012 校内パトロール③
ーーー前回の続きです。未帆視点ーーー
(!!!)
未帆は、心の中で驚いていた。
未帆は正直、完全に負けたと思っていた。「何を好きになったのか分からない」。この今の未帆の気持ちが酒井さんには分からなければ。
(それなのに、条件を出したと言うことは・・・)
きっと、酒井さんにも分かるところが少しぐらいはあったんじゃないのだろうか。
「さ、酒井さんもこの私の気持ちに...。」
「ち、違うわよ。ただ、このままだとあまりにも西森さんがかわいそうだと思っただけ。西森さんの気持ちとはまったく関係ないから!」
酒井さんは否定してきたが、明らかに動揺していた。きっと酒井さんにも、同じような事があったのだろう。
とはいえ、まだ未帆の方が苦しいことに変わりはない。たとえこのことに負けたとしても亮平にアタックできなくなるかと言われればそうではないが、酒井さんからは嫌な目で見られるだろうし、何より未帆自身があきらめてしまっているだろう。
亮平のいいところ...。
(気の抜けているところはいいところとは違う気がするし・・・。)
とにかく、今日中に探さなければいけない。幸い、今日はパトロール。いいところの一つぐらいあるだろう、と未帆は思う。
「今日中に見つければいいのね?」
「そう。ただし、私や他の人が聞いてもきちんと分かるようにすることが条件。分かった?」
分かったも何も、もう後戻りはできない。
「・・・分かった。」
それでも、返答するのに少し時間がかかったのは、酒井さんに気配で押されたからなのだろうか。
「ところで、本当に「亮平君が幼馴染だからっていう...」
「キーンコーンカーンコーン」
(ほんと、チャイムっていいタイミングで鳴るものなのね。)
このチャイムは予鈴なので、今から急いで教室に帰れば十分間に合う。
最後の酒井さんの言うとしていた事を語尾がら想像した。おそらく、「幼馴染だからっていう、いかにも恋愛小説でよくある展開だから亮平を好きになったのではないか」という系の事だろう。もちろん、未帆はそんなことは考えていない。それどころか、想像してから気付いた。
(幼馴染と再会するって、恋愛小説によくあるパターンだ!)
もしそうだとすると、亮平と...。
(イヤイヤイヤ、それだと酒井さんが言ってたのとおんなじ理由になっちゃう。)
そんなことはない、と未帆は脳では理解できるものの、どうしても恋愛小説のテンプレの方に思考がいってしまう。
亮平と合流した。亮平にも未帆と酒井さんの間のピリピリとした空気が読めたのか、何も話しかけてこなかった。
(今日中、今日中で見つけてみせるわ。)
未帆は心の中で固く誓った。この誓いが、未帆をダメな方に一歩踏み出させようとするとは思わずに...。
最後の言葉は意味深ですが大したことは起こりません。(客観的に見て)




