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主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!  作者: true177
終章 ずっとずっと、これからも……編(Ryohei's,Miho's,and Mio's story)

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167 小競り合い その4

 嘘を付くと、短期的な保身にはなるが長期的で得とはなりづらい。ウソをついたという事実が、いつまでも粘着ストーカーですぐ背後から追走してくるのだ。その場しのぎの小手先の技は、真綿で首を絞めるようなものだ。


 ならば、生まれてから常に正直であり続ければいいのか。そんなことは出来っこない。甘い幻惑に滅法弱い人間は、苦行の先の善などよりすぐそこの偽に飛びつくのである。


 真実は、身を軽くしてくれるわけではない。むしろ、重りを頭に吊り下げられることもある。澪が正にその通りだ。


 負けん気の強い澪は、未帆と出来る限り対等であろうとするだろう。欠陥も、砂場ですくってきたさらさら砂で代用して、見かけで押し負けないようにしてくる。代償に、豪雨が降り注げば液状化して建物が沈むのだが、明日起こるか久遠の時を経るかも分からない不確定要素には構わないだろう。


 未帆と澪は、水と油と時々界面活性剤。合作だけ混合液体になる、反発し合うもの。未帆への印象を公言することを澪がためらったということは、相手の優位性が含まれていることだろう。


 澪は、二トンもあるトラックを、大地に靴を貼り付けるようにしてタイヤを回転させて行っているのだ。ボディビルダーでも無ければ、筋肉自慢でもない。一介の信念で、坂道に停まっている試練を押しのけようとしているのである。


「亮平くんも分かると思うけど、私も未帆も負けず嫌い。なのに、未帆の方が光ってるように見える」


 鉄の棒を地に突き刺しているかのように、歯が食い込むほど唇を嚙みしめている。未帆を上げることに対する葛藤が、浮き彫りになっている。


 普段のキャラが澪の正体だと信じて疑わないと、蛇足になりかねないことをしかねない。なよなよするなと、お節介をかけてしまうかもしれない。亮平が深部まで行き届いていることが前提なのである。いかに澪が亮平に重きを置いている(口の堅さはともかく)かが分かると共に、亮平はそれを裏切ってはいけない。


「天然気味なところがあって、なのに憎めない。ずる賢かったら嫉妬なんかいくらでもできるのに、そんなこともない。未帆は、そもそも『憎む』ってことすら知らなそう」


「行き当たりばったりを地で歩んでるからな、未帆は……」


 なるようになればいいと、風に揺られる落ち葉は未踏の地へと踏み入れる。計画性が感じられず、陥れようという負のパワーが微塵も無い。言いがかりのカギ爪が引っかかるような突起が、未帆に無いのだ。


 傷をつければ、デコボコは形成される。しかし、そうはさせまいとばかりに、片っ端から猛毒も良薬に化学変化させてしまう。憎しみが未帆に向いても、ハピネスにエネルギー変換される。


(憎めないと言うより、憎ませない、か)


 引っ張ればスライムの粘りを見せ、瞬間の衝撃で破断させようとすればゴムの弾性でふんわりと返す。未帆は、ステンレス製スライムなのだ。


(未帆が憎まなそうなのも……、まあ、そうだろうな……)


 未帆は『嫌い』というはっきりと受け手を否定する強意の動詞を使わない。もっぱら『苦手』と、接しづらいことを前面に持ってくる。質問攻め、気にせずグイグイ来る人、上から目線無能上司系、全員ひっくるめて『あまり会話できない人たち』なのである。具体性のない、抽象的な表現こそ、未帆の真骨頂であり礎でもあるのだろう。


「それなのにさ、我がままもちゃんとあって……。……亮平くんに分かるかな、未帆にそわそわする感じ……」


 沈着さが無くなり、手を弄り始めた。


 対比させて暗がりへ押し込もうとするそれは、亮平のビデオをそっくりそのまま再生していた。大地の裂け目に落ちていくような錯覚を覚える。女子も同性に魅かれることは百合以外にもあることについての驚きも、端へと追いやられた。


