021 これが現実②
前話や二章の八条学園の話を見て気持ち悪くなった方は、「三章を飛ばす」という選択肢(ただし非推奨)をとることもお考え下さい。
先生は助けてくれるどころか、逆に六年生とグルになっている。この事実は、亮平を含める五年一組全員の希望をへし折るものだった。
「そうそう、完全に希望が断たれた絶望の顔が見たかったんだよ。そら、さっさと「指導」を受けろや!」
大人という希望が断たれた今、もう五年生は従うことしかできなかった。
ボカボカボカボカ!
この壮絶とも言える修羅場は、五時間目の開始のチャイムが鳴るまで続いた。
チャイムがなって、五年生のうちの一人が「やっと解放される」と顔をあげた。すぐに六年にぶたれた。
「たしかにもう五時間目だから今日の交流タイムは終わりだ。だーがしかーし、明日以降も続くので、長い付き合いになるけどよろしく!」
細川がそう言い、、五年は教室から追い出された。亮平は、細川が
「他の学年にでも言いつけろ。そうすれば、また被害者が増えて自分が苦しむ事になるんだからな。フフフ・・・」
とつぶやいていたのが聞こえた。
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翌日。五年一組の教室は、昨日の昼休みが終わった時より、どんよりとした空気が流れていた。
たしかに昨日の件の事はもちろん原因の最大の理由に違いない。しかし、昨日より空気がどんよりしている原因は別にあった。
亮平を含む五年の生徒は帰ってすぐ親に遭ったことの一部始終を話した。
亮平の場合、親は学校に連絡をかけ、そしてすぐに「嘘付くな!」と叱られた。他の人もほぼ同じような反応だったらしい。
今になって考えれば、五年の教師と六年の教師が黙認している時点で学校全体がグルなのは簡単に考え付くだろう。だが、亮平や他の五年生はその考えには行きつくことはなかった。
(今日も、今日も昨日みたいに・・・)
亮平の精神状態は一分すぎるごとに悪化していった。
「そうだ。他の学年の人に伝えれば!」
誰かがそう言った。亮平はすぐさまその人を止めにかかった。
亮平はその人に、昨日細川が他の学年に言ったら被害が増えるだけだとつぶやいていたことを伝えた。
その人は亮平の話を聞かずにそのまま教室を出て行った。
キンコンカンコン♪
結局、その人がその休み時間中に戻ってくることはなかった。
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「おい、どうしてたんだよ」
亮平を含むクラスの全員は、前のっ休み時間に帰って来なかった人に、何があったのかを聞いた。そして、聞かなければ良かったと後悔した。
その人の話をまとめると、こうだ。
まず、仲の良かった四年の子に昨日の事を話したところ、いきなり背後から押さえつけられて意識がとぎれた。
そして、意識が戻ったその人が見た光景は、その四年の子が六年に殴られている光景だった。痛みは強くても外傷が残らないところを殴っているらしく、四年の子はもう涙すら出ていなかったが、ケガはどこにも見当たらなかった。
そして、細川が一言、
「君がこの子に喋らなければ、この子は殴られることなんてなかったんだ。こうなったのは、君のせいだよ。」
と言い放ったらしい。
教室全体が静まりかえった。みんなが無言で自分の席に着く。
「いまから朝の会を始めま・・・って、静かだな。あ、そう、当然今日も交流タイムがあるから忘れずになー。」
そう言った担任の言葉も、耳に入ってこなかった。
こんな話が続きます。




