016 校内パトロール⑦
012 校内パトロール③の続きです。
ーーー未帆視点ーーー
昼休み。未帆は亮平とともに運動場の監視に行った。澪に頼んで澪には二階を見回らさせてもらっている。
運動場はかなり混雑していた。遠くの方は人に隠れて見えない。
亮平が見る範囲を半分で分けて別々に見ないか、と提案してきた。未帆もその方が効率がいいと思ったので、その提案に乗る。
未帆は左半分を担当になった。運動場の左半分には、立ち入り禁止テープが張られている倒れそうな木がある。危険なところがあるとすれば、それだけだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(やっぱり、人が多いなあ)
昼休みの時間が進む。人は、少なくなるどころか多くなっていく。
何人かの中学一年生の子達が、立ち入り禁止テープの付近で何やら話しているのに、未帆は気付いた。
(こういう時に限って、嫌な予感がするわ・・・)
その予感は当たる。その中学一年生の子達は、話がまとまったのかそのまま立ち入り禁止のテープの内側に入っていく。
(止めなきゃ!)
しかし、未帆の心の中に、どす黒い心も同時に生まれていた。
(このまま放っておけば、亮平も気付いて止めにくるはず。酒井さんにはそれを「亮平のいいところ」とすればひとまず引き分けに近いところまでは持っていける)
善の心と悪の心が同時に未帆にささやく。
(たしかにそれなら引き分けに持っていける)
と一瞬思って、すぐ我に返る。
(今、私は何を考えた?何てこと考えたの?そんなことよりケガさせない方に決まってるでしょ!)
しかし、未帆がしばらく躊躇したために、中学一年生の子達はさらに木に近づいていく。
(間に合わない!)
未帆は走り出したが、距離的に間に合いそうにない。
と、未帆の視界が亮平が走って木の方に向かっているのをとらえた。
(亮平!気付いてくれたんだ!)
亮平が間に合った事を確認した後も、未帆はその場に向かって走った。
だいたいの事が済んだあと、亮平になぜ遅れたのかを言われた。まさかあんな事を一瞬でも考えたことは未帆には言えなかった。なので、亮平には「違うところを見ていて、亮平が走っているのをみて気付いた」と説明した。
「ごめん。」
未帆は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。亮平が慰めてくれたが、それでも未帆の責任感が消える事はなかった。
ガチャン!
すごい物音がした。未帆と亮平がその音がした方を向くと、そこにはガラの悪そうな数人が校門の前に立っていた。
「俺達は八条学園だ。平和な中学校生活送りたかったら、おとなしく従えや!」
次回で二章終了です。