 ここはもう未帆宅のリビングなどではなく、澪のお悩み相談室となっていた。一滴たりとも残さずに搾り取り、抜け殻になみなみとお湯で満たすのだ。


 亮平に、それが出来るのか。未帆にスローモーションで弟のように扱われた亮平に、それが出来るのか。力の角度を見誤って、亀裂や破壊してしまわないか。自身は無い。


「未帆は行き当たりばったりだけど、生きたい方向に真っすぐ最短距離で進んでる。……可愛らしくて、ストレートパンチの一撃一撃が重くて……ズルい!」


 澪がボクシングの仕草をして、残像を打ち消すように交互にストレートを繰り出した。何故だろう、諸刃の刃だったはずのダイヤモンドが、煌びやかに光を反射しているように見えた。上手いこと負のベクトルを発散するシステムが整っているのだろう、『ズルい』のリズムに乗った明るめの言い切りに、偽造工作は見当たらない。


 しかし、ここで杞憂だったか、と早々に澪へのケアを省略しようとするのは下策だろう。未帆博士の資格が設立すれば余裕で師範の座を手に入れられる、と豪語する亮平も、未帆の協調性が、荒波に削られた末の行先であったことには気づけなかった。ましてや、澪とは交点も多くは無い。衛星としてまとわりつく大親友の心も解読できないのに、他所の気迫だけ英雄クラスの澪の本音が、手に取るように読み上げられるはずがない。


「まあ……、頼み事されたら断れないよなー」


 未帆が保温性バツグンの羽毛で亮平を抱擁したのとは裏腹に、亮平には相槌を打って誤魔化すので限界だった。正しい返答が出来ず、事態を拗らせるのを恐れての事である。


「そうだよね。悪気も一切なくて、ただ困ってどうしようもないから仕方なくっていうのがにじみ出てて、手がいっぱいいっぱいでもつい引き受けちゃうこと、多いから」


 未帆と澪が何処で絡んでいるのかは知らないが、澪も随分お使いを受諾し慣れているようだ。まったくもう、とほほが緩んでいる。


 未帆の頼み事は、いたって単純なものが多い。『ここの部分の解き方を教えて欲しい』、『これ重いから一緒に運んでくれない』と、他の誰でも良さそうなことでも、ご丁寧に選りすぐって亮平(話の流れで澪も)だけに頼んでくるのだ。よく壁際で女子会している女子たちには気軽に頼み込めないのか、と疑問点は浮かぶが、詮索する気も無い人の事情に首を突っ込むほどでもないだろう。


「……ここまで聞いて、私が落ち込んでるなんて思ったらダメなんだからね! 未帆にいい所があるのに無視したら、私がズルしてることになるだけだからね! 私だって、長所は言える……!」


 自発的に言われると、却ってどんより沈んでいるのかと心配になる。とはいえ、思い切った言動も出来ず、ギロチンにあるような首を入れるやつで縛られている。澪の気性も加味すると判断できない範疇に入るのが、亮平から大胆さを奪っている。 


 稼働させてしまったモーターエンジンをふかして、メーターが振り切れるほどのスピードで加速していく澪。目的地も無く、決められたフィールド内を縦横無尽に走り回る。進行方向に亮平がいても、お構いなしに轢かれる。


「確信が持てなかったら、未帆はすぐ弱気になってすごすごと引き下がるよね。でも、それって正しくてもそうじゃなくても、何の得にもならないと思う。まず、自分の意見をぶつけてみて、それなら間違っててもまた仕切り直せる。チャレンジしなかったら、後悔しか残らないと思うけどなぁー……」


 引っ込み思案な未帆は、妥協が多い。と言うことは、議論・討論する頻度もペースダウンする。触れる機会が少ないと、経験値も得られず、自分を変えることが出来ない。未帆がこのループから自力で脱却してくれればいいのだが、そうはいっていなさそうなのが現状である。


