずいているのを見ると、不安になってくる。


 「ということで、包囲を解いてくれないかな?今なら、警察にも通報しないから、さ」


 細川はその弱みに漬け込んでくる。亮平自身も心が揺らぎ始めた。


 (警察が細川の言う通りなら、包囲を解いた方がいいのか?いや、でもそうなったら今までの苦労はいったい・・・・・・)


 その時、何を思ったのか六年の中で比較的上の方の六年が、友佳を前の方に引っ張り出してきた。友佳は両手両足を縛られている。必死にうなっているが、何も変わらない。


 その六年は、ポケットから銀色に光る者を取り出した。カッターだった。亮平の血が騒ぐ。


 (・・・・・・お前、何しようとしてんだ?)


 なんとなく嫌な予感しかしない。そして、それは当たってしまった。


 その六年はカッターを、友佳の首に持って行ったのだ。


 「もしお前らが攻撃する素振りでもみせたのなら、こいつがどうなるか・・・・・・。分かってるよな?」


 亮平ははらわたが煮えくり返りそうなほど怒っていた。しかし、依然として飛び掛かることができない。もし飛び掛かれば、その答えは火を見るより明らかだ。


 カッターを持っている六年は、さらにカッターを友佳に近づけていく。


 「所詮お前らはこんなもんだ。目の前で同級生が何をされようと、助けることができないんだからな!」


 その六年はカッターを持って極度の興奮状態になったのか、言い放った直後に友佳の肩に向かってカッターを振り下ろす。


 「やめろ!早まるな!」


 その声の主は、亮平でもなく、他の五年でもなく、細川だった。細川の顔はかなり慌てた顔をしていた。


 細川の声が聞こえなかったかのように、カッターの先端が友佳の肩に刺さった。浅かったのか、血はあまり出てきていない。だが、カッターが肩に刺さっていて血が出ているのは事実である。


 亮平はカッターが肩に刺さった瞬間に雄たけびをあげて一気に刺した六年の方へと走っていた。亮平の理性などというものは、すでに吹っ飛んでいた。


 「刺したら意味ないだろ!人質っていうのは無傷の状態でなんぼだろ!傷つけたら、相手が攻撃をしてこない理由が無くなるんだよ!」


 細川が怒鳴っているが、亮平の耳には入らない。そのまま、六年に突っ込む。


 「お、おい!このカッターが怖くないのか?」


 (そんなもの、覚悟できてないやつが持っていても関係ない)


 亮平は、その六年の無防備なみぞおちにパンチを打ち込んだ。その六年は、カッターを動かす暇もなく後ろに倒れた。


 「・・・・・・てめえら全員、友ちゃんを刺したことを後悔させてやる」


 かなり音程が低いその声が亮平から放たれた。そして、そこから亮平は暴れに暴れ、暴れまく

った。

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 亮平が暴れすぎて気を失って倒れたとき、屋上に動ける六年や教師は、一人も残っていなかった。

(多分)次話で三章終了です。

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