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主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!  作者: true177
第十章 第二次未帆ー澪戦争編(Will I have a good time in Christmas?)

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127 戦争勃発?⑦

亮平視点に戻ります。

 「それで、呼び出したと。ついさっき追い出されたのを分かってて?」


 亮平は、呆れていた。一度追い返されたのにも関わらず、またもや上がり込んできた澪と未帆に。そして、かくかくしかじかでその二人に連れられた自分自身に。


 ことは数分前にさかのぼる。


 未帆達を追い返してから十分も経たずにインターホンが鳴り、外を確認すると未帆と澪がいるのが分かった。そこまでは良かった。問題はそこからだ。そのまま無視を決め込むなり、はっきりと拒否の意志を告げれば何事も起きなかっただろうに、あろうことか策すら考えずに玄関に入れてしまったのだ。


 未帆は置いておいて、強い意志無しに澪に対抗するのは困難だ。そんなことは分かっていたはずなのだ。だがどこかで、『もしかしたら大丈夫じゃないか』という油断があった。結果として、任意(強制)でだだっ広いだけの雪が積もる公園まで連れてこられたのだ。


 それにしても、だ。『雪合戦するから審判をしてほしい』と頼まれているのだが、果たして雪合戦に審判がいるのだろうか。敗北を認めた方の負けでいいのではないか。逆に、『まだ負けてない』と本人が闘志を燃やしているときに負けを宣告される方が嫌なのではないか。


 (ただ、未帆と澪の組み合わせだと、何をおっぱじめるか分からないしな……)


 未帆と澪、この二人きりにして放置するのも危なっかしい。予想だにしない方向へ暴走しだすと誰にも止められなくなる。それが他人に向かうことはないだろうが、その代わりに亮平に全て集まってしまう。その事態は避けたい。


 また、引き受けなかったら引き受けなかったでヘイトが溜まりそうで怖い。断ったことが口実になって何かしら仕掛けられそうだ。そもそも、無理くりすれば口実くらいいくらでも量産してきそうなのだが、それらはどうあがいても防げるものではない。それならば、せめて自爆することを防いだ方が賢明というものだろう。


 「追い出されたらもう呼び出したらダメっていう法律はないでしょ?」


 これは、地面に積もった雪を固めて雪玉にしようとしている澪からだ。


 (法律にそんな規定が無いのは分かってるけど、普通は追い出されてノコノコとは舞い戻ってこないでしょうよ……)


 しかし、その『普通』が通用しない相手というものもいるのだから仕方がない。万人に共通する『普通』などという観点は存在しないのだ。


 「未帆、どんな感じで雪合戦するか分かる?」


 見ると、てきぱきと行動している澪とは対照的に、未帆は何をしたらいいかアタフタしているようだった。雪玉を創ってはいるものの、合っているかどうかの自身が無いのか。時折亮平や澪の方にチラチラと視線を送ってくる。そのしぐさの度に、微妙に内側にカールがかかっている未帆の髪がはらりと揺れる。


 未帆の重装備ぶりは相変わらずだ。というか何も変わっていない。何着も重ね着をしているということは一目瞭然だ。冬のど真ん中だというのに、見ているだけで暑苦しくなる。やはり半袖半パンのスタイルを一年中貫いている澪とは真反対である。未帆がいるところだけは南極、澪がいるところだけは赤道付近に見えてしまう。ここは日本なのに。


 (カイロ大量に貼ってたりしてな)


 普通なら冗談で済むようなことも、冗談で無くなってくるくらいのレベルなのが恐ろしい。


 「未帆、何かわからないことがあるんだったら遠慮しなくていいぞー」


 「……うん」


 未帆はジト目で返してきた。余計なお世話だった感が否めない。有難迷惑というものは亮平もたまに実感することはあるが、相手が気遣ってくれていると分かっている分余計に腹が立つのだ。相手から積極的にヘルプコールが飛んでくるまでは放っておいた方がいいのかもしれない。


 亮平はいつもの無気力無関心モードに切り替えようとして、引っかかる部分があったことに気付く。


 (うん? そういえば、さっき澪が『未帆』って呼んでたような……)


 ただ、自分の呼び方と混ざったのかもしれないと思いなおしてスルーしようとした亮平を引き留めるかのように、澪が未帆にルールを説明しだした。


 「じゃあ、西も……じゃない、未帆は向こうの端に移動して。それで、亮平くんが『スタート』って言ったら始めね」


 澪自身も『西森さん』という従来の呼び方が混ざっていたが、やはり呼び方が『未帆』に変わっている。つい十分前までは『西森さん』と呼んでいたはずなのだ。十分ほどという短い期間の中で二人の関係に何か変化でもあったのだろう。そのまま亮平を巻き込むという悪い癖も同時に解消されればなお良かったのだが。


 (……それにしても、ルールも決めてなかったのか。多少なりとも話し込んだのなら、サクサクと進めて欲しかったんだよなぁ)


 これも、未帆澪クオルティである。


 未帆はダッシュで公園の端の方へと移動し、あと少しで着くというところで亮平達gあいる方を振り返った。


 「澪ちゃーん、障害物とかは?」


 遠くから未帆が、澪に大声で問いかけていた。それなら、移動前に聞いておけばよかったのではないだろうか。


 そして、『澪ちゃん』である。


 (未帆も呼び方変わってるな……。『ちゃん』付けなんだな)


 本人的にしっくりくるからなのか、はたまた澪が強制でもしたのか。どちらもあり得そうだ。本人たちが納得しているのならば何でもいいと亮平は思う。意外としょうもない理由だったりもするので、呼称変更に至った経緯までは考えないことにする。


 「ある方がいいに決まってるんだけど……。作ってる暇もないし、このまま始めちゃおうよ!」


 ここでは、ビデオゲームでよくある『障害物に隠れて、スキがあればここぞとばかりに雪玉を投げる』といったプレーはできない。そんな大きい障害物など公園にあったら困る。塀だのなんだので代用できればいいのだが、あいにく公園内に仕切りが出来るほど広い公園ではない。空想と現実はいつも乖離している。


 「そーれじゃー、亮平くん、スタートの合図!」


 澪は、もうスタートの『ス』の字が聞こえたと同時に右腕がしなって発射できるようになっていた。亮平は慌ててコールをした。


 「スタート」


 「両方の準備が出来て初めてスタートするものじゃないの!? 雪玉全部こっちに持ってこれなかったから今作ってたところなのに、もう……」


 やや無気力な亮平の一声で、壮絶(?)な雪合戦が幕を開けた。未帆がスタンバイできていなかったようだが、何事も無かったかのようにスルーされたことは言うまでもない。

※現在定期投稿凍結中です


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