 澪はその点、主張が激しい。時には根拠に乏しく信憑性のない情報を基礎に戦うので、負けることもある。それがどうしたの精神でその敗戦からの切り替えが素早いからこそ、引きずることも無く連戦できる。澪は長所なのかが不安なのか首をひねりながら語っていたが、立派な特長と言っていいだろう。


「……澪も未帆も、人にはまねできない。凹みと膨らみががっちり合わさるから、二人で二人分以上の力が発揮できる。個人だとひ弱でも、タッグを組むから互いの弱点を補強し合える。そういうことだと思うんだけどな」


 日常いがみ合うことも多い澪と未帆の二人だが、相性は抜群だ。ケンカするほど仲が良い、ということわざもある。ちょっとやそっとでは容易にちぎれない、蜘蛛の糸を何重にも束ねた強化繊維で結ばれているようなのだ。


 澪は、牙をむくことなく、一言一句を順々に飲み込んでいった。時に頷いて、ふーっと深呼吸をする。熱くなりすぎたのを感知した赤外線センサーが、冷却装置を作動させたのか、手で団扇を作って扇ぐ。


「未帆に、もうちょっと攻めっ気を出して欲しい。もっと、未帆と話したい。変だって思われるかもしれないけど、口喧嘩したい」


 やや照れて、澪ははにかんだ。未帆に冷徹な態度で接している分、融和的になるのにためらいがあったのか、それとも見せたことが無かったありのままの自分を亮平に見せることを恥ずかしく思ったか。どちらにせよ、率直な気持ちが自然と言葉に出てくるのはいい兆候である。


 雷雨だった天気が回復し、青空が戻って来た。はっきりと言いたいことが言えてスッキリしたか、澪がだらしなく椅子の背もたれにもたれかかった。


 澪がいつもの調子を取り戻したことに心をなで下ろした亮平だったが、それと同時に新たな興味、と言うより澪が占領する前の本題が気になってきたのである。未帆が引っ越してきたとき、澪はどういう気持ちだったのだろう、と。


「風呂誰が入る会議になる前の、未帆が引っ越してきた当初云々があっただろ? 今の聞いてなんだけど、澪は未帆のことどう思ってたかなー、ってな」


「……つまり?」


 怪しげな目つきで見られた。何処まで行っても澪は澪、未帆と亮平関連だと規制が厳しくなる。国際情勢は閑話の流れへ動いているが、その潮流に逆らって泳いでいるのが澪なのである。特に亮平はやましい事を一度たりとも思い浮かべたことは無いのだが、以心伝心で伝わるわけでもない。諦めるべきところもある、ということだ。


「聞いたことそのまんま。俺からしたら未帆はちっちゃい頃の幼馴染で何となくの交流があるけど、澪は無いだろ? 澪からしたら、赤の他人がいきなり特権を行使して友達枠に収まってきたわけだから、戸惑いもあったと思う。それで、どういう流れで未帆をそんな風に見るようになったのかが気になっただけ」


 未帆が努力しようとしていたのは分かった。それでは、澪はどうだったのだろうか。怒ると手が付けられなくなる澪は、経緯がどうであれ未帆を容認した。性格に嫌味が付いていなかったことは、プラス材料にはなっただろう。しかしそれだけでは、澪が定める入社条件の内の一つをクリアしたに過ぎない。エントリーシートが通っても、面接で落とされることだって十分あり得たのだ。


 『ふむふむ……』と研究者の口癖を付きつつ、軽く目を瞑って記憶媒体からデータをロードしているような澪。平静を装っているが、口角が上がっていて感情がバレバレである。最初から、故意に亮平から説明を引き出すための策略のように思えてきた。


「……これも、未帆に暴露しちゃダメだからね? 分かってる?」


「あ、こっちもダメなのか」


「当たり前だよ? 破ったら、これだからね?」


 澪がピストルを構えて、銃口を亮平に向けた。火薬も弾もセッティングされている、正真正銘の銃器である。不履行の時は、本気で引き金が引かれるだろう。亮平も、両手を広げて高く上げてしまった。


