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主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!  作者: true177
第九章 夏祭り編 (Summer festival)

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105 夏祭り二日目②

 亮平達が東成中学校に到着したころには、既に校庭はたくさんの人でごった返していた。昨日とは打って変わって、行列が出来ている屋台の数が倍ほど多い。例年も、最終日に来る人が一番多かったような気がする。


 ただ、全部の屋台に人が並んでいるわけではなく、中には一人も並んでいないような屋台もある。そのほとんどが射的などの娯楽系だが、中には普通の食べ物の屋台もあった。


 (食べ物系の屋台は軒並み行列が出来てるから、逆に行列ができてない屋台が相対的に何かあるのかって考えちゃうよな・・・・・・)


 特に、行列が出来ている屋台のすぐ横がガラガラだと、どうしても理由があるのだと考えてしまう。


 とりあえず、腹に何か食べ物を入れておきたい。


 「まずは何か食べたいからあそこの唐揚げ売ってる屋台に行きたいんだけど、いい?」


 「いいよー。でも、次は私が行きたいところに行かせてよ?」


 唐揚げの屋台には二、三人程度しか並んでいない。買うまでにかかる所要時間も短そうだ。


 周囲の人達を見ると、少なからず目線を浴衣姿の未帆に向ける人が何人もいた。流石に、修学旅行の不審な男のように注視する人はいなかったが。


 案の定すぐに亮平達にまで順番が回ってきた。亮平は、サイズ別の唐揚げの個数を確認する。


 『S 3個 200円 M 6個 400円 L 10個 650円』


 (個数が一番多いのにするかな。一個当たりの値段も一番安いし)


 結局のところ、人の判断を左右するのは金である。亮平はLサイズのものを注文し、小銭を支払った。少し開けた場所に移動する。


 「未帆は、頼まなくてよかったの?」


 「大丈夫、亮平のもらうから。あ、おごられるとは言ってないよ? ちゃんと後で半分渡すから」


 もし相手が横岳ならば、余裕で遠慮している。未帆のように亮平が信頼できていなければ、絶対に先にお金を渡してもらうところだ。横岳もダメな理由は、いかにも人をだましそうだからだ。亮平も人のことを言えないかもしれないが。


 「じゃ、これちょうだい?」


 未帆は迷わずに一番大きい唐揚げが刺さっている串を紙コップから抜き取った。


 「ちょ・・・・・・。買ったの俺なんだから、選ぶのぐらい俺が先でもいいだろーよ」


 「・・・・・・ケチんぼ」


 未帆に肘で体を軽く突かれた。文句は言いながらも、唐揚げの串をもとに戻してくれた。


 亮平は、早速唐揚げに食いついた。腹がすいているのもあってか、食べるのが進む。肉汁が、口の中に広がる。あっという間に串一本を平らげた。


 「やっぱ肉は唐揚げに限る。うまい」


 「早食いし過ぎ。もうちょっとよく噛まないと・・・・・・」


 「俺は別にいいの。個人の自由」


 早食いが体にいいかと言われれば、答えはノーになる。でも、早食いをやめられるかという問いに対しても、亮平の答えはノーになる。


 「亮平、ちょっと持つ位置が高い。私が取りずらいー」


 何も考えずに口の近くまで唐揚げ串が入った紙コップを持ち上げていたが、未帆にとってはいささか高くて取りにくかったらしい。


 「あと2個俺の分残ってるから、それだけ残しといてよー」


 亮平が持っていると取りにくいのなら、先に5個食べてもらえばいいのだ。


 「もしも私が全部食べてたら・・・・・・?」


 「その時は速攻で食べ物だけ買って帰る」


 「ままま待って、冗談、冗談。わざわざ真に受けなくてもいいのにー」


 亮平には、未帆の言った言葉を真に受け止めた記憶はない。仮に実際にされても、即帰宅はするつもりはない。


 (ただ、何かおごってもらうか追加でお金を渡してもらったりぐらいはすると思うけど)


 未帆の慌てた感じ、これには本気で亮平の分まで食べてしまおうという気は感じられない。


 「次は、私が行きたいところに行かせてよね。そういう約束なんだから」


 祭りと言えば食べ物。それ以外になにがあるというのか。射的などの娯楽系の屋台に、亮平は全く興味はない。


 「食べ物の屋台」


 「勝手に決めないでよ。そうだなー」


 「食べ物」


 「ちょっと・・・・・・」


 「た」


 「静かにしてよ! ・・・・・・次、かき氷にする」


 言葉と言葉に間があった。


 「ヨシ」


 「べ、別に亮平の言う通りになったんじゃないんだからね。私が食べたいと思っただけ!」


 そんなに声を高くしてまで言う事ではないだろうに。未帆が亮平の方を向いた拍子に、ピンで留めて括ってある髪が右へと揺れる。


 「ほら、あそこにあるかき氷の屋台行こ? あ、俺はブルーハワイでお願い」


 「・・・・・・その言い方、もしかしてパシりさせようとしてる? 私は出前なんかじゃないけど?」


 腕をつかまれた感触がしたかと思うと、急激にその部分が痛みを訴えだした。かなりの力で未帆に腕を握られている。


 未帆の笑っているようで笑っていない表情を見る限り、今回はわざとだ。いつもと違い、その意志が見受けられる。


 「シテナイデス。ダカラツヨクニギルノハヤメテ・・・・・・。故意にやってるのは分かってるけど」


 その言葉を合図に、未帆の握る力が弱まる。


 「バレた? 最近、ようやく力の調節出来てきたんだよねー。まだ故意にやっても見分けがつかないと思ったけど・・・・・・」


 (今日未帆の家の前で集合したとき、テンションが高まってるはずの未帆の手を握ってくる力が弱かった時点で、『ん!?』とはなったけど)


 つい最近までは被害に遭っていたような気はするが。


 「亮平、メロン味のかき氷買ってきて」


 「へ!?」


 唐突に未帆のポケットから出てきた硬貨たちを手渡され、亮平の思考が一コンマの間止まった。


 「さっき言ったの、私の分だからね? さっき亮平が私をパシりにしようとしたお返し」


 「・・・・・・人のこと言えなくない?」


 「なんてね。さ、一緒に行こ!」


 言うや否や、かき氷の屋台に向かって歩き出した未帆。亮平もワンテンポ遅れてから、慌てて未帆の後をついていった。

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