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主人公が鈍感(←理由あり)過ぎて、全然進展しないじゃないか!  作者: true177
第九章 夏祭り編 (Summer festival)

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094 混ぜるな危険

 「何勝手にちょこんと隣に座ってるの?」


 「痛い、痛い! 腕引っ張らないでよ。力の加減ぐらいできるでしょ、いつも言われてることなんだから!」


 案の定、予感は当たった。未帆と澪がケンカをしだしたのだ。それも、『どちらが亮平と対戦型ゲームをするか』である。残念ながら二人用のゲームなので、三人でするという選択肢はない。


 (澪、未帆は気を抜いてると加減忘れちゃうんだよ・・・・・・)


 未帆の強烈な力(物理)に、亮平が何回被害を被ったことか。未帆が手加減できるようなら、亮平はそう何度も痛い目には遭わない。


 「お二人さん、落ち着けー。ケンカなんてするもんじゃないぞー」


 「なら、亮平がどうにかしてくれるって言うの?」


 「亮平君、何か案でもあるとでも?」


 (どーして、こういう時に限って団結するかなー)


 『敵の敵は味方』という精神が発動しているのだろうか。でもそれだと、敵の敵は敵なわけで・・・・・・。なんだか辻褄が合わない。


 そもそも、なぜ故に未帆と澪は相性が悪いのだろうか。亮平がいるときに悪化しているのは分かるが、それ以外の時も普通にケンカしているのを見たことがある。性格的な問題もあるのかもしれない。


 「そんなにお二人さんが遊びたいんなら、俺は譲るけど?」


 どうやってこの窮地を切り抜けるか考えている内に、良い案が思い浮かんだ。人が押してくるのなら、自分が引けばいいのだ。


 こういう時、今までの亮平なら『自分が引かないこと』を前提にして考えてきた。だから未帆と澪がどうしても衝突してしまうのだ。元凶となっている亮平が引けば、衝突は起こりえない。


 「・・・・・・。亮平、抜けるの?」


 「・・・・・・」


 でも、『なら自分もやめる』とは言いだしずらい。未帆か澪、どちらかが言えば、言っていないもう一方がすかさず亮平を誘うだろう。


 言い出しっぺは、一旦『ゲームをやめる』と言っている以上、不利になる。そのことを双方が分かってくれていれば、亮平はこのまま安全にこの場を離脱することが出来るのだが、果たして。


 「・・・・・・譲ってもらって悪い気はするけど、ありがと。ほら、酒井さん、このゲームやりたがってたんでしょ?」


 「・・・・・・分かったから。 その代わり、ぼこぼこにする。もちろん、ゲームで」


 (よしよし、これで安全に離脱できる)


 未帆と澪が亮平から気を画面の方に向けたそのすきに、亮平は隣の部屋に転がり込んだ。


 (やっぱ、混ぜたらダメだなー)


 「よ。結構巻き込まれてたみたいだけど、どうなった?」


 ゴロンと横になって漫画を読んでいた横岳が、そう問いかけてきた。きっと、会話がこの部屋まで聞こえていたのだろう。


 「どうにかして、二人でゲームさせるようにした」


 その『どうにかして』の部分が結構大変だったのだが、まあいい。


 「お疲れ。それにしても、なんで酒井さんなんか呼んだんだ? 酒井さんと西森さんとお前が交わったら、絶対に何か起こるってのは、ちゃんとわかってたんだろう?」


 「それは流石に分かってる。実は・・・・・・」


 亮平は、未帆が複数の友達に作業のことを話したのが遠因となっていることを、横岳にすべて話した。


 「・・・・・・つまり、お前は不運な体質ってことだ。どうしようもない」


 そんなこと言われても困る。運だけは、誰もどうにもならない。


 「まあ、西森さんと酒井さんの相性が最悪なのもあるけどな、だいたいはお前が入るから悪化してるけど。もともと、三年始まって西森さんが酒井さんに初めて会った時からずっと、仲良しムードになってるのを見たことないしな」


 澪はもともと気が強い方。未帆は、普段は気が強いというわけではないが、亮平関連になるといきなり強気になる。もともとの力も強い。そんな二人が混じれば、亮平がいなくとも衝突は起こる。


 「いっつも板挟みになって苦しいのは俺なんだけどな・・・・・・」


 そして厄介なことに、未帆も澪も自らのことに夢中になるあまり、亮平のことを忘れてしまっていることだ。精神的にしろ、肉体的にしろ、亮平が傷ついてから我に返るパターンが多いような気がする。


 「たぶん、来週も絶対あの二人、来るぞ。お前が来る限りはな」


 「じゃ、盆明けの来週は欠席にしてもらって・・・・・・」


 「無理。役割の分担の詳細な話をするって言っただろ。もし来なかったら、適当に残った役割を押し付けるぞ?」


 「やっぱり来るわ」


 残る役割というのは、全員が嫌うような役割ということだ。金額計算みたいな重要で責任が重い役割にはなりたくない。来週、来るしかないのだ。


 「さーて、そろそろ西森さんと酒井さん、おとなしくなってくれたかねえー」


 亮平は、リビングにそっと顔を出した。未帆と澪は、ゲームのコントローラーをカチャカチャ音を立てながら必死にゲームをしていた。かなり盛り上がっているらしく、時折『勝った!』や『なんのこれしき』などと言った言葉が飛んでいた。


 (放っておいても別によさそうだな)


 亮平は、部屋に山積みになっている漫画の一番上を手に取り、ページをめくった。


 ―――


 時計の針は午後四時より少し前を示していた。いつもの帰宅時間より一時間ほど早いのだが、如何せん今日は何も作業をしていない。文句が言えるはずもない。


 「次集まるのはお盆が明けた次の日。その次の日から夏祭りだから、次回で集まりは終わり。覚えといてよ」


 「・・・・・・早く帰っていい? 理由はないけど」


 亮平は、一刻も早くこの場を離れたかった。横岳を近くに呼び、澪に夏祭り関連のことを聞かれる前に立ち去りたい、と理由を説明した。


 「霧嶋は、本人が受験勉強したいらしいから、先に帰ってもらうぞ。西森さんと酒井さんはまだ話してないことがあるから、もうちょっとこの場にいてて」


 (ナイス!)


 『受験勉強のため』と言えば、この時期だと通じやすい。嘘っぽくても、止められることは少なくなるはずだ。横岳も、なるべく亮平が一番自然にこの場から立ち去れるようにしてくれている。


 「じゃ、また次の時にー」


 亮平は、足早に横岳の家を後にした。懸念していた女子陣二人からの追及が来なかったことは幸いだった。

良ければ、ブックマークと評価をよろしくお願いします。

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