「……未帆が亮平と何の障壁も無しに話してて、ちょっと頭にカチンときたのは、覚えてるよ。『オイこら、この澪様の許可も無しに気安く近づくんじゃない!』って。……ごめんごめん、冗談に決まってるでしょ?」


(あらあら、何処の時代の将軍様でしょうか)


 澪が戦国時代に転生していたら、農民から成りあがってシンデレラストーリーを演じていたのではないだろうか。女性武将が井伊直虎くらいしかいない時代なので、果たして女性が将軍職に就けるのか、という問題は残っているが。ライトノベルとして発売された日には、大紛糾待ったなしだ。


「それで、私も未帆も亮平くんの近くにいる事が多かったでしょ? だから、私と未帆が対峙することもあって、それが始業式から一週間後くらいかな」


 その頃から、伝統芸の意地の張り合いの歴史が始まったようである。未帆も、初期は亮平に熱を注入し続けていたわけでもなく、ただ気楽に砕けた会話が出来る友達といった感じだった。


「私と亮平くんのクラスが違うから会える回数は減ったけど、それでも亮平くんのそばにいた期間は私の方が長かったわけで。亮平くんと未帆が幼馴染だって言っても、小学校じゃない時の話だし」


 誰にも邪魔できない、言語のATフィールドが展開されていた。外野が乱入しようとすれば、きっと電撃で気絶させられる。


 澪が、上に大きく伸びた。交互に指を組んで、収縮して凝り固まった筋肉をほぐそうと、目いっぱいに力を入れている。寝起きでもない、腰を踏み込み直したのだろうか。


 立てかけてあった鉄パイプが平衡を失って倒れるように、澪の腕が重力に沿って弧を描く。伸びた拍子に欠伸をしたのか、目に涙を浮かべている。朦朧とはしていないので、眠気に苛まれてはいないだろう。


「……未帆になんか負けないって、そう思ってた。一年と一週間じゃ、かけてきた想いの数が違うんだぞ、って。高をくくって、鼻伸ばしてた」


 そう言い終わると、仕切り直しとばかりに頬っぺたをパチンと、乾いた音を立てた。


 亮平が、もうどうこういえる範囲内ではない。亮平の意識の裏で繰り広げられていたらしい駆け引きは、単純ではなかったらしいことだけが分かる。


「……だから、思いっきり未帆を問い詰めた。『亮平くんの何が分かるんだ』って、いつもはしないような睨み方してさ」


 澪の脅し方は、蛇がカエルを捕食するときそのものだ。一睨みで身体が言うことを聞かなくなる。まだ素性も知れない澪に脅迫されたとあって、未帆もさぞかし身がすくんで、逃げ出したかったに違いない。


(……しっかし、さっきから澪の視線が熱くなってるような……)


 澪の感情が熱バーストを起こすことは珍しくない。が、そのまなざしまでもが熱気を纏うのは初めての経験だ。表面はほてっていても、芯は氷の塊で南極の海のごとく流氷が浮かんでいることしか無かった。心なしか、部屋の温度も上昇したような気がする。


 過去の記憶をもう一度蘇らせてアップローダーで一から再生してみても、亮平と澪が今年の四月以降、二人だけのプライベート空間を形成したことは無かった。以前はライバルが存在しえなかったのが原因か、亮平とは遠くも無く近くも無くといった距離感だった。未帆という宿敵の出現によって、澪の荒ぶれし熱球もまた作られたのだろう。


 亮平と澪は、長時間対面をほとんどしていない。心当たりのある数件も、サポートやくsションとなる未帆が仲介している。千載一遇のビックウェーブ中なのにもかかわらず足踏みし続けているのは、熱意が空回りしているからなのだ。


(澪が無性に興奮していた謎も、紐解けたな)


