020 これが現実①
三章は亮平が強くなったきっかけの章なので、飛ばしてもかまいません。
警告!ーーー暴力的な表現が入るのはこの話からです。ーーー
交流タイム二日目。すでに六年一組にいた亮平は、周りにいる六年生の変化を感じ取った。
(昨日は気付かなかったけど、今日は変な雰囲気になってるな・・・。まるで、自分では抑えきれないかのような感情が噴き出しているというか・・・。)
昨日自己紹介をした細川という委員長が亮平達の前に立った。笑顔だが、顔が歪んでいた。
「では今日から、本格的な活動を始めます。」
周りにいる六年生が、ものすごい拍手を送っている。
(嫌な予感がするなぁ。あの小学五年生の噂って・・・。)
亮平は、昨日とは違う不穏な空気を感じ取った。しかし、気付いただけではもうどうにもならない。
教師が全員教室から出た。それを合図に、細川が話し始める。
「今日することは、君たちへの高学年になったことへの洗礼です。全員で指導するので、大丈夫です。」
「指導」と「洗礼」。勘の鈍い者を除いて、五年生はその単語が意味する事を悟った。
誰かがいきなり後ろからいきなり殴られた。殴られた子はたちまちうめき声をあげてその場に座り込む。それを見て、
「おいコラ、なに座っとんじゃこのボケカスが!」
と六年生にまた殴られる。些細なことが殴られる要因になった。
ゴン!
亮平も後ろから殴られ、その場に崩れこむ。
(ちくしょう、こいつら・・・)
あたりを見回すと、地獄絵図と化していた。無抵抗な人、暴力で抵抗する人、教室の外へ助けを呼ぼうとする人・・・。全員が六年生に殴られ、蹴られ、ぶちのめされた。
「こ、こんなことやって言い訳ないだろーが!今すぐ先生に言いつけてやる!」
六年一組の教室にいた五年生の誰かがそう叫んだ。すると、六年は「面白くなりそう」という目をして、その叫んだ人への暴力を止める。その人は、「何で殴られなくなったかはわからないけれど、とにかく先生に伝えないと」という表情で教室のドアを開けた。
「せ、先生!六年の人達が、僕たちに暴力をふるってくるんです!」
亮平は嫌な予感がした。まずなぜ交流タイムが始まる時に先生が全員教室から出たのか。なぜ悲鳴やうめき声は教室の外にまで聞こえているはずなのに、中に様子を確認しに来ないのか。
(まさか、グル?)
「何言ってるんですか?あなたは何も殴られてないじゃないですか。変な事を言って先生を困らせないでください。」
その先生は、その子を教室の中に戻した。
「な、何言って・・・」
しかし、なおもその子は教室の外に出ようとする。
ドガ!
その子が教室の中央まで吹っ飛んだ。
「先生に歯向かったらダメでしょう...。あ、交流タイムはまだあるので、楽しんでくださいね。」
そう言ってその先生は教室から出て行った。




