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主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!  作者: true177
第九章 夏祭り編 (Summer festival)

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102 夏祭り一日目⑦

今回は、澪視点になります。

―――澪視点―――


 (あと十五分・・・・・・。もうお客さんは、来ないかな)


 夏祭りも最終局面に差し掛かっている。少しづつグラウンド内が沈静化していき、活きのいい声もなくなっていく。


 「今日はそろそろ終わり。夏祭り終了のアナウンスが鳴ったら片付けするから、手伝いヨロシクな、お二人さん。霧嶋はもうお疲れのようだから」


 横岳くんが、澪と西森さんの方を順に向いた。念押しをさせるためだろう。


 残り時間が少ない今の時刻に、わざわざ射的屋に来るような人は少ない。澪の役割の『雑用』の仕事はほとんどないといっていい。


 (そもそも、私がここに来てる理由は・・・・・・)


 澪が今射的屋の屋台で雑用をしている理由。もちろん、自分で屋台を建てようとしたわけではない。元々は、横岳くんが学校から回ってきた射的屋という屋台をしようとしたはずだ。


 そして、亮平くんが屋台を手伝うことになったらしい。澪がこのことを知ったのは、一週間前のことだ。


 (亮平くんが言うには、『無理やり手伝わされた』らしいけど)


 亮平くんが横岳くんを手伝うだけなら、まだ良かった。もしそれだけなら、澪が一緒に『屋台をしたい』ということはなかったはずだ。


 だが、『西森さんも一緒に作業をしている』ということを知ってしまった以上、行動を起こさないわけにはいかない。


 (西森さんが亮平くんを好きなことぐらい、前からわかってるんだから)


 あそこで行動しないと、亮平くんが西森さんに取られてしまうような感じがしたのだ。


 (私だって、簡単には負けたくない)


 ただ、横岳くんの家に無理やり押し入ったことで、横岳くんには迷惑をかけてしまった。できれば謝りたいのだが、理由が亮平くんのことになると恥ずかしくて何も言えない。


 結局、澪は『雑用』という役割を与えらえてこの場にいるわけだ。亮平くんは『会計』、西森さんは『雑用』。亮平くんと同じ役割になれなかったのは残念だが、西森さんとも一緒になっていなくてよかったと思う。


 時折、西森さんが明らかに亮平くんを狙った行動をしてきた。やたら亮平くんに接近して話しかけようとしたり、西森さん自身で亮平くんを背負って連れて行こうとしたり・・・・・・。


 それに対して澪も、幾度となく妨害をしてきた。


 (西森さん、スキを見せたらすぐに亮平くんに寄っていくんだから)


 口喧嘩だって、今日既に何度も勃発している。だが、双方とも言い負かすことが出来ない。


 (もし、西森さんが『幼馴染』っていう特権を使って近づこうとしてるのなら、そこをついて反論できるんだけど)


 西森さんは、決して『幼馴染だから』とは口に出そうとしない。あくまで、幼馴染をたまたま好きになったと言い張ってくる。


 (直近で亮平くんの近くにいる期間だけなら私の方が長いから、私の方が亮平くんのことを知ってる)


 そう、思いたい。亮平くんへの想いで負けているつもりはないが、少なくとも西森さんより亮平くんのことが分かっていると思いたい。


 (でも、亮平くんは私でも何考えてるのか分からないほど謎だらけだから)


 表情がほとんど顔に出ない、常に冷静、何か素っ気ない対応ばかり・・・・・・。澪ですら、亮平くんが何を考えているのかは闇の中だ。


 一方で亮平くんの性格はというと、これは結構分かりやすい。時々、素っ気なく対応しているようでそうではない、亮平くんの素の一面が顔を見せる。


 (亮平くんからしたら普通に対応してそうな感じだけど、私からしたら亮平くんは、温かいよ)


 例えば、学校を病気で休んだ時。亮平くんはやたら容体ばっかり尋ねてきて、心配してくれてるのが分かった。『大丈夫だよ』って伝えたら、良かったって微笑んでくれた。その後にまたいつもの冷静な亮平くんに戻っちゃったけど、あの微笑みは、本当に冷静な人ならできない表情だと思う。


 見舞いに来る時だって、亮平くんは汗だくになっていた。夏真っ盛りだったとはいえ、日陰をゆっくり歩いて通ればあまり汗はかかなくて済む。つまり、それほど急いで家まで来てくれたということだ。


 (絶対、西森さんになんか負けないから!)


 澪は、心の中でそう宣言した。


 「ううん・・・・・・。まだ終わってないか・・・・・・?」


 さっきまで端の方でしゃがんでいた亮平くんが、ゆっくりと立ち上がった。


 「まだだよ、亮平くん」


 「・・・・・・じゃ、終わったら起こして・・・・・・」


 「私は目覚ましのアラームじゃなーい!」


 「・・・・・・それより、片付けの仕方分かる? そこの太い鉄の棒は、三人がかりで倒して・・・・・・」


 亮平くんが、屋台の骨組みで一番太い鉄の棒を指差す。


 「逆に一人で倒せると思う?」


 「・・・・・・思わない」


 また、亮平くんが地面にへたり込んでしまった。


 (亮平くん、言い方は一見素っ気ないように聞こえるけど、実は結構気にかけてくれてるよね)


 一番太い鉄の棒は、どう考えても二人以下では危ない。誰でも分かることだ。でも、亮平くんは眠たいだろうに、わざわざそのことを丁寧に言ってくれている。


 (今みたいに絶妙に頼りなくなるのも、また好きなんだけど)


 修学旅行の時の、絶対的な信頼。たいして、どうでもいい時の無気力。その大きいギャップも、澪は好きである。


 「・・・・・・酒井さーん? 雑用! かってに反対側に行かないでよ」


 「いいじゃない! ろくに仕事がないんだから!」


 「よーくーなーい!」


 「いーいーの!」


 ・・・・・・どうやら西森さんとの確執は、まだまだ続きそうである。

『面白い』、『続きが読みたい』と感じた方、ブックマークと評価をよろしくお願いします。

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