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主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!  作者: true177
第九章 夏祭り編 (Summer festival)

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101 夏祭り一日目⑥

この話のみ未帆視点になります。

―――未帆視点―――


 「やっと、人の数が落ち着いてきたな・・・・・・」


 屋台の外の方を見ながらため息をついた亮平を、未帆はバレないようにじっと見つめていた。


 未帆が、自身が最も近づきたくないであろう射的という屋台の店番に入っている理由。それは、亮平がいるからだといっていい。仮に、他の人から誘われていたとしても神速で断っただろう。


 未帆が来た頃はまだ低いながらも明るさを保っていた日は既に落ち、代わりに満月が昇っている。だが、満月といえど、太陽の明るさにはかなわない。明かりで照らされていないところは、闇に沈んでいた。


 「来る人も少なくなってきたし、ちょっと他の屋台に行ってもいいか?」


 「お前は、屋台から店の人が出てきて他の屋台に並んだのを見たことがあるか? つまり、そういうことだ。明日もやってるんだから、我慢しろ」


 屋台から抜け出したかったらしい亮平が、横岳くんに一撃で沈められた。


 (もし抜け出すのなら、私もついていこうと思ったのに・・・・・・。いやいや、何勝手に人に便乗して抜け出そうとしてるんだろ・・・・・・)


 近くに亮平がいないと、なんだか落ち着かなくなったのはいつごろからだろうか。修学旅行が終わったぐらいからだろうか。


 修学旅行を経て、未帆の中で亮平は『なんだかんだ優しい幼馴染』から『なんだかんだ優しくて力強い幼馴染』に変化した。なんだかんだが付いているのは、普段あまり顔を見せないからだ。そして、ここ一番というときにだけ出てくる。


 亮平は、良い意味でも悪い意味でも、常に冷静だ。例えば、緊急時にはパニックにならずに何かいい方法を考えてくれる。かたや、女子と男子で扱いが全く変わらない、特に気分が高まったりしないから何を考えてるのかよく分からない、女子として聞かれたくないこと(体重とか)もプライバシーガン無視で次々と口に出してくる・・・・・・。


 (いや、最後のは冷静とは関係ない気がするなー。)


 やっぱり訂正。最後のは、亮平にデリカシーがないだけ。今日の浴衣発言も同じだ。


 『亮平は性格がひねくれている』って言われることもある。だけど、ひねくれてたっていい。そんな風に言う人は、本当の亮平が分からないだけ。接してる時間が短いから、そう思うだけ。


 (ひねくれすぎててもダメなんだけどね)


 心の中で、そう一言付けくわえる。


 (酒井さんも、確実に亮平のことを狙ってる。何かと亮平の近くに寄っていくし、今回だって聞きつけてからの行動が素早いし・・・・・・)


 横で、未帆と同じように台の整備をしている酒井さんに、未帆は視線を向ける。


 (でも、みすみす渡したりなんかしない。負けるのなら、正々堂々戦ってから負ける)


 もちろん、未帆に負ける気などさらさらない。あくまで心構えにすぎない。


 「ヤバい、もう眠い・・・・・・。横岳、あとはお前に全部任せるわ・・・・・・」


 「寝るな。眠気なんか、根性で吹っ飛ばせよ。まーだ八時半だぞー」


 「もう八時半の間違いだろ・・・・・・?」


 「お前のいつもの就寝時間が異常なんだよ。みんなはお前なんかより一時間は遅い」


 「お前なんかってなんだよ、お前なんかって・・・・・・」


 亮平が、しきりに欠伸あくびをしている。目に涙もたまっている。


 この八時半という時間で眠くなるというのは、確かに早い。未帆も、まだ眠気は全く感じない。しかし、亮平は既にうたた寝でも始めそうな勢いだ。


 問題は、就寝時間にある。未帆が本人に聞いたところによると、亮平の普段の就寝時間は9時過ぎ。ちょっと、ではなくかなり早い部類に入る。亮平は、『その分早く起きるんだから別にいいだろ』と言っているが、それでも寝るのが早い。


 横岳くんも、亮平の特異体質は気付いているはずだ。それでもなおそこを攻めるのは、いつも亮平に対してやっているイジリなのだろう。横岳くんも、秀才君そうに見えて、実は結構愉快なのだ。でも、亮平と同じように考え方が論理的で正しいので、嫌いになれない。


 『本日ご来場の皆さまにご連絡させていただきます。あと30分で、本日の校区祭りは終了となります。繰り返します、あと30分で・・・・・・』


 夏祭りの終了時刻は、午後9時。早いというわけでもないし、遅いというわけでもない。


 「頑張れー、あと三十分だぞー」


 「・・・・・・無理」


 しかし、既にもう亮平がギブアップ寸前まで行ってしまっている。


 「亮平、あとちょっとだから、ね?」


 未帆の励ましも、意味がなさそうだ。


 「こりゃ、誰か介抱していかないといけないかもな・・・・・・」


 (介抱!?)


 できる事なら、自分が亮平を介抱したい。未帆の、純粋な気持ちだった。だが、そこに待ったがかかる。


 「なら、私が亮平くんを・・・・・・」


 「酒井さん・・・・・・。いや、私が・・・・・・」


 「ケンカしないで、ケンカしないで。介抱って言っても、抱きかかえるわけじゃなくて、腕を引いて連れて行くぐらいでいいと思うんだけど・・・・・・。帰ることぐらいは霧嶋も出来そうだし」


 未帆と酒井さんが今日何度目かのケンカに発展しそうなところを、横岳くんが仲裁に入ってくれた。


 「それに、まだ時間あるから・・・・・・」


 既に地面にしゃがみこんでしまっている亮平。いまにも倒れそうに体が揺らいでいる。


 (亮平はこういうところもあるから、ほっとするんだよ)


 全部完璧にできる人間なんていない。だから、何か弱点なりなんなりが有るとほっとする。そして、自分の好きな人のそういう弱みを見て、安心している自分がいる。


 『幼馴染』。そんな言葉だけで、括って欲しくはない。ただの幼馴染だけだとは、未帆は思わない。


 (私は、亮平が好きなんだから)

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