 一方向で情報が飛び交ってる空間の下にある麻雀卓が、澪との間を離している。澪が未帆なら、迷うことなく席を外し、すぐそばまで近寄ってくるであろう。亮平に対する積極性で未帆に軍配が上がるというほど平時に差は生まれていないのだが、これはどういうことだろうか。


 ファンで冷まされバグが収まり、間を空けていた澪が再び口を開く。


「……私、未帆が怖気づいて謝ってくると予想してたの。見た感じ未帆は簡単に気持ちが揺らいでたから」


(それは、そう思うだろうな。てか、今もそうだし)


 未帆はサンドバッグで、衝撃を与えればその方向へなびく。それは未帆が未帆である大きな所以であるし、至極正解なのだ。道を開けろと左右に押しのければ、抵抗もしてこない。強請りたい強欲者の目には、格好のカモにしか見えないことだろう。


 しかし、未帆が流されたのならば、今未帆の家で全員集合しているなどということはあり得ないわけで。


「……『亮平は、ちょっと気難しくてボーっとしてるけど、横にいるだけでなんだか安心できる。よく気にかけてくれる。心から心配してくれる。かっこいい』、うっとりした顔で未帆はそう伝えてきた」


(この場に未帆が居合わせて無くて良かったな。未帆がいないからこそ、澪も繊細な部分まで赤裸々にしてくれてるんだけど)


 本人から面として訴えられたわけでもないのに、自然と脱力した。未帆の嬉々とした表情を思い浮かべ、意図せず微笑んでしまう。ゲームを買ってもらった子供が持っている純然たる心の持ち主、未帆の言動や行動は、見ている者のすべてを浄化してくれる。


「今は未帆の時間じゃなくて、私の時間! ……だから、話に集中して欲しい」


 未帆を回想してそっちのけにされそうになっていることを澪に悟られ、愛の鞭で糾弾された。澪とは考えられないほど棘の無いバラだ。未帆にアレルギーの過剰反応をすることなく、それを隠す気も無い。


 澪が過呼吸気味になってきた。しきりに胸のあたりを抑え、あぶれるものを何とか押しとどめようとしている。血色も良くなり、肌が全体的に白っぽい澪は、すぐサーモン色に変色する。鼓動が、ここからでも聞こえてきそうだ。


「それでね、こう思った。『想いの強さは、時間で決まるものじゃない』って」


 自分自身に言い聞かせるような小声だった。常に大声で定評のあるのが澪なのだが、今日ばかりは何もかも撹拌され、ドロドロの液体になっているようだった。何が正しくて、何が間違っているかさえ、ままならない。


 ガタっと、浴室方面からドアの開閉音が聞こえてきた。未帆が風呂から上がったのだろう。

そして、もう夢心地がそう永くはないことに気付き、澪の顔つきがそれまでのラフから引き締められた真面目顔に変化した。


 そのままバタンと机に手を置き、立ち上がった。一点でモノを見据える、覚悟の灯った目で、亮平の目の前までやってきた。ロボットダンスで、動きの一つ一つがカクンカクンである。


「亮平くん、これからはふざけずに、真剣に答えてね」


「お、おう……」


 鼻の先が触れるかどうかまで接近され、澪の瞳の奥はオレンジの炎が丸まっていた。その余りにも真剣さに心を貫かれ、応答した。澪の呼吸音で、うまく脳内整理ができない。


 廊下には、ドライヤーの稼働音が響いている。未帆がリビングに帰還するのも、もう秒読みとなった。


 澪は一呼吸、肺を大きく膨らませ、残留空気を吐き出した。ハッと息を整え、亮平の準備が完了したことを目配せで何度も確認した。


 全てが終わり、恐らく最後になるだろう澪の言葉を、待った。


「もちろん、恋愛の意味でだよ? 亮平くん、いや……亮平は、私と未帆、どっちを愛してる?」

※毎日連載です。内部進行完結済みです。


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