015 校内パトロール⑥
「友佳・・・」
暴走しそうになった亮平を止めたのは友佳だった。
「まったく、あれ以来すぐ暴走しそうになるから。しっかりしてよ、もう。」
亮平は頭が上がらない。今までに何回友佳に助けられたことか。
「いやー、しっかし。このことをどう説明すれば・・・」
そう、亮平の目の前には二人ほど地面に崩れ落ちているのだ。
(こうなりゃ、先公が来る前に出て行ってもらうしか・・・)
しかし、亮平が急所を攻撃したせいで、目の前の二人はしばらく動けなさそうだ。
「おーい、亮平!先生呼んできたよ・・・って、なにこれ。」
タイミング悪く未帆が先生を連れてきた。
「西森さんに「不審な集団が侵入している」と聞いてここに来ているのだが、これはどういうことかね、霧嶋君?」
先生に問い詰められ、亮平は素直に事を話した。こういう時に嘘を付くと後々厄介な事になることは分かっている。
「・・・じゃあ、霧嶋君の処分については職員会議の後に報告するよ。まあ、霧嶋君に処分が下るようなことにはならないと思うけどね。」
しばらくして出てきた先生の言葉に、亮平はほっとした。確率は低かったが、止めなかった友佳にも何かしらあるかも知らなかったのだ。
先生がその場を去った後、慌てて未帆が亮平に疑問を投げかける。
「なんで、あんなに簡単に倒せたの?」
周りからみれば、無傷(精神のダメージを除いて)で複数人いる不良を倒したことは不自然だ。何かあるとしか思えない。
(今訳を話すか?いや、この場だと少しマズイな・・・)
亮平はここで訳を話すのをためらった。ここは他の生徒や先生もいる場。あまり他の人には聞かれたくない。
「ここは人が多いからちょっと・・・。また今日の放課後に話すよ。」
今の発言で周りはおおかた亮平が道場や教室などに行って強くなったわけではないと気付いたと思うが、詳細がバレなければ問題ない。
未帆もなにか後ろめたい事がある雰囲気を感じ取ってくれたらしく、そのまま引き下がってくれた。
チャイムが鳴る。予鈴なので心配はないが、生徒が次々に生徒玄関へと押し寄せている。亮平は自分には何も処分がくだらない事を祈りつつ、生徒玄関へと突っ込んだ。
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時は進んで放課後。
結局亮平に処分が下ることはなかった。八条学園は本当に周辺の小中学校を制圧していたらしく、今後市の教育委員会が実態を調査しに行くと言うことだが、そっちは亮平にとってはどうでもいい話だ。
亮平は思う。あの時、友佳が止めてくれなかったら・・・。全員ぶちのめしていたかも知れない。そうなれば歯止めがかからず、ぼこぼこにしていた可能性が高い。そうなると、亮平に何らかの処分が下るのは確実だっただろう。
「ところで、あんなに亮平が強いわけを、まだ私は聞いてないよ。」
隣にいた未帆の声で、再び亮平は現実に引き戻された。
「分かった、分かった。」
今回の話は、重い空気がたちこめそうだ。
これで亮平視点での二章最終回です。(まだ二章は終わりません)
次の亮平視点(本編)からは(多分)三章に入ります。




