023 反撃への光①
この話はとくに暴力的な場面は出てきません。
「ふぅー。やっぱり中々ないな」
五年生としての学校生活の一週間目が終わった週末。亮平は、パソコンで人への攻撃方法を調べていた。
「亮ちゃん。攻撃の方法なんか調べて、いったいどうするつもり?まさか、六年生達に反撃するつもりなの?」
今日は友佳が亮平の家に来ていた。たまたま遊びにきたのだと友佳は言っていた。
友佳の言ったことは亮平が調べている目的と完全に合致していた。
「だから、『亮ちゃん』っていう言い方はやめてって言ってるだろ、友ちゃん。」
ひとまず返事を返す。亮平にとっては、自分の呼ばれ方に関しては譲れない。
四日間(初日はすぐに解散した)続いた「交流タイム」。すでにクラスの何人かは、不登校になっていた。他の五年のクラスも同じらしい。
不登校まではならなかったにしろ、ほとんどの五年生はすでに「六年に抵抗しよう」ということを考えなくなった。
抵抗しても、状況は変わらない。それどころか悪化する。瀕死のウサギがライオンに抵抗するようなものだ。
だが、そんな絶望的な状況でも、状況を帰るために動き出した人が五年の中に何人かいた。亮平も、その一人だ。
亮平達状況を変えようとする五年で、集会を何回か行った。
最初に議論されたのが、「なぜ警察や教育委員会などが動かないか」についてだ。
この議論はすぐに結論が出た。「学校がグルになっているぐらいだ。隠すのは簡単なんだろう」と。
次に議論されたのは、「どうやって六年に対抗するか」についてだ。
まず最初に「力で戦う」、「話し合いで解決する」、「警察などの大人に伝える」という三つのほうほうが出た。
しかし、そのうちの二つがすぐに消える。
「大人に伝える」は、「交流タイム」での絶望や、保護者の反応からして効果無しとされた。「大人はもう信じれない」。亮平達全員に共通する気持ちだった。
「話し合いで解決する」もすぐに消えた。なんの躊躇もなく殴ってくる相手に話し合いなどできるわけがない。そう議論で結論付けられた。
しかし、残った「力で戦う」という方法にも重大な問題が残っていた。力の差が、大きすぎるのだ。
おまけに、ケガをさせると「暴力をふるった」とされて余計に状況が悪化するかもしれない。学校がグルになっているので、六年は何もしていない事になっているだろうから。
なので、「いかにケガをさせずに行動不能にするか」ということで話がまとまった。亮平は、その「人にケガをさせない攻撃方法」について、今パソコンでネットサーフィンをして探しているのだ。
「だって、このまま一年間ずっとこのまま続いてほしいと思う?友ちゃん」
「そりゃ、一年間ずっと殴られ続けるのは嫌だけど、力には力っていうのは…」
「でも、それ以外に方法がある?」
「ないかな・・・」
「力で戦う」以外の方法が見つからない。なら力で戦えるぐらいの知識を付けるしかない。亮平は、そう思った。
パソコンの検索結果に、「人体を攻撃するときに効果的な場所」というサイトがヒットした。さっそく亮平はクリックして、サイトを開く。
しばらくそのサイトを読み進めて、そして、亮平はつぶやいていた。
「『みぞおちは、殴っていも外傷は残らないが、痛みが激しい』か、なるほど、なるほど」
亮平は、もう「六年に力で戦って勝つしかない」と腹をくくったのであった。




